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あらゆる「エレクトロスタティック」をドライブ

エキサイティングなエナジャイザー(2) ― iFI Audio「Pro iESL」テクニカルノート

公開日 2017/07/04 15:07 iFI-Audio(翻訳:生塩昭彦)
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■第3の方法:キャパシティブ・バッテリー電源

Pro iESLの内部。左右にあるのが、キャパシティブ・バッテリー電源

私たちはさまざまなハイファイ製品を独自にコレクションしていますが、その中のバッテリー電源を使ったビンテージ・エナジャイザーを聴いてみたところ、電源を切っても、小さなキャパシターに保持されていた電気で何分間もエレクトロスタティック型ヘッドホンを駆動できることに気づきました。もっとはっきりと分かったのが、原始的なスイッチモードのステップアップ回路がオフになっていたため、音質が明らかに良くなったという点です。これこそまさに「ユリイカ!」の瞬間でした。

■第3の解決法

私たちは大容量のキャパシターを備えたバッテリーを使おうと決心しました。ドイツWIMA社のフィルム・キャパシター(公称1000V DC)を使うのです。次の目標は、これを必要な電圧まで充填したら、充填回路を完全に切って、キャパシター・バンクを必要とされるバイアス電圧のところで「フロート」させておくことです。これによって、本質的に完璧なバイアス電圧と純粋な静電気が得られ、どの周波数においても電気ノイズが発生することがなくなります。
一石二鳥どころではないのです!

■設計

このワンタイム充填を実現するために、私たちは非常に高い周波数(約750kHz)のスイッチングシステムを用いています。このシステムは、完全にシールドされた小さなトランスと、新種の超高速高電圧整流回路を使っています。さらに重要なのが、このシステムはキャパシター・バンク内に適正なバイアス電圧が確立されると直ちにシャットダウンするという点です。これはまた、公称バイアス電圧に対して0コンマ数ボルトの精度でバイアス電圧が精確にレギュレーションされているということであり、家庭用電源の電圧の変化や他の要因によってバイアス電圧が変動することがないということです。

例え空気を通してでもわずかな放電は起こるので、キャパシター・バンクを30秒程度ごとに補填する必要がどうしてもあります。この過程は、バンクがフル充填されていれば、通常は100万分の数秒(数マイクロセカンド)しかかかりません。というのも、通常は失われた充填を再補填するには、ひとつあるいはニつのスイッチング・サイクルで十分だからです。そしてスイッチングシステムは再び完全にオフになるのです。

このシステムで生じるいかなるノイズも、それが発生している短時間(めったにありませんが)の間は、中波無線帯域に制限されます。実際には、その時間の99.999%以上の間、充填回路は完全にOFFになっています。

結果として生まれたのが、エレクトロスタティック型ヘッドホンにバイアス電圧を供給するための、事実上完璧な高電圧バッテリーです。完全に分離された、独立した2つのバイアス回路が用いられています。ひとつは230Vの「ノーマル」バイアス用、そしてもうひとつは、現代のさまざまなエレクトロスタティック型ヘッドホンに対応できる、調節可能なバイアス用です。

これが全て完全に分離した回路の中で実行されます。この回路はスタンドアローンであり、音楽の経路からはまったく切り離されています。


この独自の解決法を使うことで、Pro iESLのキャパシティブ・バッテリー電源は、知られているあらゆるエレクトロスタティック型ヘッドホンに対して、信じられないほど広い電圧選択幅でバイアス電圧を供給することができるのです。

バイアス電圧
230V (Normal) ― 旧型の「ノーマル・バイアス」Staxエレクトロスタティック型ヘッドホン
500V (Custom) ― Sennheiser Orpheus HE-90
540V (Custom) ― Sennheiser HE-60、King Sound KS-H2/3/4
580V (Pro) ―「Proバイアス」 Staxエレクトロスタティック型ヘッドホン
600V (Custom) ― KOSS ESP/950、Jade
620V (Custom) ― 将来用の予備
640V (Custom) ― 将来用の予備


他のエナジャイザーと比べると、これは異常なほど包括的な調節幅であることが分かります。Pro iESLのバイアス電圧へのアプローチは独自のものなのです。

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