PR評論家・高橋敦がレビュー
B&Wのヘッドホンが「著しく進化」。注目機「Px7 S2」実力チェック!
であるがその前に、実際に本機を試聴する機会に向けての注意点をひとつ。アングルド・ドライブユニットとの兼ね合いかもしれないが、このヘッドホンは装着ポジションが音に与える影響がかなり大きい。正しい位置からずれるとボーカルの厚みや超低域の響き、空間表現などなど、多くの要素が大きく損なわれる。試聴開始時には音を聴きながら正しいポジションを入念に探ってみてほしい。
そのベストポジションを見つければ、そこで発揮される本機のポテンシャルは見事なものだ。空間を広げながらもひとつひとつの音には密度感があり、ザクッと適度に粗い手触り感を描きつつ耳心地のよい柔軟性も伝えてくるなど、両立が難しい要素もしっかり両立させて届けてくれるオールマイティっぷり。
その上で中でも際立って素晴らしいのは空間表現。そこは初代PX7からの進化点としても特に著しい。
例えばRobert Glasper Experiment「Human」のようなクラブ系のサウンドを初代PX7で聴くと、まさにクラブで体感するそれのように密室感強めのサウンド。対してS2で聴くと、野外フェス的に開放的な響きとまで言うと大袈裟だが、クラブにしても会場、いわゆるハコが大きく広くなった感覚がある。空間表現における密閉型ヘッドホン感をより薄れさせてくれる。これこそアングルド・ドライブユニットの角度アップの効果!というなら、開発陣がその実現に力を傾けたことにも納得だ。
もちろん純粋に空間表現だけを求めるなら、そもそも開放型とすればもっと容易にそれを得られるだろう。しかし音漏れの少ない密閉型 & 騒音に強いノイズキャンセルというプラットフォームだからこそ、この空間表現を外に持ち出せる。その価値は大きい。
その空間表現の余裕とも合わさって、音抜けの良さも持ち味だ。ギター・カッティングの弾けるような抜け感は当然、ベースやドラムスなど低音楽器の抜けも好感触。低音の響きも音場の底にたまることなく音場の上にスッと抜けてくれて、全体の空気感がモタッとした感じになってしまうこともない。それが聴きやすさ、聴き疲れにくさにもつながっていることも、リスニングヘッドホンとしての優秀さと言える。
期待を裏切ることのない仕上がり。長く愛用できそう
最後にUSB-DAC接続についてだが、音質面での優位はやはり感じられる。しかしaptX Adaptiveと比べて圧倒的に上かというと、そこまで決定的な差ではない。普段は快適性重視のワイヤレス使用で問題ないだろう。
ただ、遅延が命取りになるゲーム時やバッテリー残量が気になる長時間使用時などには有線接続が活躍する。付属ケーブルは手の届く場所に置いておくと便利そうだ。
B&Wの「S2」ということで期待を持ってチェックしたが、さすがその期待を裏切ることのない仕上がり。よりソフトなイヤーパッド&ヘッドパッドで装着感も向上しているなど、隙のないアップデートだ。手頃な価格とは言えないが、この完成度であればきっと長く愛用でき、投資も十分に回収できることだろう。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)