【特別企画】Space Tuneで部屋に合わせてチューニング
“いい音”とライフスタイルの調和を完璧に体現。テクニクスの一体型スピーカー「SC-C50」レビュー
そもそもステレオ再生は、左chと右chで異なる信号を再生することで成り立つ。前回の記事で紹介した通り、SC-C50はステレオスピーカーの間にセンタースピーカーを備え、そこから両chをミックスした信号を再生する。これに加えてラウンド形状のボディにスピーカーユニットを角度をつけて配置することで、前方180度にわたって均一に音が届く。そのため、前方のどの場所からでも全ての音域の音が均等に聞こえ、かつ豊かに広がる。
ウーファー/トゥイーターを同軸上に配置した効果も絶大で、どの位置から聴いても音の像がぼやけない。これは合計7つのスピーカーユニットから発せられる音のタイミングが正しく揃っていなければ不可能なことだ。
こうした音の広がりは、生活空間での日常的なリスニングを考えると重要だ。なぜなら、日常生活で特定のリスニングポイントにとどまっていることはまずない。SC-C50は現代の音楽の楽しみ方を踏まえた設計が行われたというが、まさにその意図が存分に発揮されている。
今回はハイレゾ音源を中心に音質チェックをしたが、もちろん音楽ストリーミングの圧縮音源でもこうした再生能力は発揮される。クラシックからジャズ、ロックからエレクトロニックまで不得意なジャンルがない点も、音楽ストリーミングで膨大な音楽をボーダレスに聴くことができる現代のスタイルにマッチする。
こうしたサウンドを可能にするのが、スピーカーユニット開発から筐体設計、ロスや歪みを排除する信号経路設計、Space Tuneなどの細やかな配慮の積み重ねだ。一体型スピーカーの多くは、サイズやコストの制約もあり、デジタル領域から音色や広がり感を力業でまとめ上げている印象を受けるものも少なくない。それらは総じて、音楽的に違和感のあるサウンドとなってしまう。
SC-C50は、技術の積み重ねの数々と妥協のない設計により自然で良質なサウンドを手に入れた。開発陣へのインタビューから試聴を経て実感したが、スピーカーユニットの開発から緻密なDSP処理まで、一体型スピーカーでここまで手をかけた製品は、少なくとも筆者は見たことがない。これぞまさにテクニクスという完成度の高さと言える。
■アプリで直感的に操作可能。本体からのシンプルな操作にも対応する
リモコンの役割もはたす専用アプリ「Technics Audio Center」を使って、本体の操作性もチェックした。本アプリはDLNA再生や音楽ストリーミングの選曲や再生操作はもちろん、Space Tuneや各種の音質調整、設定まで行える。
起動すると、ホワイトを基調とした洗練されたグラフィックが目を引く。視認性がよく、レスポンスも素早い。NASからの音源再生やインターネットラジオなどで一通り再生を確認したが、いずれもスムーズな操作が行える。リモコンがないことを不安に思う方もいるかもしれないが、アプリの完成度が高いので、スマートフォンからストレスなく操作を完結できる。
その一方で、「お気に入り(FAV)」機能を備えており、好みのソースや楽曲を登録しておけば本体のボタンから一発で呼び出すことができるのが便利だ。電源や音量など必要最低限の機能もボタンで直接操作でき、シンプルなふだん使いにも対応してくれる。
本体手前の底部には照明が埋め込まれているが、オン/オフや輝度の調整はアプリから操作できる。その調整時に緩やかに光の強さがフェードしながら切り替わるところなど、本体やアプリの画面同様に完成度の高いデザインとなっていることにも、Technicsらしい美意識を感じさせられる。
■Space Tuneが設置環境に合わせてサウンドを最適化してくれる
本機を使いこなす上で欠かせないSpace Tune機能も試した。本機は低域の再生能力が高いだけに、その調整は良い音を楽しむ上で肝となる。
スピーカー再生で我々が聴いている音は、スピーカーから直接届く音に加えて、スピーカーの周囲の床や壁、天井などで反射した音も多く含んでいる。特にスピーカーの接地する面や背面など(例えばスピーカーを置いた台や床、背面の壁)、近距離からの音の反射は、特定の帯域の音のみが何倍ものエネルギーとなって反射増幅されてしまい、音楽本来のバランスから大きくかけ離れた音になってしまう。こうした反射の影響をコントロールして最適な音質を届けてくれるのが、Space Tune機能だ。