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【特別企画】「K550MKIII」「Q701」で実践

レコードをAKGのヘッドホンで聴いてみたら、スピーカー再生にはない楽しさがあった

公開日 2017/11/20 10:00 土方久明
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まずは女性ボーカルユニットKafafina『far on the water』から、track4(レコードだとB面の1曲目)「ring your bell」を再生する。『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』のエンディングに使用された曲で、数多くのTVアニメや映画のサウンドトラックをプロデュースした梶浦由記が作詞/作曲。音質の良さから、オーディオファンからも人気のある1枚だ。

Kafafina『far on the water』

ターンテーブルにレコードを置いて回転をスタートさせる。続いて、トーンアームを人差し指に引っ掛けてレコード最外周の上にスライドさせ、トーンアームをゆっくり下ろすためのリフターを操作して針を落とす。ちなみにリフターを使用しないでそのままレコードに針を乗せるとカッコがつく。数秒間の無音部にプチプチとスクラッチノイズが乗る、この瞬間「アナログを再生している」と気持ちが高鳴るのだ。

針をレコードに落とす、その動作で気持ちが高鳴る

まず、スピーカー再生で音を確認する。高域は透明感があり歯切れが良い。3人のハーモニーも綺麗に聴こえて印象は悪くない。以前は、この価格帯のプレーヤーでは出なかった音だ。ただし、ボリュームを上げていくと、少々低域がダブついて聴こえた。これはシステムというよりは、部屋の影響もあるかもしれない。

K550MKIIIを装着して、改めて針を下ろしたのだが、予想以上に良質な音に感心した。ヘッドホンらしいリアルかつダイレクトな音で、3人のコーラスの重なりあい方が実に情緒的だ。パワフルで立ち上がりが良いドラムに嬉しくなる。アナログの楽しさと言われている音色の良さや、グルーブ感のある音がヘッドホンから聴こえてくる。これは楽しい。

続いてQ701で再生した。こちらはオープン型の良さである、広がりと開放感に溢れた音。サウンドステージも頭内に広く定位し、しかも一音一音が明瞭で、使いふるされた表現ではあるが「レコードの溝の中にはこんな素晴らしい音が記録されているのか」と嬉しくなった。

そして聴き進めるうちに、あることに気がついた。楽曲の低域がたくさん出る部分で、スピーカー再生と比較して音が濁らないのだ。その瞬間「なるほど!」と手を叩いた。アナログ再生の大敵は振動であり、スピーカーからの再生音によって受けた微弱な振動が、特に安価なプレーヤーでは大きな影響を及ぼしてしまう。当たり前だが、ヘッドホンではそういった影響がなく、また周囲に気を使わず大音量が再生できるのだ。

続いて、Sonny Clark 『Cool Struttin'』をターンテーブルに乗せた。Jazzの有名レーベル、ブルーノートレコードから1958に発売されたアルバムだ。初盤(レコードではこれをオリジナル盤と言う)は数十万円ものプライスがつく。今回使用したのは後日発売された再発盤で、オリジナル盤の音質に近づけようと丁寧にリマスタリングされた1枚だ。

Sonny Clark 『Cool Struttin'』

表題曲のtrack1「Cool Struttin'」を、まずはK550MKIIIで聴く。ジャッキー・マクリーンのサックスは鋭利な刃物のように立ち上がりが良く、その距離感も近い。ソニー・クラークのピアノは立体的な表現で、ダイレクトに耳に届けられる。グルーブ感も抜群に良く、密閉型ヘッドホンとレコード、そしてジャズの相性が予想以上に良いことに驚いた。

Q701は開放型らしい空気感を感じるサウンドステージの広い音だ。前述したとおり、この1枚はリマスタリングされており、音色や音質にこだわっているのだが、マスタリングエンジニアの狙いなどはQ701の方が分かりやすい。サックスの音色も良く、スネアドラムは音の粒立ちが気持ち良い。爆音で聴いてもベースラインが安定しているのは、部屋環境やスピーカーからの音圧に影響されないヘッドホンならではのメリットと言える。

いまだからこそ、レコードはヘッドホンで

レビューで使用した2つのヘッドホンは、レコードの溝に刻まれた音をリアルかつ情報量豊かに聴かせてくれた。

レコードをヘッドホンで聴くスタイルは、スピーカー再生にはない発見があった。一番嬉しかったのが、音量を出した上で、ヘッドホンらしいダイレクトな音でガンガンレコードを楽しめたことだ。スピーカーの音圧から解放され、比較的安価なプレーヤーであっても、良い音が出しやすかったのはまさに大発見だった。

また、“良い音でレコードを聴く”には気構えがいると思っていたのだが、シンプルなシステムで完結するので、チャレンジしやすい。そしてレコード再生が楽しいのは、この先のステップが用意されていること。例えばカートリッジを変えて自分が好きなアーティストに合わせた音色や音調を狙ったり、精度の高い水平器を使って厳密にセッティングすることもできる。

さらに、レコードはデジタル/CDとは違った所有する楽しさがある。約30cm×30cmという大きなジャケットは、見ているだけでも嬉しくなる。レコードを売っている店でジャケットを見ながら、次は何を買おうかと友達と盛り上がれるし、中古レコードショップを回るのも楽しいものだ。これらはデジタルファイル再生では体験できない、レコード再生ならではの魅力だ。

大きなジャケットを眺めるのもレコードの大切な楽しみ方

音の良いヘッドホンと簡単なシステムがあれば、レコードは楽しめる。K550MKVとQ701は現在キャンペーンを行なっていて、AKG純正リケーブル(C200)と同時に購入すると値引きも受けられるとのこと。従来からのレコードファンがサブシステムを組むにも良いタイミングだろう。この機会に、ぜひヘッドホンでのレコード再生をスタートしてみてはいかがだろうか?

(特別企画 協力:ハーマンインターナショナル)

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