【特別企画】オーディオアクセサリー銘機賞2022グランプリ受賞
オヤイデの新世代電源ボックス「MTB-6II」と真紅の電源ケーブル「VONDITA-X」の魅力を検証
新たな音の方向性を提案する、新世代の電源ボックスと魅惑の電源ケーブル(Text by林 正儀)
■現代の録音や再生環境の進化に合わせたファインチューニング
今日に至る電源タップブームは、オヤイデが先鞭をつけたと言ってよい。オーディオ全盛時代の1985年に誕生したOCB-1シリーズから36年。その伝統を生かしつつ、新たなサウンドの方向性を提案する、新世代の電源ボックスと魅惑の電源ケーブルが登場した。
電源ボックスの定番、フラグシップの“MTBシリーズ”は、18年ぶりに新たなチューニングを得てバージョンIIへと刷新された。映えあるオーディオアクセサリー銘機賞2022でグランプリ受賞モデルとして紹介するのは、「MTB-6II」(6口仕様)だ。
外観では、クロームメッキ仕様から精悍なブラック塗装に変わったぐらいの変化に見えるが、2mm厚真鍮製筐体や4N銀の内部配線材、銀+ロジウムメッキのオリジナルコンセントなどの基本仕様を継承しつつ、現代の録音や再生環境の進化に合わせたファインチューニングが施されているのだ。その手法は、ハネナイトやPOM削り出しのワッシャーを要所に配して筐体の振動ピークを抑えたほか、プラチナ+パラジウムメッキ仕様の入力端子や、102 SSCアース配線材の新採用などだ。
一方「VONDITA-X」は、TUNAMIシリーズとは別の新機軸として、妖艶なる音色を求めて開発された。深い赤色のケーブルシースとコネクター(M1とF1の特別仕様)が実に印象的。導体は102 SSCの特殊撚り線で、シルク介在に二重螺旋構造のドレイン線などこだわり満載だ。
■「MTB-6II」は精彩で立体的な表現、「VONDITA-X」は潤いと旨みが格別
試聴すると、両モデルとも開発コンセプトを見事に体現している。「MTB-6II」は、表現の繊細さやソノリティが初代モデルから大きく改善。剛腕ともいえる力強さや押し出し感に加え、現代的でスピードが早く、精彩かつ立体的な見通しの良いサウンドへと進化を遂げた印象だ。またパワー全開の4口タイプとは音の嗜好が違い、使い分けるのもファン冥利。
一方の「VONDITA-X」は、ハイファイだがハイファイ過ぎないゆとりというか、音色の旨みがある。潤いや陰影表現に長け、官能を刺激してズキンとくるようなヴォーカル再生が格別だ。オヤイデ製品同士がナイスマッチなのは当然だが、他流試合もまた一興。新たな魅力を引き出せそうだ。ケーブルの切り売りタイプは自作派にもお薦めしたい。
オヤイデ「MTB-II」シリーズと「VONDITA-X」の魅力と味わい(Text by炭山アキラ)
■明らかに太く、厚く、熱くなり、あふれるようなパワーの低音が聴ける
オヤイデの“MTBシリーズ”電源ボックスは、18年以上の長きにわたってベストセラーを続けた怪物的存在感の製品だったが、このたびマークIIにモデルチェンジされた。見た目はグロスのクロームメッキからブラック塗装に変わったくらいにしか分からないが、そもそも極めて素性の良い製品だったから、2mm厚真鍮製の筐体や極太の純銀製内部配線などは前作から引き継ぎ、新たにたいへん繊細微妙なチューニング作業を経たのが新作と言ってよいだろう。
具体的には、ハネナイトやPOM削り出しのワッシャーを要所に配し、筐体の振動ピークを巧みにいなすことで最大の音質向上を狙ったり、インレット裏側のハンダ面積を増やして導通を改善したり、新たに架橋POを絶縁体に用いた102 SSC線をアースラインに用いたり、といったことである。
今回はこの4口タイプの「MTB-4II」と6口タイプの「MTB-6II」に、同社「VONDITA-X」の完成品電源ケーブルを組み合わせて聴いた。本誌試聴室のレファレンス電源ボックスを交換して音を聴き比べる。
本シリーズ、4口と6口で音が違うということで聴き比べてみたら、確かに違う。まず4口の「MTB-4II」から聴いたが、明らかに音が太く、厚く、熱くなっているのが分かる。あふれるようなパワーでモリモリと低音が出てくるのが楽しい。それでいて品位を保つのは大したものだ。6口の「MTB-6II」にすると、こちらの方が端正さではやや上回り、馬力感では4口が上をいく感じだ。欲しい口数とともに、音の好みでも選びたい一品である。