外部クロックやD/Aコンバーター接続での拡張性も魅力
長く愛用できること間違いなし。トライオードの“CDプレーヤー集大成”「TRV-CD6SE」を聴く
■最上位仕様の技術を踏襲した注目のDACを搭載
次に搭載された技術についても説明しておこう。CD専用ディスク・ドライブはセンターに配置され、ここで読み取られた信号はデジタル処理部に伝送。MQA-CDの場合はMQAデコーダーで処理され、ハイレゾ化される仕組みである。内部技術については非公開であるが、デジタル処理部には高精度SRCとクロック同期回路を搭載していると推察される。
ここで処理された信号は、DACチップへ伝送される。注目なのは、DACチップにESSテクノロジーの最新32bit型であるSABRE「ES9038Q2M」を搭載していることである。このチップは、最上位「ES9038pro」の技術を踏襲していることが特徴。2ch出力で、ダイナミックレンジは129dB、全高調波歪み率は-120dBという性能値を誇っている。
内部構成についても詳細は非公開だが、従来品と同様に強力なジッター低減回路も装備していることであろう。そしてDACチップの後段にはローパス・フィルターが続くが、最終の出力段(バッファー)に半導体と真空管が使われ、アナログ出力される仕組みになっている。
■アップサンプリングでのDSDの音質が特に魅力
試聴では、リファレンスであるMQA-CD対応のSACDハイブリッド盤『クワイエット・ウィンター・ナイト』(KKC10009)と、通常CDでマイルス・デイヴィスの『ライブ・アラウンド・ザ・ワールド〜タイム・アフター・タイム』(WPCR-12750)、マリー=エリザベス・ヘッカーによる『エルガーのチェロ協奏曲』(ALPHA283)などを再生した。
まずはSRCオフで半導体出力の状態を聴いたが、色付けの少ないフレッシュかつフラットレスポンスの高解像度再生が体験できた。SRCを352.8kHzに設定すると、さらに解像度が高まり、倍音成分が増え、空間描写性が高まった。さらに5.6MHz DSDに設定すると、柔らかさや繊細さが加わりSACDのような質感になった。
次に真空管出力に切り替えた。SRCオフでも透明度の高い倍音が付加され、高密度な音質となったが、352.8kHzにすると、CDとは思えない中低域に厚みのあるピラミッド型バランスの音質となった。まさにハイレゾに迫る音なのである。さらに5.6MHz DSDにすると、艶っぽさが増し、よりいっそう濃密な音質となり、マイルスのトランペットやヘッカーのチェロの響きにスケール感や重厚さが加わった印象を受けた。
私としては5.6MHz DSDの音が好きだ。真空管の透明度の高い倍音が加わり、いちばんアナログに迫る音質となる。
■MQA-CDの再現力も高く、録音時の音を直接的に再現
次にMQA-CDを再生した。半導体出力での音は、まさに352.8kHz/24bitで録音した音がストレートに現れている印象を受けた。色付けが少ないだけにDACチップの特性もよく表していると言え、鮮明にステージのさまを描写するところが良い。
真空管出力では、アナログ・テープレコーダーの質感に迫り、レンジが広く濃厚な音を体験させてくれた。この音も実に魅力的である。
多くのCDや最新のMQA-CDをコレクションしている読者の方々は、本機でぜひ再生して欲しいと思うところである。それほどまでに機能も音質も魅力的なプレーヤーに仕上がっている。
ここまで角田氏による、TRV-CD6SEの機能やサウンドレビューをご覧いただいたが、文中にもある通り、拡張性の高さもまた、本機の魅力の一つである。続いて、同氏がお薦めする3ブランドのクロック・ジェネレーターをつないでみての聴き比べや、PS Audioの「Gain Cell DAC」を使い、本機をCDトランスポートとして使用した際の再現性を体験してみることにしよう。
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