同社のミドル/エントリークラス機
FOCAL「Aria/Chorusシリーズ」レビュー。エレガントな外観に最新技術を内包したスピーカー
それらのユニットは、重厚なフレームでしっかりとエンクロージャーにマウントされている。金属製プレートにマウントされたトゥイーターと相まって、静かな力強さを感じさせるフォルムになっている。スピーカー側面はバッフル面から奥行き方向に向かって斜めにシェイプされ、流麗かつシャープな印象を湛えている。
ブックシェルフ型「Chorus 706」の専用スタンド「Chorus S700 stand」は、比較的軽量な木製タイプで、スピーカーの響きにほのかな柔らか味を添えてくれる。一方でさらにパワフルかつ明瞭なサウンドを引き出したいという場合には、金属製のより重厚なスタンドを導入しても良いだろう。
■明るく明瞭な中高域再生で、元気の良いパワフルなサウンド
音色は微かに暖色系だが、中高域にFOCALスピーカーに通底する明るさを持ち、それが独自の世界観を形成している。同時にAriaシリーズにはない元気の良さ、パワフルさもある。この部分はある意味で、Ariaの上品さとトレードオフの部分とも言える。
まず中高域の色合いだが、ヴォーカルでは口元の質感表現を、クラシックであればホールトーンのカラーなどを明瞭にピックアップする。イメージ的には、ヒスノイズの帯域と言って良い。よって前者であればブレス、後者であればホールの余韻など、細やかな質感を浮かび上がらせる。ピアノの音色は、中低域の弦が適度な厚みを帯びつつ、高域弦は明るい表情を描く。楽器の持つ響きがよく分かりつつ、明朗さに満ちた音を楽しませてくれるのだ。
一方の“パワフルさ”という部分では、シンバルやヴォーカルのエッジに、ザクリとした切り込みのアタックがある。ライドシンバルの刻みにしっかりとしたエネルギーを持ち、タムタムやスネアドラムもヒットされた瞬間のアタックが明瞭。しかしながら基本的な音色自体はナチュラルなバランスに仕上げられている。
低域の再生限界自体は、こちらもあまり深くまでは欲張らない。だが、抜けの良さが特徴的だったAriaに対してより重量感があり、余韻も長い印象がある。エレクトリックベースの帯域に特に豊かな重心を持っている。響き自体は豊かなのだが、バスレフポートの共振周波数を無理に下げすぎていないのか、または同時に内部吸音処理が入念なのか、それが緩んだり滲んだりしないのはさすがの品質である。
「Chorus 726」では、低域側のスピーカーユニット数が増える分、ベース帯域の充実度が高まる。それに伴って、ヴォーカルのボトムやピアノの低弦の厚みも安定化する。音色は若干暖色傾向が強みを増すものの、音の密度が高まって音楽再生の濃度が増す。より充足度の高い聴き心地となるのだ。スケール感の向上などは、Ariaシリーズの時と同傾向の変化が得られる。
上質な音色と軽やかなレスポンスで品の良さやエスプリも楽しませるAriaシリーズ、元気よくパワフルな音色でFOCALのエッセンスを味わえるChorusシリーズと、それぞれシリーズならではの魅力を存分に楽しむことができた。両者ともに、ジャンルを選ばないバランスの良さを備えている。
その上で、ポップスやロックなどのソースを中心に楽しむならChorusシリーズを選んでも良いし、それらに加え繊細なアコースティックソースもさらに表情良く楽しみたい場合はAriaシリーズをチョイスしても良いだろう。特にフラックスコーンを搭載するAriaシリーズのサウンドバランスは、他では決して味わえない爽快感に満ち溢れているので、ぜひ一度お試し頂きたい。
(生形三郎)