テレビでは得られないシネマ体験
エプソン「EH-TW8300W」で見る “超大画面4K/HDR” 。UHD BDの人気3タイトルでチェック
例えば、チャプター2の冒頭では背景や衣装のブルーという色自体が明るくぼやけるし、屋内のシーンは色の明暗と階調が現れず、明るくポップな部屋のように見えがち。登場人物たちが踊るシーンも、BD版では描写が難しい。チャプター11のライブもHDRでは肉眼とほとんど同じ水準で観ることができていたが、BD版ではスポットライトの光が白く潰れる上に被写体も表現できなくなるし、ステージ上の光の演出も平坦的と、まったく別モノ。映画『ラ・ラ・ランド』は劇場で3回鑑賞しているが、スクリーンの表現に近いのはもちろんUHD BD版だ。
当初は2K/4Kの解像度の差、SDR/HDRのハイライト表現の違いさえ確認できたらと思ってテストしたのだが、BT.709とBT.2020のカラースペースの差、8bitと10bitの階調の差と、BDとUHD BDのディスクのフォーマット差が如実に現れてしまった。
誤解のないよう言っておくと、あくまでEH-TW8300WはBDに収録されている映像を正確に再現しているだけだ。つまり作品本来の映像表現を体験するには、迷うことなくEH-TW8300WとUHD BDの組み合わせを検討してほしい。
■超高画質『ハドソン川の奇跡』とCGアニメ『怪盗グルーのミリオン危機一髪』でもチェック
さて、次はUHD BD版の『ハドソン川の奇跡』を視聴。特に高解像で明るいシーン中心のチャプター4を鑑賞した。この作品のチェックポイントは映像ソース自体の極めて高い解像感だが、EH-TW8300Wで観ると、コクピットの映像表現の精緻さはなかなかのもので、「4Kエンハンスメントテクノロジー」がよく効果を発揮している。不時着した旅客機機長を演じるトム・ハンクスの肌の皺や質感表現も緻密に現れる。
特に感銘を受けたのは映像世界に吸い込まれるような奥行き感で、機内の移動撮影、そしてハドソン川を見下ろすショットや俯瞰映像の見通しの素晴らしさ。続くチャプターのネオンの明るさも、HDRらしい艶めかしい光のリアリティで視聴者に迫る。
CGアニメ作品はどうだろうか。UHD BD版の『怪盗グルーのミリオン危機一髪』のチャプター8、夜のショッピングモールへと潜入するシーンを視聴すると、月明かりに照らされる暗いレストランのなかで繰り広げられるアクションシーンを、HDRのレンジ感と階調表現でクリアに描き出す。
ディテールに目を配れば、グラスに反射する光の美しさといった作り込みまで正しく表現するのは、本機だからこそだ。モール内をミニオンの運転する車が疾走するシーンはヘッドライトの光の表現がダイナミックに用いられ、こうした画面内の“眩しさ”の表現はプロジェクターで鑑賞しても効果抜群だ。
UHD BDの映画3タイトルを鑑賞したら、EH-TW8300Wの真の実力が発揮されるタイミングが到来したことを実感する。特にUHD BD版とBD版を比較した映画『ラ・ラ・ランド』では、4Kと2K、HDRとSDRの差だけに留まらない、色域と階調性までも含めたトータルの絵作りの次元が引き上げられたことが、映像表現として如実に現れていた。
有機ELモニターで分析的に映像を見渡すのも高画質鑑賞のあり方のひとつだが、100インチオーバーの大スクリーンで鑑賞できるプロジェクターにしかないシネマ的な体験には、また違った価値がある。EH-TW8300WとUHD BD作品による、ハイクオリティ表現と大画面、そして新たな作品世界。AVファンであれば、この新次元の映像体験をぜひとも体験してみてほしい。
(折原一也)