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<山本敦のAV進化論 第145回>

【レビュー】ソニー“ウォークマン”「NW-ZX300」の音は上位機「WM1A」にどれだけ迫ったか?

公開日 2017/09/21 10:07 山本 敦
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まずは新旧・ZXシリーズ同士の対決からはじめよう。リファレンスのイヤホンにはAKG「N30」を使った。ZX100はすべてのEQ機能をオフに設定し、ZX300の方ではすべての“音もの機能”を一斉にシャットダウンする「ソースダイレクト」をオンにしている。

ZX300とZX100の実力を比較

音もの機能を全オフにする“ソースダイレクト”をオンにして聴き比べた

【女性ボーカル】土岐麻子・ベストアルバム「HIGHLIGHT」から『乱反射ガール』

ZX300では中高域の解像感と見晴らしが格段に向上した。音の輪郭が正確に捉えられるようになり、サウンドステージもよりワイドで立体的。比べながら聴くとZX100はすべての帯域でエネルギーの押し出し感が強いものの、それが窮屈な感じにも受け止められてしまう。

一方で、ヘッドホンやイヤホンの組み合わせにも寄るのだろうが、ZX300ではボーカルの滑舌や、ドラムスの高音の響きがやや硬く感じられるところもあった。ZX100では柔らかく鳴っていたビブラフォンの高音も、ZX300ではあと一息の伸びやかさが欲しくなる。エイジングを重ねていけば改善されてくるのかもしれない。

【ライブ録音】MISIA「星空のライヴIII@山中湖シアターひびき」から『Everything』

ZX300で聴く冒頭ピアノの前奏は輪郭がとても鮮明で、高音の煌びやかさが楽曲の印象にぴったりとハマった。全域に渡って正確に焦点が合った写真や映像を眺めたときのように軽いめまいを感じてしまうほど、ビシッとフォーカスが揃っている。これがZX300の持ち味であり、ライブステージを録音したこの楽曲と相性が合ったように思う。ボーカルやバンドの楽器の定位感がとても鮮明で、つむがれる音が空間に浮かんでくるみたいに視覚にも訴えかけてくるリアリティを体験した。

ボーカルの息遣いがここまで近く感じられるとやや非現実的に感じられてしまう所もあるが、口元の動きを至近距離でトレースできるポータブルオーディオプレーヤーは数少ないだろう。ドラムスのハイハットやシンバルの音も細かく一粒ずつ、素速く正確にフォーカスが合う。厚手の音をぶつけてくるZX100の低域再生に対して、ZX300のそれはコンパクトながら弾力と粘っこさがある。

【ダンスミュージック】マイケル・ジャクソン「Off The Wall」から『Off The Wall』

ZX300の低音はとてもリズミカルだ。軽やさが秀逸。音の立ち上がりと立ち下がりが非常に俊敏で素直。耳もとにさわやかな余韻を残していく。ボーカルの音像もグンと前に出てきて、粒立ちの良いエレキのカッティングや弾力のあるベースラインと、それぞれの役割をはっきりさせる。コーラスと金管楽器が重なり合う柔らかいハーモニーがするするっと綺麗にほぐれる。

比較してしまうとZX100の音場に立体感がやや不足しているようにも感じられてしまうほど。開発当時のトレンドに沿ってそれぞれベストを尽くして作り込んだプレーヤーなのだから、どちらかが上下の関係というより、はじめから立ち位置が違うのだと捉えた方が正しいのかもしれない。

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やはりZX300のサウンドは個々の楽器の音をていねいに拾い上げる。フォーカスがキリッとしていて鮮明だ。反面、比べて聴くとZX100は中低域の厚手のグルーブに包まれるような熱っぽさがやっぱり魅力的だ。ZX300は奥行きの見通しが深く、全体に上品なサウンドにまとめあげている。エネルギーの押し出しは控えめだが、ビブラフォンのソロは余韻の切れ味が爽快。金管楽器もクールな鳴りっぷりだ。

筋肉質な低音もこの楽曲にマッチして、クールな疾走感を生み出す。この楽曲に限って言えば、メロディを強く押し出してくるZX100の元気なサウンドは長く聴いていると疲れてくるかもしれない。

【ジャズ・ピアノトリオ】上原ひろみ「SPARK」から『Wonderland』

今回聴いた楽曲の中で一番ZX300のサウンドに気持ち良くハマった。すべての楽器が活き活きと鳴っている。こんなプレーヤーで聴いてもらえたら、演奏者冥利に尽きるだろう。ピアノの音が生き物のように生々しく躍動する。ZX300のようにドラムスの多彩な音色を自在に描き分けられるポータブルオーディオプレーヤーはそう多くはない。

エレキベースは線がやや細く感じられるものの、全体のバランスにほどよくフィットしている。微細な音もどこから鳴っているのか方向がきちんと見える。細かな音の制動力も高く、無駄な余韻が感じられない。生演奏の空間に迷い込んで、帰って来られなくなる。スコアが進むほどに気持ちく加速して、気がつけばあっという間に曲の終わりを迎えていた。

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この曲をZX100で聴いたときの、音の壁が前方向からガツンとぶつかってくるような迫力は今でも捨てがたい。比べるとZX100は派手で元気な音づくりのようにも思えてくるほど、ZX300のディテールを無心に突き詰める圧倒的な解像表現力はキャラが立っていると言うほかない。エレキベースの弦を弾く指先、ハンドクラップの手元も瞬間的に映像が浮かんでくる。ライブのようなリアリティに伝えるプレーヤーだ。

続いてフラグシップのNW-WM1Aと聴き比べる

ZX300の音づくりのベンチマークになったというWM1Aとの聴き比べに挑もう。

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