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シリーズ4機種を山之内 正が徹底試聴

【レビュー】B&W 800 D3シリーズは「スピーカーが消える」境地にどこまで近付いたか?

公開日 2016/04/01 10:00 山之内 正
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他の3機種を全ての項目で上回る特別な存在「802 D3」

ここまでの説明で新シリーズの音の傾向がお分かりいただけたかと思うが、最後に残った802 D3の再生音も基本的にはその延長線上にある。ただし、付帯音や歪の少なさ、音色のパレットの大きさなど、ほぼすべての項目で他の3モデルを上回り、そのことが802 D3を特別な存在に押し上げている。

「802 D3」 ローズナット:¥1,700,000/1本(税抜) ピアノブラック:¥1,800,000/1本(税抜)

誰もが気付く大きな違いとして、まずはダイナミックレンジの余裕に注目しよう。耳に聴こえる限界の小さな音でも実体感を失わないことにも驚くが、部屋の空気が一瞬でまるごと動くような大音圧のなかでもソロ楽器の音像がぶれず、アンカーで固定したように踏みとどまる。R. シュトラウスの《ドン・ファン》を本機で再生したときのダイナミックレンジの大きさは圧巻で、頂点に達したトゥッティの鳴りっぷりの良さはまさに別格。うねるような音の渦のなか、木管や金管の重要な旋律にはピタリと照準が合い、フォーカスの良い音像が空中に浮かぶ。オケの大音圧と精密な音像定位が両立する醍醐味は生演奏でなければ味わえないと思いがちだが、細部まで緩みやにじみがない本機は、その数少ない例外だ。

音が出る直前の気配感や静寂感もD3シリーズに共通する美点の一つだ。ブレスのあと、声が出るまさにその瞬間、唇が開く気配までも生々しく聴き取れるのは、どんな些細な音でもタイミングと音色を忠実に再現しているからだ。演奏現場ではなんの違和感もないブレスや楽器の動作音が、スピーカーを通すとノイズにしか聞こえないという経験をすることがあるが、新しい800シリーズで聴くと、なにが発音源なのかすぐに判り、実演さながらのリアリティが生まれる。



802 D3を頂点とするD3シリーズが引き出す立体的かつ広大なパースペクティブのなかに身を浸していると、スピーカーはもちろんのこと、再生装置の存在自体が意識から離れ、演奏との距離がかつてないほど近く感じられることに気付く。目指す音のイメージが明確で、しかもそれを実現するための技術を確実に掌中に収めている。800 D3シリーズは、そうしたB&Wの強みが見事な成果を生んだ傑作である。

(山之内 正)

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