【特別企画】Space Tuneで部屋に合わせてチューニング
“いい音”とライフスタイルの調和を完璧に体現。テクニクスの一体型スピーカー「SC-C50」レビュー
まず、Space Tuneをオフの状態で壁際の机の上に本機を設置して聴くと、低域再生は力強いのだが、低音域が幾分モコモコとする。ベース楽器の音程が少し不明瞭で、楽器自体の音色が実際よりも膨らんで聴こえてしまうのだ。これはまさに、本機のすぐ後ろの壁や、接地面などとの間で低い音だけが強まる現象である。
この状態から、まずはプリセットの「Wall」を選択してやる。すると、より低音域の量感が引き締められ、楽器の音へのフォーカスがより鋭くなった。さらに本体の内蔵マイクで部屋の響きを調節する「Auto」で自動調整を実施すると、低音域だけでなく、それより高い音域も調整がなされ、よりフォーカスの合ったナチュラルな質感を得られるようになった。
続いて、iPhoneの内蔵マイクを使った「Measured」も試したが、こちらは音楽ソースの明瞭度がいっそう研ぎ澄まされる印象だ。リスニングポイントで測定する分、そのポイント1点での補正効果が高まるようで、様々な場所で聴く環境では「Auto」の方が適切な場合もあるかもしれない。本機の実力を最大限に引き出すためにも「Measured」もぜひ試しておきたい。いずれにせよ、補正が加わっていることを感じさせるような不自然な感触は一切及ぼさないところが素晴らしい。まさに、松下電器の音響研究所の時代から研究されているという門外不出の技術が光っている。
また、音質面での使いこなしとして有用と感じたのが「ボイスモード」だ。その名の通り声の音域、すなわち中域の明瞭度や存在感を一段階高めることができる機能だ。
オンにすると、ヴォーカルの存在感がぐっと高まり、歌詞やメロディが自然に前に出てくる。主旋律を奏でる楽器も同じく存在感を増すので、歌がないインストゥルメンタルでも重宝する。どの場所にいても積極的に音楽が耳に届いてくるイメージなのだが、効果も自然であり、リスニングの位置が固定されていない場合などはむしろ常時オンにしておいてもいいほどだ。
総じてSC-C50は、居住スペースの広い範囲でカジュアルに良い音を楽しみたいユーザーにとって、最高の選択肢になる一体型スピーカーだ。今回紹介した機能に加えて、スマートスピーカー連携やマルチルーム再生まで行うことができ、まさに現代の音楽リスニングを隅々までサポートする。その上で、高級オーディオブランドとしてのTechnicsの思想を妥協なく受け継いでおり、それは本機の鳴らす美しい音楽性にも表れている。
SC-C50は、スマートフォンが生活の中心にある現代のライフスタイルへ完璧にマッチングする、上質なサウンドと利便性を両立した先駆的な一体型スピーカーなのである。
(生形三郎)
特別企画 協力:パナソニック