【特別企画】ステレオ/マルチchの音質をチェック
モニターオーディオ「新Silverシリーズ」を聴く ー 旗艦機のDNA継承で進化したミドル級スピーカー
ブックシェルフのSilver 100につなぎ変えてみよう。ドライバー数が減って帯域が制限される分、演奏の中の前に出るべき音が引き立つ。分かりやすくいうと、メロディーがくっきり浮かび上がりベースラインなど低音も明瞭なので、曲の流れを追っていきやすい。ポピュラー系ソース中心なら、むしろSilver 100の方が音楽に集中できるかもしれない
高橋アキのエリック・サティは両手で弾くもつれ合った音符の中のメロディーがくっきり浮かび上がり、詩情が前面に出る。ハイレゾの『ワルツ・フォー・デビー』(FLAC192kHz/24bit)はピアノのアタックが鮮明で切れ味がよい。ダイレクトな音圧感は、数あるブックシェルフ型スピーカーの中でも傑出した存在といえる。
ベースは厚く太く鳴るが、やはり響きが膨満せず、輪郭と確かな芯を感じさせる。鮮明な実在感があり、音程が上下しても曖昧にならない。一方で音がしっかり前に出て親密な実在感があり、演奏者が聴き手に近い。音楽ファンに格好のスピーカーだ。
■マルチch再生では音色の統一と優れたスピードでリアルな空間を描く
次にサラウンドソースを聴いてみよう。フロントL/Rに「Silver 300」、センター「Silver C350」、サラウンド「Silver 50」、サラウンドバック「Silver FX」サブウーファー「W-12」の7.1chシステムを用意。AVアンプにはパイオニアのトップエンド「SC-LX901」を組み合わせた。
ちなみに、ドルビーアトモスなどのオブジェクトオーディオのトップ/ハイトスピーカーに関しては、モニターオーディオは現状でインシーリング(天井埋め込み)スピーカーの使用を推奨している。日本における輸入代理店のナスペックは、ラインナップにいわゆるイネーブルドスピーカーを加えることをリクエスト中と聞くが、現時点で用意されないので今回はグラウンドレベルのチャンネルベース再生でサラウンドは聴いた。
UHD-BD『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、描き出す音場空間が高く広々として、しかも密度感がある。トップ/ハイトなしでこの空間表現は驚異的だが、これはスピーカー間の音色統一が完璧で、位相も整っているためだ。移動表現のスピードが早く、矢のように直進する。本作はSEの整音が秀逸で電子音から実音、楽器演奏まで多彩な音の要素が動員されるが、それぞれの音の質感を正確に描き分ける。だから情報量が多くても音場がきれいにほぐれ、混濁なく多彩な表現だ。
ここまでのサラウンド再現が可能な要因は、フロントセクションを担う「Silver 300」と「Silver C350」の優れた表現力と、これらを含む全スピーカーのユニットの音色と位相が揃っているためだ。全7chから出音するととかく音場が飽和、混濁しやすいが、サラウンドchまで含め帯域バランスがフラットに整い、レスポンスが早く、それらの掛け算でこの清々しい音場が生まれる。
同じくUHD-BD『ラ・ラ・ランド』は、音だけ聴いているともはやサントラCDを聴いているようなハイファイ的品位に酔える。オケの楽器の音色が損なわれず分離も自然で、映像に合わせての楽器のR→L移動もスムーズで説得力がある。音色にゴージャスな艶があることで、本道シネマミュージカルの華やかさに浸れる。
最後に日本語のセリフの再現力を聞くために日本映画も再生したが、新たに追加されたセンタースピーカーの上位機種にして3ウェイ4・スピーカーのSilver C350は会心の出来。俳優の口跡の切れ味、セリフの抑揚や陰影、個々の肉声の質感共素晴しい。Platinumu I/IIのセンターも見事だったが、Silver C350はPlatinumuのセンター譲りの確かな存在感がある。映画の音の50%はセンターチャンネルが担う。「センタースピーカーも一応用意しました!」的な製品も多い中で、新Silverは映画サウンドを理解していて手抜きがない。
◇
今回の試聴で、新SilverにはPlatinumu IIのDNAが融合していることを聴き取ることができた。端正なバランスとハイスピードかつスケールの大きい再生音に、従来モデルの音調からの大きな飛躍を実感する。しかし、今回試聴したのは充実したラインナップの一端に過ぎない。まだ爪を隠しているはずだ。新Silverにはそれだけモニターオーディオのエネルギーの多くが注ぎ込まれているのだから。
(大橋伸太郎)
特別企画 協力:株式会社ナスペック
高橋アキのエリック・サティは両手で弾くもつれ合った音符の中のメロディーがくっきり浮かび上がり、詩情が前面に出る。ハイレゾの『ワルツ・フォー・デビー』(FLAC192kHz/24bit)はピアノのアタックが鮮明で切れ味がよい。ダイレクトな音圧感は、数あるブックシェルフ型スピーカーの中でも傑出した存在といえる。
ベースは厚く太く鳴るが、やはり響きが膨満せず、輪郭と確かな芯を感じさせる。鮮明な実在感があり、音程が上下しても曖昧にならない。一方で音がしっかり前に出て親密な実在感があり、演奏者が聴き手に近い。音楽ファンに格好のスピーカーだ。
■マルチch再生では音色の統一と優れたスピードでリアルな空間を描く
次にサラウンドソースを聴いてみよう。フロントL/Rに「Silver 300」、センター「Silver C350」、サラウンド「Silver 50」、サラウンドバック「Silver FX」サブウーファー「W-12」の7.1chシステムを用意。AVアンプにはパイオニアのトップエンド「SC-LX901」を組み合わせた。
ちなみに、ドルビーアトモスなどのオブジェクトオーディオのトップ/ハイトスピーカーに関しては、モニターオーディオは現状でインシーリング(天井埋め込み)スピーカーの使用を推奨している。日本における輸入代理店のナスペックは、ラインナップにいわゆるイネーブルドスピーカーを加えることをリクエスト中と聞くが、現時点で用意されないので今回はグラウンドレベルのチャンネルベース再生でサラウンドは聴いた。
UHD-BD『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、描き出す音場空間が高く広々として、しかも密度感がある。トップ/ハイトなしでこの空間表現は驚異的だが、これはスピーカー間の音色統一が完璧で、位相も整っているためだ。移動表現のスピードが早く、矢のように直進する。本作はSEの整音が秀逸で電子音から実音、楽器演奏まで多彩な音の要素が動員されるが、それぞれの音の質感を正確に描き分ける。だから情報量が多くても音場がきれいにほぐれ、混濁なく多彩な表現だ。
ここまでのサラウンド再現が可能な要因は、フロントセクションを担う「Silver 300」と「Silver C350」の優れた表現力と、これらを含む全スピーカーのユニットの音色と位相が揃っているためだ。全7chから出音するととかく音場が飽和、混濁しやすいが、サラウンドchまで含め帯域バランスがフラットに整い、レスポンスが早く、それらの掛け算でこの清々しい音場が生まれる。
同じくUHD-BD『ラ・ラ・ランド』は、音だけ聴いているともはやサントラCDを聴いているようなハイファイ的品位に酔える。オケの楽器の音色が損なわれず分離も自然で、映像に合わせての楽器のR→L移動もスムーズで説得力がある。音色にゴージャスな艶があることで、本道シネマミュージカルの華やかさに浸れる。
最後に日本語のセリフの再現力を聞くために日本映画も再生したが、新たに追加されたセンタースピーカーの上位機種にして3ウェイ4・スピーカーのSilver C350は会心の出来。俳優の口跡の切れ味、セリフの抑揚や陰影、個々の肉声の質感共素晴しい。Platinumu I/IIのセンターも見事だったが、Silver C350はPlatinumuのセンター譲りの確かな存在感がある。映画の音の50%はセンターチャンネルが担う。「センタースピーカーも一応用意しました!」的な製品も多い中で、新Silverは映画サウンドを理解していて手抜きがない。
今回の試聴で、新SilverにはPlatinumu IIのDNAが融合していることを聴き取ることができた。端正なバランスとハイスピードかつスケールの大きい再生音に、従来モデルの音調からの大きな飛躍を実感する。しかし、今回試聴したのは充実したラインナップの一端に過ぎない。まだ爪を隠しているはずだ。新Silverにはそれだけモニターオーディオのエネルギーの多くが注ぎ込まれているのだから。
(大橋伸太郎)
特別企画 協力:株式会社ナスペック