折原一也が開発陣を直撃
【レビュー】革新的バックライト搭載、ソニーの “マスター” テレビ。 BRAVIA「Z9D」を見た
■画質はHDRでしか成しえない別次元「HDRness」の世界へ
「Z9D」でいくつかのコンテンツを実際に視聴して特に印象的だったのが、100インチの「Z9D」で視聴したUltra HD Blu-rayの『4K 宮古島』だ。
ビーチの陽光とともに透き通る海をあるがままに写したコンテンツとして業界内でも評判のコンテンツだが、白い砂浜のそばにある岩場の影に寄せる波には、日陰のシャドウの中にあるこそばゆい光を目にして、思わずこれぞ実景のリアリティと見入ってしまった。
普段から日常的にディスプレイの画質を評価している際、SDR映像は「(ディスプレイで見る画質として)キレイ」、あるいはHDRでも「(HDRの表現として)キレイ」と考えてしまいがちだが、「Z9D」は、文字通り肉眼で見たものに近いリアルさを備えている。
なぜ、「Z9D」の画質はリアルなのか。
HDRでは輝度レンジの幅が従来の100nitから一般的なUltra HD Blu-rayのガイドラインでは1000nit、ドルビーのパルサーを基準にすれば4000nitまで拡大することで、「輝度の範囲を増やす事で純度の高い綺麗な色が見え、密度が増して立体感を損なうことがなくなる、そこがメリット」(小倉氏)としている。
現在ではまだHDRと言うと、暗闇にライトが輝くようなイメージが先行しているが、HDRの本当の価値は、4Kや8Kなどの解像度スペックとは別方向の情報量と、それに基づく圧倒的な画質向上にあるのだ。明るさのダイナミックレンジが広がるだけでなく、色についても圧倒的に鮮度が高まる。
小倉氏はこれを「HDRness」と表現していた。HDRにしか成し得ない次元の高画質を指す「HDRness」という基準は、まさにHDR時代の圧倒的な密度とヌケ感のある映像にふさわしい。
では、輝度スペックがどれだけあれば「HDRness」を体現できるのか、と堂々巡りをしてしまいそうになるが、小倉氏は個人的な見解として「ディスプレイは輝度性能が500カンデラあればHDRらしさが出る、1,000カンデラでHDRになる、2,000カンデラでリアルが出てくる、4,000カンデラでは本物になる」と表現していた。
この「HDRらしさ」から「リアリティ」へと移行していく様が、まさに「HDRness」の領域というのが筆者なりの解釈だ。
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