光学・回転系プレーヤーの新しい地平を感じる
【AEx2020「金賞」「特別大賞」受賞】エソテリックの2大巨頭がここに降臨―Grandioso P1X/Grandioso D1X/Grandioso K1X
審査委員が語るGrandioso P1X+D1XとK1Xの魅力
ともにワイドバンド&ストレート。世界最高の水準の音質と音調(藤岡 誠 ※審査委員長)
今回、金賞を受賞したGrandioso K1Xは、先行発売されたセパレート方式のGrandioso P1X+Grandioso D1Xを極めて合理的に一体化したモデルである。内蔵するドライブメカニズムはVRDS-ATLAS(アトラス)と称する世界に類のない剛性と精度を持ったタイプで、後述する電源独立筐体方式のCD/SACDトランスポートGrandioso P1Xのそれと同一である。その重量は、ベースを含めて何と13.5sだという。もちろんエソテリックのオリジナルメカだ。
このVRDS-ATLASメカニズムとともに注目すべきは、完全自社設計のディスクリートDAコンバーターだ。モノブロックDAコンバーターのGrandioso D1Xのそれほどは凝っていないが、逆に言えば、とても洗練されて進化した構成になっている。価格は2,800,000円(税別)。決して安価ではないが、予算的にもスペース的にもGrandioso P1X+Grandioso D1Xのコンビネーションには手が出ない方が購入しても、決して欲求不満に陥ることのない十分に高度な能力・性能と音質・音調を持っている。
特別大賞を受賞したGrandioso P1X+Grandioso D1Xは、世界最高峰のセパレート方式デジタルプレーヤーで世界中のオーディオファイルの垂涎の的となっている。ちなみに “Grandioso” は「壮大に」「堂々とした」という意味の音楽用語である。組み合わせ価格は7,000,000円(税抜)と高価だから、おいそれと購入することはできないが、もしも導入できるなら、オーディオ人生がとても幸せになれるはず。
なお、Grandioso P1Xは電源部独立筐体のSACD/CDトランスポートで、ドライブメカニズムは前述のVRDS-ATLAS。まさに惚れ惚れとするメカニズムで世界中どこを調べてもまったく比類がないエソテリックのオリジナルだ。Grandioso D1XはモノブロックのDAコンバーターだからステレオ用に2台が必要。左右ch合計で4台を組み合わせるから、セッティングスペースがたっぷりと必要なので、導入するにはそれなりの覚悟が必要だ。もちろん完全自社製の「Master Sound Discrete DAC」と呼ばれる凄い内容のディスクリートDACの搭載にも注目するといい。これらの詳細は同社のHPなどを参考にしてもらいたい。
音質はGrandioso K1X、GrandiosoP1X+GrandiosoD1Xともにワイドバンド&ストレートで世界最高の水準。音質・音調については固有のキャラクターを発せず、微小レベル時のDA変換精度やSN比も極めて良好だから音場空間の再現性やハーモニックスがとても美しい。
■SACDを別次元で、ビビッドに再現。マインドを掻き立てられるプレーヤー(角田郁雄)
世界的に視野を広げてみても、SACDデジタル・プレイバックシステムにおいて、Grandioso P1X/D1Xほど、規模の大きなモデルはないであろう。VRDSドライブメカは、登場して以来、年を重ねるごとに静かに進化を遂げてきたが、最新のVRDS ATLASを手にし、細部を見ると、その精密な製作に驚きを隠せなくなってしまう。もはや測定データでは表すことができないのではないだろうか。しかし人の聴感にはその音の良さや違いが確認できる。まさに極地に辿り着いた思いがする。
そして、エンジニアが構想を温めてきたMaster Sound Discrete DACの実現。私は、このDAC基盤を手にし、心に熱いものを感じとった。アルゴリズムを投入したFPGAとプレシジョン・レジスター・アレイ。まさに精密感を際立たせ、オーディオマインドが掻き立てられる思いもした。また、トランスポートとDACを支える電源部。まったく手ぬかりがなく、高品位。さらにGrandioso K1Xは、これら技術を凝縮した驚愕のプレーヤー。その内部も整然とし、美しい。
両モデルは、コレクションしたSACDを別次元で、ビビッドに再現する。
■エソテリックが目指す理想の音。その追求姿勢がさらに一歩前進(山之内 正)
エソテリックのデジタルディスクプレーヤーは2019年に飛躍的なステップアップを遂げ、新世代への生まれ変わりを果たした。まずはセパレート型のGrandioso P1X/D1Xを先行して発売し、計4筐体の大規模なシステムでその到達点を明示。その半年後には同じGrandiosoに属する一体型のK1Xを導入し、新しいプラットフォームの革新性を強く印象付けた。
この2つの製品に共通するのはメカニズムとDACというディスクプレーヤーを構成する2大要素を新世代に置き換えたことである。メカニズムはVRDS-ATLASとして16年ぶりに新規導入し、重量化と低重心化を徹底。DACは独自のディスクリート構成を採用したMaster Sound Discrete DACを新たに開発し、エソテリックが目指す理想の音の追求姿勢をさらに一歩前進させた。
基盤となる技術は共通だが、スペースに余裕があり、コスト度外視の設計ができるセパレート型に対し、一体型ではDAC回路などを凝縮する難しさがあり、開発の難度の高さは方向が異なる。
■開発者から
■デジタルオーディオ本来の可能性を大きく感じています
Grandioso P1X/D1X、Grandioso K1Xは、エソテリックにとって大きな節目となる製品です。SACDプレーヤーを構成する大きな2つの要素である「メカユニット」と「DAコンバーター」を同時に刷新するというとても大きなチャレンジでした。
メカユニットは、長年使ってきたVRDS-NEOからATLASへとメカ構造を大きく変更するとともに、メインLSIの変更など電気回路も大きく変わっています。 DAコンバーターは、長年チップメーカーさんと積み上げてきたものではなく、全くのゼロからディスクリート構成でD/A変換の音質的理想を探求するという道を選択しました。 大きなプレッシャーの中、開発途中で聴こえてきた音楽からは、デジタルオーディオの本来の可能性と思える大きな力を感じ取ることができ、開発の方向性の正しさを確信できました。
2機種とも銘機賞をいただくことができ、長年目標としている「良い音ではなく、音楽そのものを再生できるオーディオ機器」に一歩近づけたとスタッフ一同自負しております。(エソテリック株式会社 取締役 開発・企画本部長 加藤哲也 氏)
<Specification>
【Grandioso P1X】
●再生可能ディスク:SACD、CD、CD-R、CD-RW●デジタル出力:ES-LINK×1、XLR ×2(Dual AES出力時は、2つの端子を使用するので1系統になる)、RCA×1●クロックシンク入力:BNC×1 ●入力インピーダンス:50Ω●入力可能周波数:10MHz(±10ppm)●入力レベル:サイン波 0.5〜1.0Vrms●消費電力:18W●サイズ(突起部含む): 本体部445W×162H×449Dmm、電源部445W×132H×452Dmm●質量:本体部29kg、電源部24kg●取り扱い:エソテリック(株
【Grandioso D1X】
<アナログ出力>●端子:XLR/ESL-A Lch,Rch 各1(モノラル)、RCA Lch,Rch 各1(モノラル)●出力インピーダンス:XLR 100Ω、RCA 47Ω●最大出力レベル(1kHz、PCMフルスケール信号入力、10kΩ負荷時): XLR 5.0Vrms、RCA 2.5Vrms●周波数特性(192kHz PCM信号入力時):5Hz〜75kHz(-3dB)●S/N:113dB●歪率(1kHz、D/Aコンバーター動作モードM3設定時):0.0007%<デジタル入力>●端子:ES-LINK×2、XLR×1、RCA×2、光デジタル×1、USB(USB2.0 準拠×1(B端子)●クロック入力:BNC Lch、Rch 各×1●消費電力:20W●サイズ(突起部含む):445W×132H×448Dmm●質量:Lch 23.1kg、Rch 23.0kg●取り扱い:エソテリック(株)
【Grandioso K1X】
●再生可能ディスク;SACD、CD(CD-R/CD-RW対応)●アナログ出力:XLR×1(L/R)、RCA×1(L/R)●出力インピーダンス:【XLR】40Ω【RCA】15Ω●最大出力レベル:【XLR】5Vrms【RCA】2.5Vrms●周波数特性:5〜75kHz(-3dB)●S/N比:113dB●歪率:0.0007%(1kHz)●デジタル出力:XLR×1、RCA×1●デジタル入力:COAXIAL×1、OPTICAL×1、USB-B(USB2.0準拠)×1●クロック入力:BNC×1●入力インピーダンス:【デジタル入力】75Ω【クロック入力】50Ω●クロック入力可能周波数(±10ppm):10MHz●クロック入力レベル:0.5〜1.0Vrms(サイン波)●電源:AC100V、50/60Hz●消費電力:30W●サイズ:445W×162H×447Dmm(突起部含む)●質量:35kg●取り扱い:エソテリック(株)
本記事は季刊・オーディオアクセサリーvol.175 Winterからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。