DACに旭化成「AK4490」を搭載
【レビュー】I2SでのDSD入力に対応したラズパイ用DACボード「Terra-Berry」を聴く
■DACに「AKM AK4490」を採用
前項を踏まえると、現時点におけるRaspberry Pi用DACボードの見どころは、高レートDSD再生の対応などDACの性能・スペックよりは、むしろ電源周りや出力端子部分の仕上がりなどアナログ部分ということになる。収まりのいいケースの有無も、実用性という点では重要だ。とはいえ、ボードの中核であるDAC「AKM AK4490」に触れないことには、このTerra-Berryという製品の姿は伝わらない。
AKM AK4490は、PCMが最大768kHz/32bit、DSDが最大11.2MHzというハイスペックなDAC。TEAC「UD-503」など多くの製品に採用実績があり、その基本性能の高さは広く知られている。現状のRaspberry Pi(Linux)ではPCM 192kHz/24bit、DSD 2.8MHzまでしか性能を引き出せないものの、分解能であるとか音の出際・消え際の緻密さであるとか、DACとしての素性の部分は魅力だ。マスタークロックとなる水晶発信ICは44.1kHz系と48kHz系の2基を搭載、正確な再生を狙う。
同じAKM製のサンプルレートコンバータ「AK4137」の採用も、大きなトピックといえる。このチップに入力されたI2S信号をもとに高精度のクロックを生成、PCMあるいはDSDをDAC(AK4490)に引き渡す。その際、PCMは最大768kHzに、DSDは11.2MHzにアップサンプリングされ、AKMがいうところの「VELVET SOUND」に仕上がるというわけだ。
電源周りについては、Raspberry Piにおける一般的な方式と比べ有利だ。Raspberry Pi 2/3はUSB micro-Bが標準的な電源供給ルートだが、GPIOという選択肢もある。前者は過電流防止用のヒューズやスイッチングレギュレーター(性能アップに伴う電源部の強化/効率化のため、Raspberry Pi 2からスイッチングレギュレータ方式に変更された)などに起因するノイズの影響を受けるが、基板上に自前のDC電源入力を持つTerra-Berryの場合、Raspberry Piに電源を供給する側であり、それらのノイズに影響されない。
最終段のアナログ出力は、2ピン・2系統用意されたピンコネクタから行う。製品にはアンバランスのRCA端子が付属しており、これをプリアンプと接続して聴くというスタイルだ。Raspberry Pi用DACカードは、ポータブル用途を意識してかステレオミニ端子装備のものが少なくないが、Terra-Berryの場合コンポーネントオーディオとしての性格のほうが勝る(もちろんポータブルアンプへLINE出力すればヘッドホンでも楽しめるが)。