同社のミドル/エントリークラス機
FOCAL「Aria/Chorusシリーズ」レビュー。エレガントな外観に最新技術を内包したスピーカー
■「Aria 906」は抜けの良い爽快な低域を再生。「Aria 926」はより音楽の安定度が向上
「Aria 906」のサウンドは、軽やかなレスポンスと爽快感に満ちていて、まさに新素材振動板の良さが十二分に引き立てられている。とにかく低域の反応が素早く、付帯感が無いことに驚かされる。
重低域への沈み込みは若干控えめでありつつ実に上手く設計されていて、バスドラムやベース楽器の反応が闊達で、立ち上がりや余韻に軽やかさを伴った、レスポンスの良いものとなっている。鳴りが良い、抜けが良いという言葉がピッタリの低域再生だ。バスレフ型特有の音濁りが驚くほど抑えられており、爽快なのだ。
ヴォーカル表現は実に滑らか。落ち着きがありつつも生き生きとした、明るい表情が実現されている。ピアノの質感もしっとりと丁寧に歌い上げながら、グランドピアノの体躯を立体的に描写する。コンサートホールの残響も、余韻の消え際までを明解に再現している。金属振動板の固有音を意識させず、ピアノの高域弦やシンバルアタックも適切な上品さを備えており、クリアな音色なのに、まるで耳をくすぐられるような快感さえある。
加えて、特に魅力的なのは弦楽器の響きだ。明るさと瑞々しさがありながらも、まるで音の色香がふわりと漂ってくるようなサウンドを楽しめる。実際の演奏で聴けるような、ヴァイオリン本来の音の軽さが表現されている。繊細なバロックバイオリンの音色も筋張った印象が皆無で、楽器の木質感やガット弦の柔らかみが美しく再現される。音の色艶とリアリティーが実に上手くバランスしたサウンドだ。
フロアスタンディング・タイプの「Aria 926」では、よりスケールの大きな表現を楽しむことができる。オーケストラ・ソースを再生する時など、その効果が絶大だ。ホールのサイズを適切なスケールで再現すると共に、ティンパニのボトムやグランカッサ、あるいは通奏低音のボディなどにふくよかな低域の量感が得られる。ピアノトリオでもウッドベースの厚みが充実し、音楽の安定度が大幅に高まる。
ヴォーカル表現においても、わずかに太さを増し、肉声の旨味が濃度を増す。重要なポイントは、いずれの場合でもこのスピーカーの持ち味である低域レスポンスの良さや躍動感が損なわれないことだ。スケールやボトムの充実度が大幅に向上しつつも、Ariaの魅力である爽快感や開放感が維持されるのである。そこに、このスピーカー最大の魅力がある。
■4世代にわたりバージョンアップしてきたロングセラーシリーズ「Chorus 700」
ChorusシリーズはFOCALのエントリークラスにあたるスピーカーで、これまで4世代にわたってバージョンアップを重ねてきたロングセラーシリーズでもある。Ariaと同様、アルミとマグネシウム合金による逆ドーム型トゥイーターを搭載する。
ミッドウーファー及びウーファーにはポリグラス・コーンを採用。セルロース製パルプコーンに微粒子の溶融ガラスを塗布した振動板で、紙のダンピング特性とガラスの剛性を両立し、ポリプロピレンの10倍の剛性を持つという。この振動板が、Chorusシリーズの中域精細度の鍵を握る存在だ。