[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第237回】
悪魔将軍級の輝きと硬度!チタン筐体&ダイヤモンド振動板イヤホン「TFZ No.3 Ti」レビュー
■様々な強要素を兼ね備える将軍サウンド!
それではサウンドをチェック!試聴のタッグパートナーには、悪魔超人サンシャイン的なフォルムと重量感、そして絶対的なパワーを土台とした音質を備えるAstell&Kern「KANN CUBE」を起用!
早速聴いてみy……これは……現代ハイエンドイヤホンとしての基準値というか、「このレベルの音になったらもうあとは良し悪しではなく好みの問題でしかないよね」となるしきい値を軽くクリアしている!より高額なモデルと比べても「自分はこっちの方が好み」と感じる方がいても全然おかしくない!
ではその「好みの問題」としてはどんな感じなのかというと、ズバリ、
「現代的なサウンドの曲を現代的なクリアネス&シャープネスで聴きたい人に超おすすめ!」
だ。端的に言えば、この輝かしいルックス、そしてチタン&ダイヤモンドという素材感からイメージされるであろう、その期待通りのサウンドと想像してもらってOK!
それはもう、最初に悠木碧さんの声だけを重ねて制作されている楽曲「レゼトワール」を聴いた時点で「これは!?」と思わされたレベル。人の声だけなのに、あるいは人の声だけだからこそか、このイヤホンが声や空間の透明感を際立たせることがはっきりとわかった。
声のほんのわずかな機微も、その声の数々をサラウンド的手法で立体的に折り重ねた空間表現も、素晴らしく明瞭。息遣いまでシュッと描き出すシャープさでありつつ、声の嫌な刺さりは感じさせないという、絶妙な音作りテクニックも心憎い。声の抜けや音離れといったスピード感も優秀だ。
楽曲との組み合わせでは、星野源さん「Pop Virus」との相性の良さが特に印象的だった。ギター弾き語りとMPCによるエレクトリックなビートサウンドでの序盤では、そのS/N感、少ない音数の背景に広がる静寂の表現が実に見事。現代的なクリアさ、かつ現代的な生々しさを兼ね備えている。そしてシンバル系の音色の薄刃のキレ!まさに地獄のメリー・ゴーラウンドのダイヤモンドの刃の如し!
その他、エレクトリックギターのパキッと艶やかな硬質さ、ベースやバスドラムの低音を横にボワンと膨らませず下にグッと沈み込ませる強靭な制動、その低重心から静かに湧き上がるような力強さ。何もかもこの曲のサウンドにフィットする。KANNの駆動力あってこそという部分もあるが、駆動力をぶち込めばそれに応えてくれるのがこのイヤホンというわけだ。
ロービット感のある荒いサンプリングサウンドのザクっとザラッとした感触は、丸めることなく、その質感を遠慮なくしっかり届けてくれる。そのあたりは容赦なく、残虐とも言える。だがその感触もこの手のサウンドの要点。そこをただ耳心地よく丸めてしまったりしないというのも、このイヤホンの美点と言える。
つまり総じてまとめると、
「力はサンシャイン。テクニックはザ・ニンジャ。スピードはプラネットマン!!残虐性はジャンクマン。ボディの強じんさはスニゲーター」
的なサウンドだ。何言ってるか分からないという方は「言葉の意味は分からんがとにかくすごいヤバさだ!」とでも感じておいてほしい。