[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第253回】
おうち時間のエンタメを充実! 1万円で買えるデスクトップスピーカー5選
■名門健在、ALESIS「ELEVATE3 MKII」!
続いては、プロオーディオ機器やリズムマシン系の名門ブランド・ALESISから登場の「ELEVATE3 MKII」(予想実売価格:税込9,980円前後)。
さてこのモデルと、一つ前のSAMSON MediaOne M30、並べて背面の様子を見ると端子やスイッチの配置がほぼ一致する。前面の電源スイッチ兼用ボリュームノブやヘッドホン端子も共通。そのため搭載機能やその使い勝手もほぼ共通で、アンプの出力値もスピーカー全体のサイズ感も同じく、だ。なのでそのあたりについては、MediaOne M30の項を参照していただければ本機にも通じてくる。
これについては様々な推測や解釈が可能だろう。例えばアンプの基板には共通のリファレンスデザインを採用している? とか。しかし何にせよ、エレクトリックな部分がほぼ共通だからこそ、両ブランドの音作りの違い、メカニカルやアコースティックな部分での違いがどう出てくるか興味深いところだ。
数値としても出ていてわかりやすいのはドライバーユニット。ウーファー口径はどちらも3インチだが、トゥイーターはMediaOne M30が3/4インチなのに対して、こちらは1インチ。約1.9cmと約2.5cmだ。ウーファーも見た目的に振動板の質感が異なっているため、口径は同じでも別物と言えそうだ。
またそのトゥイーターがマウントされている周囲の形状処理も両者で異なっている。トゥイーターからの音をどのように拡散させるべきかについての考え方や、その実現手法の違いが形になっているところだ。
これについて両社の本国サイトで確認してみると、SAMSONは「a custom waveguide that adds smooth highs with a wide sound stage(広い音場と滑らかな高音を生み出すウェーブガイド)」、ALESISは「Elliptical tweeter waveguide optimizes dispersion and stereo imaging(音の拡散とステレオイメージを最適化する楕円形のウェーブガイド)」との説明があり、やはりそれぞれに工夫されている模様。
また、キャビネットのエッジ、箱の角の部分の処理の仕方も異なる。そこの処理は、音質に悪影響を与える「音の回折」という現象を低減するための定番手法だ。
SAMSONのキャビネットは、箱の枠となる四辺の角を大きく落としてラウンド形状にしてある。対してALESISはフロントバッフルから天面や側面へのつながりの方を滑らかに処理。ウェーブガイドの設計との兼ね合いなどもあって、エッジ処理で重要になるポイントが異なるのかもしれない。
というように重なる部分はあっても詳しく見れば別物なので、実際のサウンドも異なってくる。端的に言うと、こちらの方がナチュラル傾向だ。
例えばMediaOne M30はスネアドラムのザシュッとしたバズを心地よい強さで立ててくるが、このELEVATE3 MKIIはそういった感触ではない。音のアタック感や濁点感を強調しすぎず耳当たりを整え、それでいて全体のくっきり感を弱めすぎることもなく、明るめの空間で見晴らしも上々。
Robert Glasper Experiment「Human」などは、MediaOne M30で聴くとクラブ系というかエレクトリックな印象が強まり、ELEVATE3 MKIIで聴くとソウル系というかメロウな印象が強まる。もちろんどちらがより優れているというわけではなく、各々の好み次第だ。