評論家・山之内正がチェック
ビクター新4Kプロジェクター「DLA-V50」レビュー。「4K・HDRコンテンツの長所をもらさず引き出す」注目機だ!
まずは『4K 夜景』と『プラネットアース2』でHDR映像の基本的な描写力をチェックする。前者では低輝度領域での素直な階調表現、後者では強い陽射しのなかでのコントラスト感など、HDRならではのダイナミックレンジの余裕がうかがえる映像を見せ、プロジェクター側の輝度の制約をほとんど意識させない。
3,000ルーメンというダントツの高輝度を誇るV90Rや2,500ルーメンのV80Rのような圧倒的パワー感にはもちろん及ばないとはいえ、今回用いた130インチのスクリーンでも十分な明るさを確保しており、自然映像の空気感や陽射しの眩しさなど、上級機に迫る臨場感を引き出している。
ネイティブコントラストは40,000:1で、V70Rと同等。光源が異なるのでダイナミックコントラストでは差がつくが、それでも400,000:1と十分な余裕がある。HDR10からFrame Adapt HDRに切り替えると高輝度領域の伸びがさらに改善し、説得力が大きく高まることも確認できた。
『マリアンヌ』のUHD BDはチャプター2〜3を視聴。自動車の光沢やシャンデリアの眩い煌めきなど、期待通りのリアリティを引き出すことができた。キャッチライトが周囲に埋もれず、また過剰に明るくなることがないので表情が不自然にならないし、闇に沈む街並みの描写にも違和感がない。窓から陽射しが入り込む室内シーンでは家具の質感や肌のテクスチャを素直に引き出し、ネイティブ4Kならではの素直なディテール描写に引き込まれる。
同じくUHD BDで『インターステラー』のチャプター9を再生。漆黒の宇宙空間と白く輝く宇宙船の対比が鮮やかに浮かび上がるが、この場面で注目すべきもう一つの要素は、微小な星々の明滅具合や明るさの違い、そして無数の星雲の微妙な色彩をどこまでリアルに再現しているかという点だ。
この作品はピークの明るさを無理に伸ばさず、暗部と中間輝度の領域での質感表現にこだわっている。製作者の意図がどこまで伝わるか、プロジェクター設計陣の力量が問われる場面が多いのだ。この場面以外にも氷で覆われた惑星の温度感など、V50の映像から伝わる空気感は期待以上の説得力がある。
BDのSDR映像はガーディナー指揮オペラ・コミック座の『カルメン』で確認した。タバコの煙が漂う舞台で、女工たちを演じる合唱メンバーひとりひとりの表情を克明に描き出し、アントナッチが演じる煙と汗にまみれたカルメンのリアルな描写に息を呑む。
「ナチュラル」モードはディテールと色調に誇張がなく、暗部のノイズのコントロールにも不自然な挙動は見られなかった。ステージのライヴ映像ではランプの明るさを「低」に抑えても十分な明るさがあり、静寂のなかで演奏に集中することができる。
V50が登場し、Victorブランドの高画質プロジェクターは計4機種のラインナップが完成した。80万円から275万円まで価格レンジは非常に広いが、各機種の位置付けは明確。前世代の製品群が登場した3年前に比べると選択肢は一気に広がり、目的と予算に応じた製品選びができるようになった。なかでもV50は4K・HDRコンテンツの長所をもらさず引き出す製品として注目に値する。