バランス出力にも対応
“パイオニア流サウンド”を鳴らす新DAP「XDP-300R」レビュー
■鮮明に浮かび上がるJ-POPのボーカル。バランス接続では情報量とS/Nを向上
続いてXDP-300Rのサウンドをじっくりと聴き込んでみる。イヤホンのリファレンスにしたのは、オンキヨーが11月に発売するインイヤー型イヤホンのハイエンドモデル「E900M」で、アンバランス接続で試聴した。
まず宇多田ヒカルの『花束を君に』を聴くと、歌声はより中域の輪郭を鮮明にも持たせており、楽曲の主役として立ち上がる。オーケストラの演奏ではピアノよりヴァイオリンが存在感を放ち、またバスドラの音も弾けるようなリズムを感じ取れる。
男性ボーカルのJ-ROCK、KEYTALK『桜花爛漫』はエレキギターのエッジが鮮明でダイナミックな鳴りだ。ベースもエネルギッシュで情報量を出すタイプで、男性ボーカルのアタックもタイトだ。
続いて、アコースティックな楽器の含まれる音源を試聴。SHANTIのジャズナンバー『Killing me softly』を聴くと、アコースティックギターの立ち上がりもダイレクトに存在感を持つ。ゴリっとした重低音も弾力も引き出されており、ライブ感は抜群だ。カラヤン指揮の『ヴィヴァルディ:四季 -春-』では、弦を高域まで急峻な音の刻みで引き出し、よりステージに近い位置のサウンドを彷彿とさせる。
バランス接続対応のヘッドホンではどうだろうか。再びヘッドホンをパイオニアのSE-MHR5にして、アンバランス、バランスと順に比較してみた。
バランス接続では、S/Nが一段と引き上げられたXDR-300Rの持ち味である、弾むようなレスポンスの良さがさらに引き上げられ、ピアノとベースのリズムの刻みがより立体的な情報を持ち始める。鮮明なボーカルと声と共に音場感も加わるため、音楽としての完成度をより引き上げるようだ。なお、バランス接続の効果は「ACG」のキレあるサウンドが特に効果的だった。
他社のヘッドホンでも試聴すると、SHUREの「SRH440」では余裕すぎる駆動力で特にダイレクトな音の響きの志向があり、ゲインをLOW1〜LOW2で聴くと、より弾けるような質感が引き出される。特に気に入ったのがAKGの「K712 PRO」で、XDP-300RのゲインをLOW1のまま持ち出すと、元のヘッドホンのナチュラル志向からアタック感が加味され、モニターヘッドホンらしい情報量となる。
XDP-300Rの音質キャラクターとしては、ダイナミックな響きとアタックの強さを持ち味なので、J-POPやロックといったボーカル曲との相性は抜群だ。イヤホン/ヘッドホンの組み合わせはというと、同系統のライブ感重視のイヤホンを組み合わせても良いが、むしろナチュラルに情報量と音場感を持つタイプと組み合わせてベストバランスに追求すると面白そうだ。
なお、再生関連の機能ではXDP-300Rのみのファンクションとして「クラブサウンドブースト(3段階)」も利用できる。ハイレゾ出力が無効になる文字通り強烈な重低音ブースト機能だが、バランス接続でも利用でき外出先の電車等で音楽を聴く際に足りない低音をカバーする目的でも上手くマッチした。
XDP-300Rをじっくりと聴き込んでみたが、やはり音のチューニングとしては第1世代XDP-100Rの正当後継機だと感じた。スペックは似通っていても、オンキヨーのDP-X1とはサウンドチューニングが相当異なっている。なお価格レンジはオンキヨーの第1世代DP-X1と同じ69,800円クラスにまとめられている(ちなみにオンキヨー第2世代のDP-X1Aは79,800円)。
高音質化と共に、待望の2.5mmバランス接続端子も搭載したXDP-300Rは、パイオニアの音をベースとして自分好みの音を追求したい人にお勧めしたいニューモデルだ。