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従来モデル「SHE9720」との比較も

ハイレゾ新対応のフィリップス「SHE9730」を聴く。高コスパ代名詞“キューナナ”はどう進化した?

公開日 2017/01/23 11:28 高橋敦
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その他の技術面も、これまでのSHE9700を踏襲している。エアベント構造「ターボバス」では、深みのある豊かな低音を再現。耳への挿入角を調整した「角度付きアコースティックパイプ」は、音がより素直に鼓膜へ届くように、装着感もより素直なものになるようにという工夫だ。「人間工学云々」というちょっと聞き飽きたセールスポイントも、ヘルスケア分野の有力メーカーでもあるフィリップスが言えば重みがちがう。実際、装着感はさすがの快適さだ。

U字型ケーブルを採用しており、右側だけケーブルが長い

L字型のステレオミニ端子を採用

Y字ではなくU字のケーブルも継承する。右側の長めのケーブルを首の後に回して装着すれば、外の音を聞きたいとき右側だけ外しても、イヤホンが自然と首からぶら下がってくれる。このタイプは減少しており、この使い勝手を好む方には貴重な存在だ。

高い解像感で空間をクリアに描き、中低域もよりパワフルに

さて、そのサウンドだ。SHE9720と比較すると「違いはあるが同系統」で「同系統だが違いもある」という、納得の落とし所。併売されるのでお互いの個性は必要だが、後継的な位置付けでもあるので核はしっかり継承していかねばならない。SHE9730のサウンドはその要件を的確に満たしている。

SHE9730を、従来からのSHE9720と比較しながら試聴していった

やはり気になるのは「以外」の部分だろう。大きな偏りのないバランス型で目立ちすぎる強調はないという基本を土台とした上で、端的に言えば「SHE9730の方が音色は明るく空間の見晴らしもクリア。中低域はパワフル」となる。

ロックバラードの曲、Q-MHz feat. 小松未可子さん「ふれてよ」では、アコースティックギターのシャリンとした鈴鳴りがSHE9720より強めに出るし、エレクトリックギターのカッティングもシャープな印象。全体としてもSHE9720は馴染みの良さが持ち味なのに対して、SHE9730は解像感も打ち出したすっきり系の雰囲気だ。

ベースやドラムスなど中低域の楽器の感触も明確に異なる。SHE9720では素直に軽やかにスパンと抜け、SHE9730ではパワーと重みを溜めて密にする。「ふれてよ」のリズムセクションの場合だと、SHE9720で聴くとポップスらしい軽快さ、SHE9730で聴くとロックらしいドライブ感の方が強めに引き出される印象だ。

SHE9730(右)とSHE9720(左)

こういった傾向に伴い、全体との距離感にもちがいがある。SHE9720を基準に考えると、SHE9730は半歩から一歩ほど前に踏み出して聴いている様子。全体の奥行きなどの立体感は少し控えめになるが、近づいた分だけひとつひとつの音の存在感、それぞれの細部は見えやすくなる。全ての音がほどよく馴染んだ全体像を楽しむにはSHE9720、それもありつつ細部のディテール、演奏や音色の機微にも耳を凝らしたいならSHE9730が合うのではないだろうか。

とはいえ、その特徴はSHE9720と比べた場合のこと。基本的には前述のように、大きな偏りのないバランス型で目立ちすぎる強調はない。ジャンル的な得手不得手は少ないし、ユーザーとの相性、好き嫌いも別れにくいはず。さらにその上で、明らかに「得意」とするところも備えている。

次ページ9700シリーズらしいオールマイティさに現代的なニュアンスも加わった

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