<山本敦のAV進化論 第184回>
“イマーシブサウンドスタジオ”でソニーの新世代立体音響技術「Sonic Surf VR」を体験してきた
■Dolby AtmosやDTS:Xのコンテンツ制作をサポート。360 RA対応も進む
ソニーPCLがクリエイションセンターに構えるイマーシブサウンドスタジオも見学することができた。元は5.1/6.1チャンネル対応のサウンドデザイン&マスタリングルームとして使われていた405スタジオを改修したばかりの真新しいスタジオだ。同社 技術部門の長谷川有里氏は、イベント上映用映像や体験型コンテンツなどに高解像なマルチスクリーンの映像コンテンツが増えてきたことに伴い、オーディオも三次元のリアルなイマーシブな体験が求められるようになってきたことが、長年温めてきたイマーシブサウンドスタジオの構想実現を後押ししたと振り返っている。
スタジオに常設されている主な機材のリストはプレスリリースにも公開されている。スピーカーレイアウトはLW/RW(ワイドチャンネル)を加えた9.1.4チャンネルで、SSVRのプリミックスやイベント会場での音の再生環境への対応を踏まえた構成だという。
こちらのスタジオではSSVRのほか、Dolby AtmosやDTS:Xに対応する立体音響コンテンツのミックス制作もサポートしている。なお、ドルビーラボラトリーズの独自技術であるDolby VisionとDolby Atmosの両コンテンツの制作に対応ができて、なおかつ配信用素材のマスタリングまで一手に手がけられるスタジオは現在日本に唯一ここしかない。
先日米ラスベガスで開催されたCES 2020で、ソニーがブースに展示した次世代自動運転車のコンセプトモデルにも搭載されて話題を呼んだ立体音響技術「360 Reality Audio」のコンテンツ制作にも対応できるよう、現在準備が進められているそうだ。制作に必要な専用のソフトウェアはすでに導入済みで、2020年初頭までに制作体制が整う予定となっている。
それぞれの立体音響システムの特性を熟知したうえで、顧客のニーズに合わせたコンテンツ制作から、ベストな体験が得られるスペースのトータルプロデュースまで、幅広いソリューションが提供できるソニーPCLの強みを今後もアピールしていきたいと長谷川氏が意気込みを語ってくれた。同社では今後も最先端の技術に応えられるツールを揃えながら、国内におけるコンテンツ制作のバックアップから、海外コンテンツのローカライズまで多様な3D音響体験の普及に尽力していくという。
(山本 敦)