【特別企画】エポックメイキングな製品群
Zonotoneの新境地。10周年記念ケーブル「Royal Spirit」を5人の評論家がレビュー
■Royal Spiritの表現力を徹底検証
作為を加えず音楽を楽しませる。何と魅惑に満ちた音だろうか
コンセプトケーブルというと、どこかに誇張や色づけのある音を連想しがちである。しかし本モデルのコンセプトはそういうものではなく、音楽を楽しむためのケーブルという位置づけであるようだ。このため人工的にひとつのカラーを作り出そうとしたのではなく、むしろ再現性としては流れるように無理のないものとなっている。まずそこを誤解しないようにしてもらいたい。
例えばレスポンスや位相など、色々な点でこのケーブルは均一である。そして音の出方に無理がない。どこにもストレスがかかっていない感触で、誇張もくせもなく音楽だけがひとりでに出てきて自由に飛び交っている印象がある。
それと音の周囲や背景が静かなのも、最初にはっとさせられるところである。アンプなどで言えばS/Nがいいということだが、それと同じ静かさが明らかにある。ノイズが混じらないということになるのだろう。
意図的なカラーとは正反対で、流れるように無理がなく鮮烈
ストレスからもノイズからも解放された音というのは、それだけで気持ちのいいものである。ストレートだし、汚れがなく棘も感じないで済む。耳が楽なのだ。
音楽を楽しむためのケーブル、ホールのような臨場感、といったこのケーブルのコンセプトは、無理やストレスのない優れた特性によって実現されている。意図的にカラレーションを加えた音とは、正反対であることが分かるはずだ。
音場は少し奥へ引いて、そこから左右と後方へ波紋を描くように広がっている。これがホールの音場だ。それを実現するには、無理やストレスを排除しなければならなかったわけである。だからRoyal Spiritの技術は、作為を加えないための技術であったと言っていいように思う。
ピアノの流れ出るように静かな鳴り方はその表れだろうが、そのステージの見え方がまさしくホールで聴く音そのものである。オーケストラはそれをもっと拡大したスケールで描き出している。そしてどちらもここという時の爆発的な瞬発力が、意外なほど強靭なのである。逡巡がないというべきなのかもしれない。バロックの瑞々しさや鮮烈さもその一環だし、ジャズは屈託がなくしかも深く軽い。新しいゾノトーンの音は、何と魅惑に満ちていることだろう。
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