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inakustikの新ケーブル「MICRO AIRシリーズ」一斉試聴。独自構造を価格を抑えて実現、その音は?

公開日 2020/12/15 06:30 生形三郎
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同心円状に集合させられた素線の束の外側に、PEマイクロメッシュと呼ばれるメッシュチューブを被せることで空気層を確保。さらに、その素線の束を、コア材を中心に螺旋状に巻き付けてケーブルを形成することで、それぞれの導体同士の距離が確保され、空気絶縁構造を構築して比誘電率を抑えるのである。

独自の中空螺旋構造 “Air Helix structure” により比誘電率を徹底的に抑制する

その値は、ハイグレードなケーブルで重用される絶縁体 “テフロン” の比誘電率値である「2」よりもさらに低い「1.65」を達成。絶縁体に生じて信号伝送に悪影響を与えてしまう静電容量を抑えることに成功している。

コア材へと螺旋状に巻き付けられる導体は、同社が「マルチコア・アーキテクチャ」と呼ぶ、プラスとマイナスの導体が交互に並ぶ独自の配列を採ることで、導体の周りに発生するプラスとマイナスの磁界を利用して静電容量を相殺する。4本の導体線が束ねられた4ワイヤー・マルチケーブルのLS204は静電容量を60%まで低減、6本の導体線が束ねられた6ワイヤー・マルチケーブルのLS204XLでは、30%までの低減を達成している。

さらに、その導体束を形成する素線を、正確で規則正しい接点を形成する同心円構造で束ねることによって、信号の流れに調和をもたらして伝送速度の整合を確保し、見通しの良い空間情報や正確なインパルスを生み出しているという。

全機種インプレッション紹介。軽快で浮き立つようなサウンド、スピード感が特徴

・スピーカーケーブル
【LS-104 AIR】

エントリーモデルとなるLS-104 AIRは、2本の導体束で形成される、ラインナップの中で最もシンプルな構成のケーブルとなる。リファレンスのスピーカーケーブルからこちらに変更すると、軽快で、まるで音像が両スピーカー間に浮き立つかのような音の描かれ方となった。この描写傾向は、このMICRO AIRシリーズで共通する特徴だ。


ベース楽器やバスドラム、そして、ピアノの低域弦なども、とにかく発音の立ち上がりが素早く、演奏のタッチをスピーディーに描き出していく。よって、演奏が持つ勢いや力強さを、滞りなく軽快に表出するのである。

エントリーモデル「LS-104 AIR」

それもあって、高域方向は幾分明るめの音色で力感が強く、ヴォーカルなどはシャープな表情で歌い上げられる。リヴァーブやホールの残響も余韻の存在感が高く、空間情報を明瞭に展開させていく。

【LS-204 AIR】
ミドルクラスのLS-204 AIRは、導体束が4本に増えた4ワイヤー・マルチ構造だ。先ほどの、LS-104 AIRで感じた音像の浮遊感や素早いスピード感はそのままに、楽器の音色がほぐれた質感でこちらへと迫ってくる。

ミドルクラス「LS-204 AIR」

帯域バランスも安定度が増し、高域方向の力感の強さも幾分とほぐれて、中低域や低域の密度や存在感が高まる。同時に、描かれる音楽やその空間的なスケールがより大きくなり、なおかつ、描画の鮮明さが増す。

とりわけベース楽器は、より力強く磐石なボトムを得るが、そのフレーズは実に軽快で滑舌が良く、演奏の闊達さ流麗さを見事に表現する様が快い。ヴォーカルの歌声も、描き出される世界観自体は広さを増しながらも、音像のサイズがシュッとシェイプアップされ、鮮明な実在感を得る。オーケストラソースでも、ホールの響きである間接音が豊かに描かれながらも、ステージにひしめく奏者の様子を詳細に観察できる。

【LS-204 AIR XR】
トップエンドとなるLS-204AIR XRは、導体束がさらに増えて6本となり、シリーズ最大の6ワイヤー・マルチ構造を採っている。そのサウンドはさすがトップエンドモデル、先ほどのLS-104 AIRからLS-204 AIRへの向上感が、より一層の高まりを見せる。

トップエンドモデル「LS-204AIR XR」

全体的に描写がさらにほぐれて、楽器同士の距離感や重なり合いに窮屈さのない、実に自然で伸びやかな表情を見せる。低域方向の密度や重さも増して、どっしりと充実した音楽描写を聴かせる。

グランドピアノは、左手で掴む和音に十全な厚みがありながら、それでいてMICRO AIRシリーズに共通するスピーディーな描写も健在だ。ウッドベースは、低域の量感が豊かに再現されつつも、アタックは明瞭で余韻も濁らずスッと抜け、決して飽和感がない。バスドラムも同様のレスポンスで、口径の大きさもしっかり描かれている。

オーケストラも、特に低音楽器の骨格ががっしりと厚みを増し、倍音成分が豊富なチェンバロなども上滑りな音色にならない。全体的に音と音楽のリアリティが高まり、より臨場感に満ちた再生を楽しむことができる。

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