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【特別企画】aptX HD対応のBluetooth機能も内蔵

PCスピーカーを再定義、クリプトン「KS-55」レビュー。9万円台が「むしろ安い」理由とは?

公開日 2018/11/27 06:15 土方久明
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Mac用再生プレーヤーソフト「AudirvanaPlus」をインストールしたMacbookProから、レニー・クラヴィッツ『ライズ・ヴァイブレーション』(44.1kHz/24bit FLAC)トラック2の「Low」を再生した。本タイトルは筆者がポップス/ロックのリファレンスとしているソースで、冒頭のキックドラムやボーカル/コーラスの質感表現で音の良し悪しがすぐわかる。

試聴は土方氏宅、および音元出版試聴室にて行った                               

音を出した瞬間にまず驚かされるのは、スピーカーのサイズを感じさせないレンジの広さだ。思わずスピーカーの方へ身を乗り出すと、質感豊かな高解像度サウンドが眼前に広がる。さらに低域の再生能力にも感心させられる。曲冒頭のキックドラムは量感も伴ったスピードを備えていて、グルーブを克明に描く。小型スピーカーが低音を豊かにしようとすると重低音を不自然に強調したものになりがちだが、KS-55の低音はキックの音色やアタックの質感まで再現する。もちろん大型スピーカーとまったく同様とはいかないが、バランスを維持しつつ縮尺しているのが好印象だ。この低域の質感の描き分けができることは、ぜひオーディオファイルなら耳を傾けてほしいポイントだ。

この低音を語る上で興味深いのは、KS-55がバスレフ型を採用していることだ。渡邉氏は密閉型スピーカーの設計で知られており、KXシリーズも全て密閉型。密閉型においては低音の量を稼ぐのは難しいが、より自然な低域再現が可能だとされている。しかし、KSシリーズはいずれもバスレフ型を採用している。渡邉氏によれば、KSシリーズのようなサイズまで小型化を行った場合、低域の量や理想とする質感を得るためにはバスレフ型の設計が必須なのだという。

「KS-55」はサイズを超えた再現力を備えていると土方氏は語る

KS-55においては、KS-9Multiと同じ長さを持つフォールデッドダクトを搭載したチューンドバスレフ方式を採用。これにより、小型キャビネットのスピーカーが根本的に抱える低域再生能力の弱点をクリアしているのだ。

MacBook Proとのデザインマッチングも非常に素晴らしかったので、試しにiMacの横に設置してみた。専用に設計されたような美しいデザインの調和に思わずニヤリとしてしまう。iMacともUSB接続を行い、女性ジャズボーカルものとしてキャンディス・スプリングス「インディゴ」を聴いた。2本のスピーカーの間に奥行き深いサウンドステージが現れ、そのセンターにはボーカルの音像がリアルに浮かび上がる。伸びやかかつ艶のある肉声は、温度感も生々しい。ニアフィールドで聴く分、ボーカルとの距離も近いだけに、この生々しさにはどきりとさせられる瞬間がある。この感覚はヘッドホンの頭内定位では味わえない。

iMacのようなデスクトップタイプのパソコンとのマッチングも良い


ワイヤレス再生でハイレゾの魅力を味わえる

現在のオーディオシーンにおいて、ヘッドホンであれスピーカーであれワイヤレス再生はもはや欠かせないものとなっている。しかし、我々ハイエンドオーディオファイルの多くが、「ワイヤレス=音が悪い」というイメージを依然引きずっているのも事実。次に試すのはBluetoothによるワイヤレス再生だが、KS-55の場合はどうだろうか。

送り出し側のソース機器に、aptX HDコーデックにも対応するハイレゾ・スマートフォン、ONKYO「GRANBEAT DP-CMX1」を用意して、Bluetoothによるワイヤレス再生を行った。本機はBluetooth受信用のロッドアンテナが独立して装着されていることもあってか、Bluetoothの受信感度が良くペアリング動作からスムーズに行えた。

オーディオファイルに人気のダイアナ・クラールが、男性ボーカルの巨匠トニー・ベネットとディエットした最新アルバム『Love Is Here To Stay』(96kHz/24bit FLAC)をaptX HDで再生した。一聴してBluetoothとは思えないほど、質感表現に優れていることに感心する。二人のボーカルの掛け合いにリアリティがあり、ベースの質感も良い。また、優れたサウンドステージ再現はここでも発揮された。内部定在波を改善し、不要共振を徹底的に抑えるオールアルミ製エンクロージャーの採用は、ここでも大きく音質に寄与していると言える。

次ページマルチメディアスピーカーとしての発展性にも注目したい

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