映像処理エンジンだけではない高画質の秘密
「ソニーの有機ELテレビ」の実力とは? BRAVIA「A1シリーズ」速攻レビュー
■暗部階調まで徹底的にトラッキングする精緻な画質
65型の「KJ-65A1」で実際の映像を確認すると、そんなチューニングの甲斐あって、極めて精緻にトラッキングされていることがわかる。
筆者の現在のリファレンスであるUltra HD Blu-rayソフト『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』を観ても、圧倒的な暗部階調の表現力、暗部からの微小信号を描き切る能力に驚かされる。
HDR初期に、他社の有機ELや液晶テレビで特に目立った、暗部がグリーンがかる傾向や、明るい色が濃くなるような目に見えた弱点のない、マスターモニターに極めて近い画質を実現している。
ただし視聴して気づいた点もある。A1シリーズでは最も信号に忠実に表示するモードが「カスタム」のデフォルト値なのだが、中間階調から上あたりが若干白っぽくなり、結果として中間階調の立体感の表現が浅くなることがある。
その原因は、T-CONのカスタマイズ不可能な部分に組み込まれた、有機ELパネルの”W”を用いて輝度を確保する箇所にあるようで、結果として「カスタム」には、若干だがパネルの癖が現れている。
日を改めて視聴した「スタンダード」「シネマ」系の画質は、この特性が上手くカバーされていたので、パネルのポテンシャルを活かした上でAVマニア的に映像を鑑賞するのであれば「シネマ」系画質モードを推奨したい。
■HDRリマスターの高精度処理によって「放送も高画質で観られるテレビ」
薄型テレビである以上、映画以外のコンテンツの画作りも重要だ。「KJ-65A1」でSDRのビデオ系映像を観ると、改めてX1 Extremeエンジンに組み込まれた「HDRリマスター」高画質化処理に驚かされる。
「HDRリマスター」のポイントは、画面全体を見渡した際、その奥行き感を認識する認知特性を先取りした処理が組み込まれたこと。HDRならではのヌケの良い画質が、A1シリーズを「映画だけでなく放送も高画質で観られるテレビ」たらしめている。
では、昨年HDR時代の最高画質テレビとして各所で絶賛された「Z9D」とどちらが高画質なのか? と問われると、明るい部屋、HDRとしての表現力重視であればやはり「Z9D」に軍配が上がる。高いピーク輝度から来る、明るさの表現力がケタ違いなのだ。
しかし、そんなZ9Dシリーズですら、A1シリーズの後に観ると黒が浮いている事が気になり始めてくるので、暗室の視聴ではやはりA1シリーズがトップモデルだ。