HOME > レビュー > “至高のレコード再生”に迫るLINN「SELEKT LP12」2モデルを聴く。奏者の姿をイメージさせるリアリスティックな描写が展開

【特別企画】デジタル/アナログハイブリッドフォノEQ「URIKA II」のポイントも解説

“至高のレコード再生”に迫るLINN「SELEKT LP12」2モデルを聴く。奏者の姿をイメージさせるリアリスティックな描写が展開

公開日 2022/12/13 06:35 生形三郎
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

SELEKTシリーズのLP12をチェック! サブシャーシ「KORE」が鍵



前回の記事では、LINNの代名詞とも言えるレコードプレーヤー「LP12」のスタンダードグレードとなるMAJIKシリーズの一斉試聴記事をお届けしたが、今回は、中核クラスとなるSELEKTシリーズの試聴レビューをお届けする。

LINNの第1弾モデルにして、40年以上のロングセラーを誇るアナログプレーヤー「LP12」。モジュール式でパーツを自由に組み合わせてシステム構成ができることが、時代を超えて愛され続けるひとつの理由にもなっている。写真は「SELEKT LP12」(1,952,500円/税込・電源部LINGOもセット)でブラック仕上げ

まず、LP12というレコードプレーヤーは、先の記事でも述べた通り、モジュール方式を採用することでプレーヤーの各要素を自由自在にカスタマイズ可能な点が、そもそもの魅力であり特徴である。それらの各要素があらかじめパッケージングされているのがMAJIKやSELEKT、KLIMAXなどのシリーズになる。

今回は、SELEKTシリーズのパッケージの中から、「SELEKT LP12」と「SELEKT LP12 SE」の2モデルを集中的に試聴することにする。中核クラスとなるこのSELEKTシリーズでは、各モジュールがMAJIKよりもワンランク上のパーツによって構成されている。


核となるのは、サブシャーシに採用される「KORE」の存在だ。LINNが、レコードプレーヤーでの高音質実現においてサブシャーシの剛性確保を極めて重要視することは前回の記事で述べたが、1.5mm厚アルミ単板の折り曲げ加工のサブシャーシの上にMDF製のアームボードを載せていたMAJIKサブシャーシに対して、「KORE」では、同様のアルミ製サブシャーシに、重量バランスと響きの最適化を考慮したアルミ削り出しのアームボードを特殊グルーで接着及び一体化した構造となっており、最上位のKEELに迫る強度を実現したものとなっている。

SEKELTシリーズの重要な鍵となるサブシャーシ「KORE」。アルミ削り出しで、アームボードを航空機用のグルーで接着している

トーンアームには、同社の準フラグシップであった「AKITO」の後継となる「ARKO」が搭載されている。超々ジュラルミンを冷間引抜加工によって仕上げたパイプに、航空機グレードの特殊グルーを用いて高精度にヘッドシェルを取り付けるシンプルな構成を採るほか、大型化したジンバルを搭載してメカニカルな歪みを抑えるなど、LINNが理想とするシンプルな設計が追求されている。表面仕上げは、LINNお得意のパウダーコーティングから、蒸気を吹きつけて仕上げるベイパー・ブラステッド仕上げに変更され、上品な美しさを持った、視覚的にも滑らかな質感が実現されている。

トーンアームは最新の「ARKO」を搭載

細かい部分としては、ヘッドシェルのカートリッジ取付部の溝が広げられ、LINN製を中心とする軽量カートリッジの取り付けを主眼としていた従来モデルから、より広範なカートリッジの取り付けに対応した点も、様々なカートリッジを使ってレコード再生を楽しみたいユーザーにとって嬉しい仕様だろう。

新登場したMCカートリッジ「KENDO」は、フラグシップの「EKSTATIK」のコストダウンモデルとして登場したもの。KENDOというネーミングは、「剣道」に由来しており、EKSTATIKの持ち味を忠実に再現する存在といった意味合いが込められているのだという。

最新のMCカートリッジ「KENDO」(左)とフラグシップモデルとなる「EKSTATIK」(右)。「KENDO」は日本の剣道から名がとられており、上位モデルの基本理念を受け継ぎながら、最新のパフォーマンスを生み出すべく開発されている

その思想のごとく、ボディはEKSTATIKと同じくA7075超々ジュラルミンで形成。違いとしては、ハニカム形状がなくなったことや、針先形状がラインコンタクトになっている点のみとなっている。 また、ヘッドシェルに固定するためのネジを受けるインサートの部分に、適度な柔らかさを持つアルミと銅の合金を使用することで、固有の響きが出ることを抑えるとともに、シェルとの接地面を増大させてより強固な固定が追求されている。

SELEKT LP12 SEからは独自のデジタルドメインフォノ技術「URIKA II」を搭載



そして、今回試聴する「SELEKT LP12」と「SELEKT LP12 SE」の2モデルの大きな違いとして、SEには、同社の独自技術である、EXAKT出力等のデジタル出力を持つアナログ/デジタル・ハイブリッド方式のフォノイコライザーアンプ回路「URIKA II」を搭載することが挙げられる。

「SELEKT LP12」の底板「Trampolin」(左)と、「SELEKT LP12 SE」に搭載される底板と一体型のMCフォノイコライザー「URIKA II」(右)。「URIKA II」はデジタルドメインでRIAAを補正し、出力はEXAKT LINKまたは光デジタルのみとなる

URIKA IIは、本体ベースボードの裏に設置されるAD回路によって、微弱な音声信号を、アナログ領域でのゲイン調整とローパスフィルター回路を経てカートリッジ直近ですぐにデジタル信号へと変換して、デジタル領域で低域側の増幅やランブルフィルター処理(超低域カット)を行なうものである。デジタル領域内では、アナログ段における左右偏差を補正する処理も含まれており、これによって、より正確なイコライジングやゲイン管理を実現することが特長である。

アナログ領域では、使用するカートリッジに併せたインピーダンス及びゲイン、キャパシタンスの最適化も実現されている。なお、SELEKT LP12 SEでは、URIKA IIの搭載に伴って電源部もRADIKAL仕様となり、ターンテーブルの駆動も上位パッケージ「KLIMAX」に搭載のDCモーター仕様となる。

LP12の専用DCモーター「RADIKAL-AK」。「URIKA II」とモーターへの給電の双方を担う

次ページSELEKTシリーズの主力ラインナップ2機種を掘り下げる

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク