オーディオの常識を覆すフレンチブランド
「DEVIALETを最も多く売った店」で聴く、その魅力。川又利明氏(ダイナミックオーディオ)×山之内 正対談
■シンプルパッケージだからこそのメリット
しかし、いまから10年前ともなれば、やはり「ハイエンド=セパレートシステム」という考え方がいま以上に大きかったように記憶している。しかし川又氏は「ここまでのコンパクトな製品だからこそ」の優位性をこう話す。
川又: 「セパレートであるがゆえに、ハイエンドメーカーでも信号を伝送する時、電圧ではなくて電流伝送で、という場合があります。つまり、ケーブルが長くても大丈夫、ケーブルの音に依存しないという方法を、努力して開発しているんです。結果的に言えば、セパレートだったから電流伝送をしなければいけなかった、という宿命があるわけです。
逆に考えれば、デビアレのようにこれだけ非常に回路が短縮化され、これだけコンパクトにまとまっていれば、電流伝送で点と点をつなぐということは必要がなくなります。以前聞いた話ですけど、デビアレのアンプの場合は出力端子からパワーデバイスまでの距離が1インチくらいしかないそうです。一般的なパワーアンプは箱を開けてみると、内部配点が伸びているますが、そういうことを考えてみてもやはり画期的だと思います」
ただし、ただいたずらに一体型の筐体にしたところで、そこには必ず相互干渉によるノイズなどざまざまな問題がつきまとう。デビアレがこの問題をどのように解決しているのかということについては明かされていないが、デビアレのアイデアとテクノロジーが一体型筐体によるショートシグナルパスやS/Nの向上などさまざまなメリットを実現した。
川又: 「聴感上のノイズフロアというのは、 “楽音の余韻” なのか “オーディオ装置が持っているノイズなのか” を誰が判断するのか、ということですよね。例えば、お客様によくお話させていただくのですが、音楽録音でもピアノを弾いている時のペダルの音、床の音がズッシーンと響く音、ピアノの椅子をずらしたらキシキシと軋む音、爪が伸びたピアノストが弾く時のキーにカシカシと当たる音。これは本来、ハンマーが弦を叩くことで鳴るピアノの音ではないんですよ。
でもそれをマイクが拾って録音に入っていると、オーディオマニアは一生懸命すごい情報量だと思うわけです。それは録音というパッケージに入れているプロデューサーや録音エンジニアのセンスであり、アーティストの意思かもしれません。ということは、音楽そのものはノイズなのか楽音なのか、という区別、差別には定義がないので、みんな自分の解釈になるわけです。
ただし、無信号の状態と音の成分がひとつでもある状態というと、そこにはすごい差があるんです。だからその音の最後の一粒が消えるまでの瞬間がなくなってしまうと、音場ができない、空間が出ない、楽音にゆとりがない、潤いがないということになってしまいます。それがデビアレにはないんです」。