セパレート機の技術をワンボディに凝縮
プリメインの次元を超えたサウンド ー エソテリック「F-03A/F-05」を聴く
■「F-05」はドライブ能力が非常に高く、滑らかで彫りの深いサウンドが魅力
試聴テストはエソテリックの試聴室で行った。ディスクプレーヤーは同社の「K-03X」を、スピーカーはTANNOYの「Kingdom Royal Carbon Black」を用いた。
まずはF-05から聴くと、滑らかで艶やかな音だ。ワイドレンジではあるのだが音像にコシとコクがあって、まさに彫刻的という言葉がぴったりの彫りの深いサウンドである。音場は清潔で余計なものがなく、聴感上のSN比が高い。スピーカーのドライブ能力は非常に高く、大音量時でも15インチ口径のウーファーを完全にグリップし、低域が膨満する心配はない。
ジャズは音場感とエネルギー感が高度なレベルで両立している。通常のプリメイン機だと両者はトレードオフの関係にあるのだが、本機は凡百のプリメインアンプとは次元が異なるようだ。ボーカルは癖がなくてキレイで、歌詞の聴き取りやすさも抜群だ。クラシックでは大編成オーケストラを苦もなく描ききっている。音楽的には楽曲や演奏に介入しない。
■音色の艶やかさと味わい深さ、さらに品格が高い「F-03A」
F-05はほとんど発熱しないが、F-03AはA級動作なのでそれ相応に熱くなる。F-03Aのサウンドは基本的にF-05と同傾向の表現なのだが、音色の艶やかさと味わい深さと、音楽の品格はこちらに軍配が上がる。ただし、パワーハンドリングにかけてはF-05のほうが上だ。どちらを選ぶかは好みの問題なので、読者のご判断にお任せしたい。
最後にトーンコントロールの使い勝手のついて記しておこう。ターンオーバー周波数はバスが63Hz、ミドルが630Hz、トレブルが14kHzで、通常の2バンドのものとは大きく異なる。特にミドルの上げ下げは音楽に与える影響が大きい。またトレブルの上げ下げで音場感の印象を変えることも可能だ。これはなかなか使える機能である。今回は時間の関係で試せなかったが、機会があればフォノイコライザーの音も聴いてみたい。
(石原 俊)
本記事はanalog vol.52からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。