PCモニターのHDR規格を体験
高画質モニターの目印! 「DisplayHDR」対応のLG液晶モニター、何がどうすごいか徹底検証
映像ソースには、手軽に4K HDRのストリーミング映像が楽しめるChromecast Ultra(HDMI 接続)を用意。またゲーミング用途を想定し、日本AMDより最上位グラフィックボード「Radeon VII」を搭載したPC(Display Port 1.4接続)をお借りした。LGは、映像の滑らかさを向上させるAMDの技術「RADEON FreeSyncテクノロジー」に対応した製品を日本でもいち早く発売するなど、AMDの製品とは非常に相性がよい。
まず、LGのPCモニターのHDR対応度に驚く。Chromecast Ultraで再生する4K HDRのNetflixオリジナルコンテンツ『オルタード・カーボン』は、3モデルともしっかり4K解像度とHDRならではのダイナミックな映像美を堪能できる。もし大型のモニターよりも、30型前後の比較的小画面が好みなら、もうテレビは買わずに、この組み合わせで充分と思える水準だ。
なにより、ユニフォーミティーの高さは並みのテレビ製品以上の印象で好感が持てる。映像モードはシネマ系も備え、ハードウェアキャリブレーションが行えることを考えると、もう「テレビ以上」と言っても過言ではない。
もちろん、3モデルを比較すると違いも明らかに存在する。27UL550-Wは暗室で見ると黒が浮き気味で青味も感じ、暗部の色は薄く洗い流されてしまう。その点、DisplayHDR 400認証の27UL850-Wは、明らかにパネルのコントラスト性能が高く、暗室でも引き締まった黒、豊かな階調と色純度が得られ、さらにピークの伸びによるダイナミックな映像表現が楽しめる。
DisplayHDR 600の32UL950-Wにいたっては、さらにDCI-P3カバー率98%の広色域が活き、特に暗部付近での深い赤色表現は、深紅の描き分けが豊かでリッチな映像美を魅せる。3モデルの中では唯一32UL950-Wだけに採用された、Nano IPSパネルの効果も発揮されているのだろう。最大ピーク輝度の高さは、明るい部屋でも力強い映像を見せ、瞳の輝きといった極小部分の光もキラリと感じられる点で27UL850-Wと大きく異なる。
■PCゲームでもHDRを確認。もうSDRに後戻りするのは難しい
近年、ゲームの分野でもHDRへの対応が進んでいる。HDR 10に基づいたグラフィック設定のあるゲームタイトルがすでに発売されているほか、今回使用したAMDのRadeonグラフィックボードも「FreeSync 2 HDR」という技術でHDRコンテンツを正式にサポートし、低遅延で滑らかに表示することをうたうなど、ハード/ソフト両面で準備が整いつつある段階だ。
そこで、HDRのグラフィック設定が用意されているエレクトロニック・アーツ『Battlefield V』でPCゲームの映像を確認した。Radeon VIIの高い映像処理能力を活かし、ゲーム内の画質設定は「最高」に。1人プレイモード「プロローグ」で画質を比較する。
SDR表示設定では暗部の黒潰れ、明部の白飛びが盛大だが、3モデルとも、HDR表示すると影部分の階調が現れて見通しが良くなり、明部は飽和が少なくなって情報量の多いリッチな画が得られる。例えば太陽が真上から視野に入り、逆光で影のできる構図では、ゲーム内のキャラクターが見えるか見えないかの違いにも大きく影響する。この見やすさは、画質にこだわらない場合でもゲームを進める上で決定的な差となりうる。
一度HDRを体験すれば、もうSDRに戻ることはできないだろう。27UL550-Wに比べると、27UL850-Wはより明るく力強い画で、CGが実写映像に見えるほどリアルに。さらに32UL950-Wでは、輝度の高さと色域の広さにより、火炎がより明るくかつ色乗りも増してリアルに映るのが印象的だ。
4K解像度でレンダリングされる、テクスチャまでも超高精細で滑らかな動きのCG映像は、高画質映画以上に心に沁みる。今考え得る映像体験の中で、最高峰のひとつと言っても過言ではないだろう。
「DisplayHDR」は、“高品位なHDR映像体験を約束してくれる目印” として広く認知されるのは間違いないだろう。
今回ご紹介したLGエレクトロニクスの2製品は、DisplayHDRの条件を満たしつつ、さらに独自技術で高画質を目指したハイクオリティーモデル。特に32UL950-Wの広色域性能はHDR映像が持つ大きなカラーボリューム(暗部から明部まで広色域)を再現するのに適し、画質にこだわる映像マニアにもお勧めだ。
暗室や一般的な照明環境なら27UL850-W、より色純度を味わい、明るい部屋でもパワフルな映像を楽しみたいなら32UL950-Wという選択をお勧めしたい。
(鴻池 賢三)