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【特別企画】デジタル/アナログハイブリッドフォノEQ「URIKA II」のポイントも解説

“至高のレコード再生”に迫るLINN「SELEKT LP12」2モデルを聴く。奏者の姿をイメージさせるリアリスティックな描写が展開

公開日 2022/12/13 06:35 生形三郎
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SELEKT LP12から試聴。奏者の姿をイメージさせるリアリスティックな描画が展開



試聴は、まずは「SELEKT LP12」から実施。プリメインアンプとして「SEKELT DSM-KA」を使用し、フォノステージもSEKELT DSMの内蔵フォノイコライザーアンプを使用した。

「SELEKT LP12」を試聴する際のフォノイコライザーには「SEKELT DSM」の内蔵フォノイコを使用。スピーカーはB&Wの「803 D4」

グレン・グールドの『ゴルトベルク変奏曲』(1981年録音盤)に針を落とすと、剛性感の高いしっかりとしたピアノの姿が、静けさの中から清潔かつ鮮烈な音像でもって描き出された。高音弦は心地の良い硬質感があるとともに、ピアノの屋根に反射してこちらに音が届き、その奥に奏者の指、そして、奏者の姿があるとイメージさせる、非常にリアリスティックな描画が展開されるのだ。

左手の低音弦の響きには微塵の濁りもなく、鍵盤を押している間にダンパーから弦が開放されている様子や、強弱やスタッカートなど打鍵の力加減が非常に明快に伝わってくる様に清潔感が溢れている。MAJIKの試聴の際も実感したが、当然SELEKTでもピアノ音源のレコード再生で露呈しがちなピッチの揺らぎ感も一切ない。曖昧さや緩さがないサウンドを堪能させてくれるのだ。

SELEKT DSM-KAのKONFIG(設定画面)からは、組み合わせて使用するカートリッジを設定でき、ベストなセッティングで再生することができる。LINNのカートリッジ以外にも、代表的なモデルはプリセットされている

ショルティ&シカゴ交響楽団による『ブラームス:交響曲 第1番』第1楽章は、オーケストラの雄大な姿が出現。弦楽セクションが一糸乱れずにギュッと力強く弓を弾く様や、ティンパニが強打される際の鋭いアタックの立ち上がりやミュートされてピタリと止まる音の動きに、本機全体で築き上げられる忠実かつ明解なピックアップ性能を感じ取ることができる。また、空間に澄んだ音色で響き渡るフルートの胸のすくような輝かしい明朗さや、演奏会場を満たすホルンの豊かな間接音の響きに魅了されてしまう。

一転して、ダイレクトカッティングによる八木隆幸トリオ『CONGO BLUE』でも、全体的に立体感に富む描写が展開。ドラムソロでは、マルチマイクで録音されそれぞれの定位に配置された太鼓やシンバルが各所から飛び咲くように炸裂して、その勢いの激しさを十全に表現している。音色的には、カートリッジの持ち味か、ハイハットの音色に幾分輝かしさが感じられ、それがこれまで感じた音色の鮮烈感や立体的な空気感などを清潔感豊かに引き出しているのではと推察した。

ここで、プリメインアンプとして使用していたSELEKT DSMに搭載のスペースオプティマイゼーション機能を有効にしたが、低域方向が整えられた恩恵によるものか全体のバランスが良好化し落ち着いた表現になった。低域方向のフレージングが明瞭になってよりベースが前に出てくるようになるとともに、高域方向にもさらなる明瞭感が引き出された。

SELEKT LP12 SEでは、立体感がさらに増し微細な表情が引き出される



続いて、「SELEKT LP12 SE」を試聴する。先述のように、SEでは、ベースやアーム、カートリッジなどは共通だが、電源がLINGOからRADIKAL-AK仕様になり、それに合わせてモーターもDCモーターとなる。フォノステージもURIKA IIとなるため、カートリッジに合わせたフォノステージの最適化等が実装されている。

それもあってか、音が出た瞬間から、その現れ方が大きく異なった。よりいっそう歪み感が抑えられ、全帯域において音のディテールが詳細になり、立体感が増している。音の輪郭はさらに明瞭で、より微細な表情までもが引き出されているのに、音は実に軽やかに立ち上がってくるのだ。

URIKA IIのテクノロジーによって、カートリッジに合わせたフォノステージの最適化も行える

『ゴルトベルク変奏曲』では、ピアノの音色にしっとりとした上質感が伴い、タッチの強弱がよりはっきりと明快に出ている。細かいトリルの動きも詳細で、楽器の音が演奏空間に響く余韻までもが細やかに描き出される。オーケストラでも、やはり弦楽器にしっとりとした質感があり、それもあってか全体的にゆったりとした雰囲気を醸し出している。

音色表現的にはよりニュートラルでストレートな印象で、奥行き表現も巧みだ。ピアノトリオは、シンバルの音像が軽やかに上方へと立ち上り、各楽器の定位がより立体的になっている。音の質感も上質になり、演奏の疾走感も幾分落ち着いたものとなるようだ。総じて余韻の透明感が素晴らしく、ピアノも楽器のグレードが上がったのかのようなリッチな味わいを楽しませてくれた。



以上のように、SELEKT LP12パッケージは、LINNが追求するレコード再生のさらなる高みを味わわせてくれる存在であった。KOREやARKO、KENDOをはじめとする高品位パーツによって描き出される、明瞭かつ軽快でグレードの高い音楽再生が魅力的だ。

とりわけ、カートリッジの直近でAD変換をするとともに、偏差を徹底排除したイコライジングや増幅、そして、使用カートリッジへのインピーダンス最適化などを実施できるURIKA II搭載のSELEKT LP12 SEでは、同社が理想とする至高のレコード再生を堪能できるのである。

(提供:リンジャパン)

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