折原一也が開発陣を直撃
【レビュー】革新的バックライト搭載、ソニーの “マスター” テレビ。 BRAVIA「Z9D」を見た
■SDRもHDRへとリマスターするプロセッサー「X1 Extreme」
「Z9D」のもう一つの機能として、画質エンジンとして新搭載した「X1 Extreme」についても、HDR時代を見据えた機能が盛り込まれている。
新しい映像フォーマット、映像表現が現れる際には常に移行期が存在する。SDRからHDRの映像も同様で、その間を埋めるSDR→HDR変換を担うのが「X1 Extreme」だ。
SDRからHDRへの変換は「オブジェクト最適化型HDRリマスター」という仕組みで行われる。映像をオブジェクトごとに検出、さらにBright、Mid、Darkという輝度領域別にコントラストを調整し、全体のバランスを最適化するというものだ。
「リマスター」という名称ではあるが、100nitのレンジの映像をHDRのレンジへ拡張するということは、HDR映像の制作で用いられる言葉を借りれば、再グレーディングをしているような動作に近い。
「オブジェクト最適化型HDRリマスター」のポイントは、従来のコントラスト拡張はテレビメーカー各社の研究成果がベースになっていたのに対して、HDR時代においては、制作者がHDRでグレーディングしたお手本がすでに存在することだ。
今回の取材時では、SDR→HDR変換の映像は体験できなかったが、SDRコンテンツも「HDRness」の領域に届くHDRコンテンツに作り変えることができれば、HDR普及への強力な後押しとなるだろう。
近年では「映像のソニー」という言葉を聞くことが少なくなった感があるが、「Z9D」の仕様や映像からは、HDRという新技術を契機に、他社を大きく引き離そうというソニーの執念すら伝わってくる。
75インチ(100万円前後)、65インチ(70万円前後)とこの画質が他社ハイエンドと並ぶ価格で実際に家庭に届くことを考えると、「Z9D」はまさにHDR画質新時代の幕開けを告げるモデルとなるだろう。