<山本敦のAV進化論 第95回>
“音にこだわったハイレゾスマホ”「HTC 10」レビュー。音楽機能を徹底的に試す!
低音は量感がたっぷりとした印象。ウッドベースの旋律は余韻がふくよかだ。音の情景は見通しが良くクリアなので、低域が他の帯域をマスクして濁らせてしまうような感じはしない。全体にニュートラルな位置からわずかに低域のバランスを強めにシフトさせた音づくりだ。
上原ひろみのアルバム「Spark」から『Wonderland』(FLAC 96kHz/24bit)では、躍動するトリオの演奏をダイナミックに表現した。正確にメロディラインを描く上原の指先の細やかな動きが見えてくるような、メリハリの効いたイヤホンの音づくりがこの楽曲によくマッチした。
エアロスミス「Permanent Vacation」の代表曲『Angel』(FLAC 96kHz/24bit)では、高域のブライトなエレキギターの突き抜けるような旋律をとてもクリアに美しく再現してくれた。スティーブン・タイラーのハイトーンも爽やかで滲みがない。スカッと晴れやかでゴージャスなサウンドだ。ドラムスのズシンと響くキックの厚みやエレキベースによる腹の底を突き上げるような野太いリズムもクリアで品があり、心地よく身体に馴染む。
付属のイヤホンはあふれる中低域のパワー感と、それをしっかりとコントロールしながら全体に引き締めたサウンドが魅力だ。ボーカルの声も前面へと立体的に浮かび上がってくるので、ロックポップスの歌ものの楽曲と非常に相性がよかった。
オーディオ回路を強化したことによる良い影響が、アウトドアでも気持ち良く楽しめるサウンドにもつながっている。ボリューム位置の全体を10とすれば、室内ではだいたい6.5ぐらいの位置で十分な音量が得られる。静かな場所でリスニングを楽しむぶんにはもう少し音量を下げてもいいぐらいだ。
ミロシュの「アランフエス協奏曲/アルハンブラの想い出」から『第1楽章:Allegro con spirito』では、管楽器のピアニッシモで展開される繊細な音符もくっきりと浮かび上がり、ギターの繊細なニュアンスがふわっと自然に立ってくる。壮大なスケールのオーケストラとの対比も鮮やかで見栄えがいい。
賑わう屋外のカフェでリスニングしてみても、ボリュームを7から8ぐらいの位置まで上げれば十分な音量が取れる。ボーカルものは口元の動きががリアルに浮かんでくるし、声の質感まで手で触れているように鮮明だ。
同じ場所で筆者がふだん使っている「Xperia Z5 Premium」に、HTC 10の付属イヤホンを装着して聴いてみると、ボリュームをHTC 10よりも1段階くらい上げないと、細かなニュアンスが聴き取りづらくなるので、これがストレスに感じられてしまった。
■外部アンプへのデジタル出力でDSD再生も
オーディオテクニカのハイレゾ対応USB-DACを内蔵するヘッドホンアンプ「AT-PHA100」につないで、HTC 10からのUSBオーディオ出力のサウンドもチェックしてみよう。
Android OSをプラットフォームに採用するモバイル端末は、単体でイヤホンジャックからハイレゾの音声を出力できる製品も多くある。言い方は悪いが、中には「とりあえず形だけハイレゾが再生できるようにした」と言わんばかりの端末があったりもするが、HTC 10はUSBオーディオからのハイレゾ出力についても使いやすさ、音質ともに徹底してこだわった。これぞまさに骨太なハイレゾスマホの真髄だ。