チューニング担当者に話も聞いた
Unique Melody「MAVERICK IIカスタム」を聴く ー 大幅進化した第2世代ハイブリッド型IEM
Unique Melody「MAVERICK」のカスタムモデル初号機を、取材用リファレンスのひとつとして長い間使ってきた。その音には満足していたが、昨年「後継機のMAVERICK IIの音がかなり良いらしい」という話を度々耳にし、気になって実機を聴いてみると、従来からの進化の度合いは想像以上だった。結果、MAVERICK IIのカスタムモデル(以下、MAVERICK IIカスタム)を導入してすでに数ヶ月が経つが、組み合わせるモデルや聴く音楽によって、いまだに新しい発見がある。
今回、長期間実際に使用してのMAVERICK IIの印象をレポートしてみたい。また、本機の共同開発および音質チューニングを担当した、輸入元のミックスウェーブの宮永賢一氏に聞いた開発エピソードも合わせて紹介したいと思う。
■BA+ダイナミックの低域構成を継承した第二世代ハイブリッド機
MAVERICK IIは5ドライバーを搭載したハイブリッド型IEMである。ドライバー構成は、低域:ダイナックドライバー×1+BAドライバー×1、中域:BAドライバー×1、高域:BAドライバー×2。従来の構成を継承しているわけだが、この低域をBA+ダイナミックという構成こそ、MAVERICKという名のアイデンティティと言える。
初代MAVERICKからの主な変更点は、フェイスプレートのベント(空気孔)が従来の1ポートから2ポートへと増やしたこと、音導管を従来の樹脂製チューブからプラチナ塗装の合金チューブへと変更したことだ。いずれも同社の先行する最新世代イヤホンで実現された仕様が、本機にも採用されたかたち。詳細は後述するが、ドライバー構成は踏襲しつつも、ダイナミックドライバーと中域のBAドライバーも変更された。
本機もミックスウェーブが共同開発・音質チューニングを行っているモデルであり、新たな設計と音質チューニングが行われている。またユニバーサルモデルが先に発売されたが、他モデルと同様、カスタムモデルでは改めて専用チューニングが行われていることも付け加えておく。
■音の抜けの良さ、全帯域にわたるクリアネスが大きく進化した
その音なのだが、一聴してわかる従来モデルからの大きな進化に驚かされた。まず音の抜け、そして全帯域にわたるクリアネスが、「数段上」と表現してよいレベルで向上した。また、低域の解像感向上が著しく、ベースやキックドラムの立ち上がりのスピードが増した。従来のMAVERICKに不満を感じていなくても、聴き比べればちがいは明らかで、月並みな言い方をすればベールを1枚、いや2枚剥いだような明瞭さを備えている。
一方で、楽器の響きが立体的かつ自然に広がること、楽器の音色再現や低域の質感表現に優れていることなど、本機をMAVERICKたらしめる特徴も継承されている。
まずはAstell&KernのDAP「A&Ultima SP1000」と組み合わせて、改めてその音をチェックする。リファレンスとして必ず用いるBonnie “Prince” Billy「Normadic Revery(All Around)」(44.1kHz/16bit・CDリッピング)は、最小限のバンド編成によるギターロックだが、それだけに音の空白や余韻の再現が重要になる。また、陰鬱なヴァースと鬼気迫るコーラスの対比は、弱音の再現や抑揚を判断するのにうってつけだ。
冒頭のキックドラムは、MAVERICK IIの方が鋭くタイトだ。聴き比べてみるとMAVERICKではやや曖昧なアタックの輪郭も、MAVERICK IIでは実に明瞭。そこに被さっていくギターやシンバルなど、中高域の音も開放的に抜ける。この抜けの良さが大きく向上しており、聴き比べると従来機がこもっているように聴こえてしまうほどだ。各楽器のセパレーションも素晴らしく、音のレイヤーが余さず見える。
ボーカルは従来機よりも前に出てきて、生々しさがより伝わる。聴きどころであり音質チェックのポイントとなるサビは、1人のボーカルが声色を使い分けてコーラスを多重録音していて、聴く環境でその印象がかなり変わる。MAVERICK IIはひとつひとつの声色のちがいを描き分けてくれ、それらの前後関係もよくわかる。抜けがいいから、力強い印象の一方で音がよくほぐれている。
七尾旅人×やけのはらの「Rollin’ Rollin'」では、ボーカルの再現力と低域再現度(特に解像感)を確認。MAVERICK IIでは、冒頭の七尾旅人の歌声が少し鼻にかかったニュアンスがわかりやすく、音を切るときの舌の動きが見えるようだ。曖昧になりがちな中低域のシンセと最低域のシンセベースのレイヤーも明快で、低音の音階もはっきり聴き取れる。ベースもキックドラムもよく制動し、特にキックの立ち上がりの速さに感心する。細部まで描き込また中低域の土台に、幻想的なSEがMAVERICKらしい空間表現で被さってくると、聴いていて非常に心地いい。
今回、長期間実際に使用してのMAVERICK IIの印象をレポートしてみたい。また、本機の共同開発および音質チューニングを担当した、輸入元のミックスウェーブの宮永賢一氏に聞いた開発エピソードも合わせて紹介したいと思う。
■BA+ダイナミックの低域構成を継承した第二世代ハイブリッド機
MAVERICK IIは5ドライバーを搭載したハイブリッド型IEMである。ドライバー構成は、低域:ダイナックドライバー×1+BAドライバー×1、中域:BAドライバー×1、高域:BAドライバー×2。従来の構成を継承しているわけだが、この低域をBA+ダイナミックという構成こそ、MAVERICKという名のアイデンティティと言える。
初代MAVERICKからの主な変更点は、フェイスプレートのベント(空気孔)が従来の1ポートから2ポートへと増やしたこと、音導管を従来の樹脂製チューブからプラチナ塗装の合金チューブへと変更したことだ。いずれも同社の先行する最新世代イヤホンで実現された仕様が、本機にも採用されたかたち。詳細は後述するが、ドライバー構成は踏襲しつつも、ダイナミックドライバーと中域のBAドライバーも変更された。
本機もミックスウェーブが共同開発・音質チューニングを行っているモデルであり、新たな設計と音質チューニングが行われている。またユニバーサルモデルが先に発売されたが、他モデルと同様、カスタムモデルでは改めて専用チューニングが行われていることも付け加えておく。
■音の抜けの良さ、全帯域にわたるクリアネスが大きく進化した
その音なのだが、一聴してわかる従来モデルからの大きな進化に驚かされた。まず音の抜け、そして全帯域にわたるクリアネスが、「数段上」と表現してよいレベルで向上した。また、低域の解像感向上が著しく、ベースやキックドラムの立ち上がりのスピードが増した。従来のMAVERICKに不満を感じていなくても、聴き比べればちがいは明らかで、月並みな言い方をすればベールを1枚、いや2枚剥いだような明瞭さを備えている。
一方で、楽器の響きが立体的かつ自然に広がること、楽器の音色再現や低域の質感表現に優れていることなど、本機をMAVERICKたらしめる特徴も継承されている。
まずはAstell&KernのDAP「A&Ultima SP1000」と組み合わせて、改めてその音をチェックする。リファレンスとして必ず用いるBonnie “Prince” Billy「Normadic Revery(All Around)」(44.1kHz/16bit・CDリッピング)は、最小限のバンド編成によるギターロックだが、それだけに音の空白や余韻の再現が重要になる。また、陰鬱なヴァースと鬼気迫るコーラスの対比は、弱音の再現や抑揚を判断するのにうってつけだ。
冒頭のキックドラムは、MAVERICK IIの方が鋭くタイトだ。聴き比べてみるとMAVERICKではやや曖昧なアタックの輪郭も、MAVERICK IIでは実に明瞭。そこに被さっていくギターやシンバルなど、中高域の音も開放的に抜ける。この抜けの良さが大きく向上しており、聴き比べると従来機がこもっているように聴こえてしまうほどだ。各楽器のセパレーションも素晴らしく、音のレイヤーが余さず見える。
ボーカルは従来機よりも前に出てきて、生々しさがより伝わる。聴きどころであり音質チェックのポイントとなるサビは、1人のボーカルが声色を使い分けてコーラスを多重録音していて、聴く環境でその印象がかなり変わる。MAVERICK IIはひとつひとつの声色のちがいを描き分けてくれ、それらの前後関係もよくわかる。抜けがいいから、力強い印象の一方で音がよくほぐれている。
七尾旅人×やけのはらの「Rollin’ Rollin'」では、ボーカルの再現力と低域再現度(特に解像感)を確認。MAVERICK IIでは、冒頭の七尾旅人の歌声が少し鼻にかかったニュアンスがわかりやすく、音を切るときの舌の動きが見えるようだ。曖昧になりがちな中低域のシンセと最低域のシンセベースのレイヤーも明快で、低音の音階もはっきり聴き取れる。ベースもキックドラムもよく制動し、特にキックの立ち上がりの速さに感心する。細部まで描き込また中低域の土台に、幻想的なSEがMAVERICKらしい空間表現で被さってくると、聴いていて非常に心地いい。