【特別企画】エポックメイキングな製品群
Zonotoneの新境地。10周年記念ケーブル「Royal Spirit」を5人の評論家がレビュー
音のプロフェッショナル達が語る「Royal Spiritシリーズ」の魅力
■石原 俊
音場と音像の関係が従来と異なる
ぜひともクラシックを楽しみたい
ゾノトーンの新しい「Royal Spirit」というケーブルのプロトタイプを聴く機会を得た。これまで同社の製品は創業者の前園俊彦氏が音決めを行ってきたが、「Royal Spirit」は二代目社長の前園力氏が担当したという。筆者はゾノトーンのケーブルの多くに接してきたが、それらのサウンドは基本的に非常にピュアではあるのだが、俊彦氏の音楽的な好みを反映しているからか、どちらかというと音像にフォーカスした、いわゆる「ジャズ向き」の音作りがなされていたように思う。
それに対して「Royal Spirit」は音場を描いたうえで、そこに音像を乗せていく、いわゆる「クラシック向け」の表現に軸足を置いているような音作りがなされているように思う。音の純度は従来と同様なのだが、音場と音像の関係が従来の製品とは大きく異なるのだ。ケーブルはシステムのサウンドの最終的な味つけをするアイテムなので、「Royal Spirit」を導入すれば直ちにクラシック向けの良好なサウンドが得られるわけではないだろうが、音場感の増加は期待できるであろう。ちなみに筆者はプロトタイプを試聴し、すぐさま「Royal Spirit」の導入を決意した。
■炭山アキラ
枠を超えた表現力を楽曲にもたらし
新たな魅力を発見させてくれる
そういえばゾノトーンとのつき合いも結構長くなったな、と思ったら、来年でもう創業10周年だそうだ。商売柄、その間に登場したケーブルの大半を聴く機会に恵まれており、何とはなしに「ゾノトーンとは」というか、同社の漠然とした全体的なキャラクターについて、ある程度の印象が固まっていた。なかには「Blue Spirit-777」(インターコネクトケーブルのみ生産完了)のように、ほかとは隔絶した持ち味を聴かせる製品もあるにはあったが、あの「冬の青空を思わせるクールで明るく抜けの良い音」は、やはり同社のアイデンティティでもあるのではないかと感じている。
そんななか、「まだ試作品ですが」と同社の前園 力代表に聴かせていただいた「Royal Spirit」のインコネとSPケーブルは、ある意味で同社の“枠”を完全に突破してしまったのではないかと思う。超ハイスピードで全域の位相とエネルギー感が完全に揃い、そこへ立ち昇るような気品と超微粒子の蒔絵を思わせる輝きが乗るのだ。聴き慣れたレファレンスソフトが、どれもこれも「こんなにきれいな音だったのか!」と、新たな魅力を発見することばかりだった。決して安価なケーブルではないが、この表現力ならむしろ、超ハイCPというべきであろう。
■林 正儀
立体的で臨場感豊かな会心の作
聴いてワクワクする新風がある
10周年記念を謳うからには、かつてない個性やケーブル作りの気迫をみなぎらせるものであって欲しい。そんな期待が一杯の新シリーズが、「Royal Spirit」である。先だってゾノトーンの工房を訪れた際、プロトタイプながら製品に触れ、試聴した感想を述べれば、あの「Blue Spirit」と双璧をなすインパクトの強さ。ある意味、異端児ぶりであったと思う。ただし、音の傾向は180度違う。「Blue Spirit」がジャズのゴリゴリ感を味わう音像集中型だとすれば、今回の「Royal Spirit」は、もっとホールのような臨場感やパースペクティブ重視で立体的だ。細部の鮮明さや、スケールの大きさが際立ち、ステージの拡がりや遠近がグーンと深いのである。
グレード的にも、超高純度7NクラスCuらしい純度感や浸透力は見事なもの。4種素材のハイブリッド、DMHC-Duo構造を含め、同じケーブルを、スピーカーとインターコネクトの両方に用いたことも前代未聞の挑戦ではないか。新しい風が吹くような、聴いてワクワクさせる新シリーズであり、これはぜひ両方を併せて揃えるべきだろう。アニバーサリーモデルにふさわしい、会心の出来栄えだ。
■藤岡 誠
ゾノトーン初と言えるダイナミズム
自然な響きのなかに躍動感を表出
高純度導体によるオーディオケーブルの先駆けであるZonotoneは、2007年に創立者の前園俊彦氏によって立ち上げられた。前園氏とは50年ほどのお付き合い。現在は、某大手電機メーカーにお勤めだったご子息の力氏が社長を引き継いでいる。
その力氏から、「初秋に発売予定の『Royal Spiritシリーズ』を試聴してほしい」という連絡があったのは4月上旬のことだった。
試聴の当日までは、従来シリーズの延長線上に位置するサウンドクオリティだろうと予測していたが、その予測はものの見事に外れた。スピーカー/インターコネクトの両ケーブルからは、これまでのゾノトーンからは聴いたことのないダイナミズム―躍動感があって、自然な響きの中にアクティビティの高さが感じられる。瞬間、「親父が創り上げた、まさに“ゾノトーン"に、新しい音質・音調の方向性を息子が加え始めた」と思った。親父が創ってきた幾つものシリーズに、息子の感性が遂に加わってきたのだ。名実ともに“力=ちから"が湧き出て来たというわけだろう。俊彦氏もきっと喜んで居られるだろう。
【協力/問い合わせ先】
(株)前園サウンドラボ http://www.zonotone.co.jp
※当記事は「ケーブル大全2017」からの転載です。