バイアンプ駆動の検証も
2chじゃダメなんですか? マランツ「NR1609」で5.1.2chと2chの映画再生をガチ比較
まずはフロント×2、センター、リアスピーカー×2、トップ×2、サブウーファー×1の5.1.2ch環境という、NR1609で実現可能なフル構成で再生してみる。
再生コンテンツは、定番のドルビーアトモス・デモディスク。『Leaf』は、ジャングルの中をカメラが移動し、何種類もの鳥の鳴き声や木の葉の飛び散る音が入っているのだが、5.1.2ch環境で作り上げられるその空間性にはただただ圧倒される。本当に森の中に入ったような全方位から聴こえる環境音、そして驚かされるのはスピーカーとスピーカーの間に聴感上のつなぎ目がなく、木の葉がヒラヒラと360度を移動すること。最新のサラウンド再生が実現するのは、現実世界と違わぬような圧倒的な臨場感だ。
余談だが、マトリクス処理を行っていた以前のアナログサラウンド時代は、リアチャンネルの再生周波数に制限があり、フロントスピーカーとのセパレーションにも制限があった。それに対し現在のデジタルサラウンドは、各チャンネルがディスクリート化され、しかも圧縮ロスのないロスレスサラウンドにより情報量も大幅に向上した。かつてはサラウンドを楽しまれた方も、最新のサラウンドを一度聞いて欲しい、一発で打ちのめされてしまうはずだ。
・2.0.0ch(フロントのみ)
それではフロント2chのみではどうだろう。改めてLeafを再生する。先ほどのように全方位から出る音は楽しめないものの、1つ1つの音が微小レベルまで明瞭に聴こえる。サウンドステージも、目の前の映像と違和感なくリンクする。現在のスピーカーは、音の広がりやサウンドステージの表現力が大きく向上している。NR1609のアンプ能力も高く、豊かな臨場感で楽しむことができる。
結果として、何本もスピーカーを揃える予算があれば、質の良いスピーカーを2本揃えるといった選択肢もあるのでは、と感じるほどの音が出せた。
・5.0.2ch(サブウーファーレス)
それではサブウーファーの有無ではどこまで変わるのだろうか? 現在のサラウンド環境においてサブウーファーの重要度は上がっていると言われている。サラウンド音声の中にはLEFという、独立したより低い低域成分が含まれており(例えばドルビーTreu HDなどでは120Hz以下がそれにあたる)、フロント/リア/トップスピーカーで補いきれない低域成分を、サブウーファーに割り当てることができるからだ。このような理論的にサブウーファー有利な状況において、はたしてサブウーファーは必須アイテムになるのだろうか。
試聴トラックを、雷鳴と雨の映像で構成される『Amaze』に切り替えて、サブウーファーあり/なしを比較する。まずはフル構成「5.1.2」でサブウーファーあり試聴したが、ダリのサブウーファー「SUB E9F」の威力は大きく、雷鳴の音がドスンと腹にくるほか、低域のリアリティが高く印象が良い。次にサブウーファーを外した「5.0.2」再生を試みる。こちらは結構違う。スケール感は大きく変わり、先ほど感じた地鳴りのような迫力ある音からは1歩後退した印象だ。
ただし、試聴したソースが、サブウーファーの存在に強く頼る性格を持っていたこと、また現在のスピーカーはある程度小型でも低域再生能力が高く、通常の映画鑑賞では十分なクオリティで再生できるはずだ。たしかにサブウーファーを足した時の迫力は捨てがたいものがあるが、これは専用の試聴室でかなり大きな音量で聴いた印象であり、一般家庭のリビングなどでは、サブウーファーの性能は発揮しづらいとも言える。結論としては、あればなお良いが、無理に入れる必要はないだろうとも感じた。
・4.0.2ch(センターレス)
最後の検証は、センタースピーカーの有無による影響だ。