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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第181回】高級ヘッドホンで聴く上坂すみれは“ココ”がすごい!注目コラボモデル予約締切直前企画

公開日 2017/03/03 10:00 高橋 敦
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▼5th「閻魔大王に訊いてごらん」(2014年12月10日)

「閻魔大王に訊いてごらん」初回限定版(左)と通常盤(右)

□曲の復習!

作詞作曲は別のコンビによるものだが、同じく「鬼灯の冷徹」シリーズED曲ということで「パララックス・ビュー」に通じるハードさもある曲。しかしあちらを「メタルよりもコア寄り」とすればこちらは「コアよりもメタル寄り」と言えるだろう。例えばギター。空間をぶわっと埋めるようなアプローチよりも明確なフレーズや細かな刻みが多用されている。シングル表題曲の中では上坂さんのメタル趣味に最も寄り添った曲だ。

□音楽的なポイントは?

アコースティックギターの情緒的なフレーズから、上坂さんの優しく語りかけるようなボーカル…からのメタル炸裂なイントロ。メタルの王道、静かな導入部からイントロ本編で爆発パターンだ。ここの爆発力、静と動のコントラストの表現でまずヘッドホンの力が試される。大切なのは動よりもむしろ静だ。嵐の前の静けさを感じさせてくれる、そんなヘッドホンで聴きたい。

またフレーズの帯域にしても、音色の重心にしてもギターがかなり低いポジション取りをしており、ヘッドホンの低域再生能力がそれに対応できないとギターの表層というか上澄みというか、高域側ばかりが目立ってしまって曲全体が軽くなる。「低くて厚いギター」も聴かせてほしいところだ。

□コラパケ高級ヘッドホンで聴いてみた!

「嵐の前の静けさ」については、抜けや広がりに優れる開放型のハイエンドヘッドホンだと、ここを外に広げることで空間をすっきりさせてその印象を強められるのだが、本機では正直もう少しぐっと抑えて静かにしてくれたほうが良いかなとも思った。

しかし「動」「嵐」になってからは本領発揮。ギターの厚みがすごい!ハイエンドヘッドホンでも「忠実再生」や「モニター系」を謳うタイプだと、中低域にここまでの厚みを持たせてくるモデルは少ない。対してこのモデルは、過度な演出まではしないが、忠実再現に固執しすぎることもなく、音の大柄さや厚みといった明確な個性を備えている。この個性を「三国志」に喩えるならば…………すいません「三国志」いまだによく分かりませんすいませんすいません。とにかく、その個性がこの曲の「動」の部分にハマるのだ。

▼6th「Inner Urge」(2015年7月22日)

「Inner Urge」初回限定版(左)と通常盤(右)

□曲の復習!

現時点で革ブロ内外を問わず、アニメファン全体に一番響いているキラーチューンはこれだろう。「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」EDにふさわしい、しかしそれまでの上坂すみれ作品らしからぬ別方向↓に過激な歌詞のインパクトがまずはあったかと思う。ご本人も発売当時から「歌詞はアレだけど曲が好きだから歌える感じ」的なニュアンスでお気に入りのようであるし、サウンドだけに注目してもライブで盛り上がること納得!な曲。

□音楽的なポイントは?

ユーロビートより前の時代、ファンキーでグルーヴィなディスコサウンドをグルーヴ職人たちによる鉄壁のリズムで再現!……ではなく、ツボは押さえているのにどこかエセ感みたいなものも漂わせ、ポンコツファンク的な緩さを醸し出しているところがまた絶妙。筋肉少女帯「暴いておやりよドルバッキー」あたりに通じるものも感じさせる。

ミックスとしては、ひとつひとつの楽器それぞれの音をキレイに分離してクリアに聴かせ……ないことがポイント。往年のファンクやソウルの録音手法を模したものだろうか。それぞれのプレイヤーは細かな演奏をしているのだがあえてそれぞれを立たせず渾然一体とさせてある。結果、たくさんの楽器も上坂さんの歌も平等に横に並ぶのではなく、一体化された演奏の前に上坂さんの歌が一人立つという構図が成立し、歌ものとして見事なミックスだったりもする。

□コラパケ高級ヘッドホンで聴いてみた!

好ましい意味での「エセ感」「ポンコツファンク的な緩さ」というところが、またもやこのヘッドホンと相性良好だ!タイトに、繊細に、なんて表現しない!大味っていいよね!といった単純明快な楽しさでこの曲を表現してくれる。

特にこれは美味しい!と思わされるのはベース。骨太で芯の強い音になんてせず、ボウンと大きくふくよかに膨らみ、包み込むようにおおらかなグルーヴを生み出してくれる。実際はどういう楽器で弾かれたのかはわからないが、ベーシストには「ジャズベではなくプレベの美味しい音色」と言えば伝わりやすいだろうか。

そしてそのベースを筆頭に、それぞれの演奏も音もどれも見事なのに全体を見ると本格的すぎずポンコツ感を醸し出している。そのマジックに改めて驚かされる。

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