[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第217回】行き着いた先の、さらに先へ! 「秋のヘッドフォン祭2018」 超個人的ベスト5
【第2位】“マルチ&ハイブリッド”が再び熱い!
主役級アイテムであるイヤホン本体に目を向けると、「なんかもう行き着くところまで行き着いちゃったかな……」感がなくもなかった、マルチドライバー&ハイブリッドドライバーの世界。だがここに来て、「行き着いた先の、そのさらに先へ!」を感じさせるような製品が登場し始めてきている印象を受けた。
大手の製品としては、5BA/5wayという各ドライバーのつなぎが極めて難しそうな構成を、様々な工夫と自社ドライバーだからこそのトータルチューニングで見事に完成させたSony「IER-M9」の存在感はやはり一際目立つ。こちらについては開発者インタビューが掲載されているのでぜひ参照を(インタビュー記事はこちら→「関係者が語る“ソニー史上最高傑作のステージモニター”「IER-M9/M7」誕生の背景。その音質を野村ケンジがチェック!」)。
FitEarの静電型ツイーター+BAハイブリッド機「FitEar EST」も、ユニバーサル版に続いてカスタム版も登場しており、こちらも要注目だ。なお「ESTカスタム版の試聴機はESTユニバーサル」とのことなので、ユニバーサル版のレビュー記事を参照してみてほしい(レビュー記事はこちら→「噂の静電型トゥイーター搭載イヤホン! 「FitEar EST Universal」発売直前レビュー」)。
そして他にも注目すべきというかせざるを得ないマルチ/ハイブリッドイヤホンが多数!いくつかピックアップしていこう。
まず、くみたてLab「KL-Focus」。低域側から2BA/2BA/1BAという構成のマルチBAカスタムだ。
こちらには低域切替機能「シーンコントロールシステム」搭載仕様のモデルも用意されており、目立つトピックはそこになる。…のだが、実際に聴くと素の音の優秀さの方が印象的だ。
細管や音響抵抗、超高密度フィルターなどを組み合わせたアコースティック・ローパスフィルターで、低音のピークをかなり低いところまで追い込んであるとのこと。そのおかげかベースはタイトでスピーディ、それでいてゴリッとくる芯の強さも備える。そして中高域への余計な干渉がなく、全体に見晴らしが良い。
また高域ドライバーの音導管には、途中から径が拡大する拡張形状を採用とのこと。これも音の抜けや広がりの良さに貢献しているものと思われる。
ハイブリッドの注目製品としては2モデルをピックアップ。一つめはCampfire Audio「SOLARIS」。ドライバー構成は低域側から10mmD/1BA/2BA。BAドライバーからの音は音導管を使用しない「T.A.E.C」構造によって耳に届けられる。
ドライバー構成や技術要素からは「同社がこれまでにマルチBAモデル、ハイブリッドモデルそれぞれで培ってきた技術やノウハウを合流させた、これまでの集大成かな?」といった印象も受ける。
音の方は、同社の最近のモデル、例えばダイナミック型ハイエンドの「ATLAS」やヘッドホンの「CASCADE」と比べると、少し落ち着いたように感じられる。といってもATLAS/CASCADEがかなりアグレッシブな音作りだったので、それと比べて落ち着いたというのは、決して地味なわけではない。「このブランドらしさは生かしつつ、より多くの方に受け入れられやすいサウンドに落ち着いた」というべきだろう。
そしてもう一つ。新規ではないのだが、今年春のヘッドフォン祭に参考出展されていて今回もまだ参考出展のままなこちら、MEZE Audio「RAI Penta」。
4BA+1ダイナミック構成で「PENTA DRIVER HYBRID」技術を搭載!内部にメタルサウンドチューブ機構を用いることで音質を向上!……そう!つまり、春の時点から特に新しい情報はない。しかし!これとにかくサウンドもフィットも素晴らしいので早よ!発売早よ!
ハイブリッドでは注目出展がもう一つあったのだが、それは後述する。
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