【特別企画】「AT-ART9X」2機種と比較試聴
オーディオテクニカ「AT-ART20」に驚嘆。このカートリッジからはアナログの限界を優に超えた音がする
「AT33」や「OC9」などと並んで、「ART(アート)シリーズ」はオーディオテクニカの中核となるMCカートリッジである。ARTはもちろん芸術や技術という意味だが、また“Audio-Technica Reference Transducer”のイニシャルでもあると言う。その時点での最良の技術を投入したという意義が、そこに込められているのだ。このことからもARTシリーズが、同社のトップモデルという位置付けであることがわかる。
そんなARTシリーズより新たに発売されるMCカートリッジ「AT-ART20」は、一昨年2020年に発売された姉妹モデル「AT-ART9XI」と「AT-ART9XA」の成功を受け、鉄芯型である「XI」の高出力とダイナミズムに加え、空芯型カートリッジ「XA」の持つ低歪みな透明感をも取り込み、両者を高次元で融合させたモデルへと仕上がった。「Excellenceシリーズ」のAT-ART1000は別格として、本機がスタンダードなラインナップにおける新たなフラグシップモデルだと言えよう。
本稿ではAT-ART9Xシリーズの2モデルとの比較視聴を交えつつ、さらなる高みを目指したオーディオテクニカの注目機の実力に迫りたい。
■鉄芯型をベースに使用部材、構造の見直しで音質強化を図る
構造の基本は鉄芯型で、AT-ART9XIを踏襲したものと言っていい。発電コイルはPCOCC。これをV字ではなくハの字つまり逆V字型に配置している。インピーダンスは変わらず12Ω。ここまではAT-ART9XIと同様である。またコイルを囲うようにカバーしているモールド部もそのままとなっている。
各部部材を見てみよう。マグネットはネオジム、ヨークはパーメンジュールを使用。フロントヨーク部は、先程比較したAT-ART9XIから変更が加えられており、フロント側のヨークを0.6mm厚くしている。磁気回路自体の構造は同じものとなっているが、AT-ART20ではこれによって磁束密度を強化し出力電圧を15%高めている。
もうひとつカンチレバーに埋め込んだスタイラスチップを固定するための補強板は、ステンレスからAT-ART1000と同じくチタンに変更された。軽量化によって高域特性の改善を図ったものということである。
カンチレバーはソリッドボロン、スタイラスは特殊ラインコンタクト針。またカンチレバーは根元近くでステンレス・パイプを二重に被せて段階的に太くするステップドパイプ構造を採用し、剛性を高め不要振動を排除する仕組みとなっている。
ボディにも新しい構造を採用した。ベースは従来どおりのアルミとしながら、ハウジングはチタン製、さらにアンダカバーはエラストマーといういずれも初の組み合わせである。また出力ピンは金メッキの厚みをこれまでの30倍という極厚にすることで、接触抵抗の低減と音質強化を図っている。
そしてそのデザインにも触れておきたい。これまでのシリーズでは比較的直線で切り取ったようなかっきりとしたラインが多かったように思うが、今回は全体を流線形のような曲線で包んで有機的な雰囲気さえ漂わせる。視覚からも新世代の息吹が感じられるようだ。
そんなARTシリーズより新たに発売されるMCカートリッジ「AT-ART20」は、一昨年2020年に発売された姉妹モデル「AT-ART9XI」と「AT-ART9XA」の成功を受け、鉄芯型である「XI」の高出力とダイナミズムに加え、空芯型カートリッジ「XA」の持つ低歪みな透明感をも取り込み、両者を高次元で融合させたモデルへと仕上がった。「Excellenceシリーズ」のAT-ART1000は別格として、本機がスタンダードなラインナップにおける新たなフラグシップモデルだと言えよう。
本稿ではAT-ART9Xシリーズの2モデルとの比較視聴を交えつつ、さらなる高みを目指したオーディオテクニカの注目機の実力に迫りたい。
■鉄芯型をベースに使用部材、構造の見直しで音質強化を図る
構造の基本は鉄芯型で、AT-ART9XIを踏襲したものと言っていい。発電コイルはPCOCC。これをV字ではなくハの字つまり逆V字型に配置している。インピーダンスは変わらず12Ω。ここまではAT-ART9XIと同様である。またコイルを囲うようにカバーしているモールド部もそのままとなっている。
各部部材を見てみよう。マグネットはネオジム、ヨークはパーメンジュールを使用。フロントヨーク部は、先程比較したAT-ART9XIから変更が加えられており、フロント側のヨークを0.6mm厚くしている。磁気回路自体の構造は同じものとなっているが、AT-ART20ではこれによって磁束密度を強化し出力電圧を15%高めている。
もうひとつカンチレバーに埋め込んだスタイラスチップを固定するための補強板は、ステンレスからAT-ART1000と同じくチタンに変更された。軽量化によって高域特性の改善を図ったものということである。
カンチレバーはソリッドボロン、スタイラスは特殊ラインコンタクト針。またカンチレバーは根元近くでステンレス・パイプを二重に被せて段階的に太くするステップドパイプ構造を採用し、剛性を高め不要振動を排除する仕組みとなっている。
ボディにも新しい構造を採用した。ベースは従来どおりのアルミとしながら、ハウジングはチタン製、さらにアンダカバーはエラストマーといういずれも初の組み合わせである。また出力ピンは金メッキの厚みをこれまでの30倍という極厚にすることで、接触抵抗の低減と音質強化を図っている。
そしてそのデザインにも触れておきたい。これまでのシリーズでは比較的直線で切り取ったようなかっきりとしたラインが多かったように思うが、今回は全体を流線形のような曲線で包んで有機的な雰囲気さえ漂わせる。視覚からも新世代の息吹が感じられるようだ。
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