【特別企画】中林直樹が「SIGNA」「WOOD」を聴く
JVCが世に問う新潮流ヘッドホン『CLASS-S』4モデルの魅力とは? 機種別の音質特徴を徹底解説!
■「SIGNA 01」試聴 − 「音楽全体がやわらかなトーンでまとめられたのが印象的」
では、各モデルの概要と試聴レポートを綴ってみたい。
SIGNA 01(HA-SS01)はオンイヤータイプで、ドライバーユニットの口径は40mm。ダイアフラムには軽さと強さを兼ね備えた素材、PENを採用した。マグネットはメインに加えさらに2個をマウントした「トリプルマグネット構成」。また、ドライバーユニットの中央部にエアフローをコントロールする「クリアサウンドプラグ」を装備し、中域の抜けの良さを図った。
さらに内部には高強度ポリアミド樹脂で成形された中高域用キャビティを配置。これは「シーケンシャル・ツイン・エンクロージャー」と呼ばれる。これらが総合的に組み合わさってハイレゾ(8Hz〜52kHz)認証を得ている。
ケーブルは左片出しで、着脱可能。ハウジングの入力端子部には、プラグのぐらつきを抑え、信号を余すことなく伝える「アンチバイブレーションジャック」も採用している。ハウジングには高級コンパクトカメラのようなハンマートーン仕上げが施されている。
では、筆者が昨年最も試聴したアルバムのひとつ、原田知世『恋愛小説』を聴く。音楽全体がやわらかなトーンでまとめられたのが印象的だ。ボーカルは特にまろやかで、優しい。ホーンセクションやアコースティックギターは輝きよりも、深みを感じさせる。
また、ジャズ作曲家、挟間美帆のラージアンサンブル『タイム・リヴァー』ではストリングスのきめ細かさが際立ってくる。音場は豊かで、頭の周囲にゆったりとしたサウンドスケープが広がった。
坂本龍一らが手がけたサウンドトラック『レヴェナント』も試聴。ここでもやはりストリングスが滑らかな抑揚を伴って現れる。デヴィッド・ボウイの『★』は歌声とバンドサウンドが程よく混ざり合う。たっぷりとした余韻もあり、その濃度も高い。
■「SIGNA 02」試聴 − 「サウンドはSIGNA 01よりもクリアな印象」
上記の弟機となるのがSIGNA 02(HA-SS02)。オンイヤータイプで、ドライバーユニットの口径や振動板の素材、「クリアサウンドプラグ」や「シーケンシャル・ツイン・エンクロージャー」、「アンチバイブレーションジャック」はSIGNA 01と同様。
異なるのはマグネットを2個としたこと、SIGNA 01で採用されていたバッフルの不要振動を抑える「アンチ・バイブレーション・リング」を省略、イヤーパッドは通常のPUレザー(SIGNA 01はソフトPUレザーを使ったコンフォータブルイヤーパッド)としたこと。また、ハウジングの表面仕上げはフラットとなっている。
そのサウンドはSIGNA 01よりもクリアな印象。原田知世はボーカルに透明感があり、高域も幾分、伸びやかだ。ホーンセクションの立ち上がりも素早く、キレもある。
挟間美帆でもサックスやトランペットの中高域に輝きを感じさせる。ピアノのニュアンスに富んだプレイも聴けた。各楽器の輪郭も明瞭で、音楽が塊にならず、見晴らしの良い音場を堪能。
坂本龍一は低域から高域までバランスよく再現。デヴィッド・ボウイではSIGNA 01よりも、密度は薄まるが、エレキギターのざらりとしたテクスチャーやドラムスの躍動感を伝える。温かみのあるボーカル表現も持ち味のひとつだ。落ち着きあるSIGNA 01のテイストをベースに、中高域の解像度を少しアップさせたかのようなチューニングだ。