【特別企画】評論家・山之内正が一部始終をレポート
「ハイファイオーディオの理想に近づく新たな可能性」 ー 注目ヘッドホンサービス「WiZMUSIC」の魅力に迫る!
もう一つ、スピーカーとの距離も重要な要素の一つだ。頭外定位の音像の位置を遠めに設定したい場合は測定時にスピーカーとの距離を推奨位置よりも少し離すなど、微妙なチューニングを行うことができるようだ。
測定終了後、データを再生アプリケーションに反映させると、いよいよWiZMUSICのサウンドを聴くことができる。WiZMUSICにはヘッドホンアンプとヘッドホンが付属し、その組み合わせで最良の結果が得られるように設計されている。今回はプレミアムパッケージのWiZMUSIC 90に同梱される「SU-AX01」と「HA-WM90」をアンバランス接続でつなぎ、パソコンのアプリケーションから3曲を試聴した。
最初にシベリウスの《フィンランディア》をフェドセーエフ指揮モスクワ放送響の演奏で聴く。アプリケーション上でEXOFIELDの効果をオン・オフしながら試聴を進める際、オンとオフのどちらを選んでいるのか逐次明示していただいたのだが、それを見るまでもなく音の違いはきわめて大きく、聴き間違える余地はまったくない。
EXOFIELDをオンにするとすべての楽器の音像が目の前のスピーカーの位置に近付き、ヘッドホンで聴き慣れた音場とは明らかに異なる前方に重心を置いたサウンドステージが展開する。最初はスピーカーからも音が出ているのではないかと疑うほど前方定位が強く、思わず身体を動かして、ヘッドホンだけから音が出ていることをたしかめてしまった。
EXOFIELDをオフにすると、オーケストラが一気に内側手前に引き寄せられ、トランペットやティンパニなどステージ中央寄りに位置する楽器の音像はほぼ頭のなかで鳴っているように感じる。それはこれまでヘッドホンで聴き慣れたバランスそのものなのだが、EXOFIELDの効果を実感した直後にあらためて聴くと、やはり違和感を感じてしまう。
■ヴォーカルものではさらにEXOFIELDの効果を実感
次に聴いたセシル・マクロリン・サルヴァント《ホワッツ・ザ・マター・ナウ》はEXOFIELDの効果をさらにはっきり聴き取ることができた。
ヴォーカルはいろいろな音源のなかでも特に頭内定位が気になりやすいのだが、EXOFIELDをオンにすると声の輪郭が明瞭になると同時に重心が前に移動。ここまでフォーカスがピタリと合った声の音像は通常のヘッドホンでは想像するだけでも難しいのだが、HA-WM90で聴くヴォーカルは声のイメージだけでなく発音までクリアに聴こえてくる。