【特別企画】多様化する現代のリスニングシーンに応える
SACDからネットワークまでマルチに楽しめる。多機能プレーヤーの金字塔・マランツ「SACD 30n」を自宅で検証
マランツの「SACD 30n」は、2021年のオーディオ銘機賞にて特別大賞、翌2022年にはベストセラー賞に輝いた大ヒットSACDプレーヤーである。SACD再生からネットワーク再生まで、マルチに楽しめる本機ならではの魅力を、オーディオ評論家の生形三郎氏が自宅リスニングルームで改めて徹底検証した。
SACD 30nは、同社の新たなコンセプト「Modern Musical Luxury」と同時に発表された、新デザインを纏った第一号機として誕生したモデルだ。セットとなるプリメインアンプのMODEL 30と同時に発売された本機は、多様化する現代のリスニングシーンにおけるユーザーニーズへと十全に応えるべく、SACD再生をはじめ、マランツ史上最高音質を実現したとするネットワーク再生機能を備えることが最大の特徴である。
ワンボディに多機能を搭載しながらも、音質に妥協せずハイクオリティを達成できたのは、AVアンプやネットワークプレーヤーで培って来たノウハウを持つマランツ及びD&Mグループならではの開発力が最大限に活かされているからだろう。
また、ヒストリカルなマランツ・コンポーネントのマナーを踏襲したスタイリッシュなデザインも注目ポイントだ。とりわけ、フロントパネル左右に放射状に広がるラウンドパネルに仄明るく照らし出される凹凸が印象的で、本機がこれまでのユーザー層だけでなく、幅広い層に向けて受け入れられるデザインを目指していることが如実に伝わってくる意匠だ。
音質的な特徴としては、大きく2つある。まず、(1)スピーカーを選ばない音質設計だ。
これは、特に小型スピーカーと組み合わせた場合でも腰高な音にならないサウンドバランスを配慮したものといい、厳格なサウンドバランスを追求した上位モデルの10シリーズや12シリーズよりも、一層多様な組み合わせでも楽しめるようになっているのである。
もうひとつは、(2)ストリーミングやネットワーク再生であっても、SACD再生クオリティの音質を担保したということである。
これは、オリジナルのディスクリートDACのサウンドの魅力を最大限に活かしながら、ジッター・クリーニングにコストを掛けることで、ディスク再生に比べてクロック面で不利になりがちなネットワークやストリーミング再生の音質を確保したのである。本機は、同社のディスクリートDACをネットワークプレーヤーに初投入したモデルでもあり、それだけ音質にも力が入れられているモデルといえる。
その音質は、マランツらしい流麗な美しさがありつつも、先述の組み合わせへの懐の広さを持った、音楽再生が楽しく心地よく聴けるものに仕上がっている。特徴的なのは、弾みある低域と明瞭で浮き立つような明るさを持った中・高域の表現だ。
ポップスの女性ヴォーカルソースでは、歌声がくっきりと浮かび上がる様や、シンセサイザーの音色が輝き豊かに鮮やかに描かれる表現が大変快い。エレクトリック・ベースも、ボリュームがありつつも締まりがあり、決して不明瞭にならないサジ加減が絶妙だ。
ジャズのピアノトリオでも、特にウッドベースの弾みあるピチカートが心地よく、ピアノは明朗でブライトな響きとしっとりとした音色が融合しているほか、ドラムスはシンバルやスネアが明瞭かつ軽快に飛び交う様が楽しい。
クラシックソースも、弦楽器はやはり明るくもしっとりとしており、心地よい潤いを湛えつつも華やかな芳醇さを備える音色が魅力的。チェンバロも華美にならずに艶やかな質感が美しく、ピアノ独奏も、倍音域が豊富なのか色気のある音色が芳しく、同時に、余韻の広がりや会場の雰囲気までがしっかりと伝わってくる。
いずれのソースも、決して神経質にならず、音楽の雰囲気を楽しく美しく伝えてくれる点が魅力的なのである。
設計の意図通り、幅広い音質傾向のコンポーネントと組み合わせて楽しめる懐の広さが実現されていることがよく分かる音質だ。今回改めて自宅にて試聴してみたのだが、この機会に音質傾向の異なる大小様々なシステムに組み込んでテストしてみると、いずれのシステムにも馴染む音質であると実感した。なかでも、音楽を楽しく再現するという持ち味においては、非常に高いレベルを実現していると感じる。
そして、これらの音質クオリティが、SACDを含むディスク再生からストリーミング再生、そしてファイル再生などまで、全方位のソースで実現されていることが本機ならではの魅力だろう。デジタルプレーヤー選びにおいて、入力や出力が何に対応するものを選択するかは、当然のことながら大きなポイントとなる。
現実的な選択肢としては、ディスクプレーヤーを用いてディスク再生を中心に、DAC部を使用して外部ストリーマーやストリーミング再生対応サーバーを使用してネットワーク系を賄うか、または、単体ネットワークプレーヤーなどを使用して別途ディスクプレーヤーなりディスクトランスポートを用意する、というのが主な選択肢と考えられる。その上で本機は、それらすべてがこの1台で完結することが魅力だ。
役割をコンポーネントごとに分担させて高音質を追求するという考え方もあるが、音質に妥協をせずに、とにかくこれ一台で賄いたいという場合に特に魅力的な選択肢になるのである。とりわけ、フルサイズでミドルクラスグレードのコンポーネントとして「Amazon music HD」に本体再生のみで対応する数少ない機器であること、HEOSをベースとした安定した動作とこなれた音質を実現することは、ネットワーク系の再生機器として大きなアドバンテージと言える。結果として本機は市場での人気も高いので、安心して導入することができる。
それもあって筆者としては、SACD 30nは、ディスク再生を楽しみつつも、それよりもネットワーク系ソースの再生のほうが比重が大きいユーザーに、特にオススメしたいモデルであると認識している。加えて、昨今の住宅内装などにみられる、ラグジュアリーテイストでインテリアをまとめている部屋で使用する場合に、本機のデザインは非常にマッチングが高いことも大きなポイントだ。SACD 30nは、流麗かつ快活なサウンドで、あなたの毎日を彩ってくれることだろう。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.189』からの転載です
スピーカーを選ばない音質設計&強力なネットワーク再生
SACD 30nは、同社の新たなコンセプト「Modern Musical Luxury」と同時に発表された、新デザインを纏った第一号機として誕生したモデルだ。セットとなるプリメインアンプのMODEL 30と同時に発売された本機は、多様化する現代のリスニングシーンにおけるユーザーニーズへと十全に応えるべく、SACD再生をはじめ、マランツ史上最高音質を実現したとするネットワーク再生機能を備えることが最大の特徴である。
ワンボディに多機能を搭載しながらも、音質に妥協せずハイクオリティを達成できたのは、AVアンプやネットワークプレーヤーで培って来たノウハウを持つマランツ及びD&Mグループならではの開発力が最大限に活かされているからだろう。
また、ヒストリカルなマランツ・コンポーネントのマナーを踏襲したスタイリッシュなデザインも注目ポイントだ。とりわけ、フロントパネル左右に放射状に広がるラウンドパネルに仄明るく照らし出される凹凸が印象的で、本機がこれまでのユーザー層だけでなく、幅広い層に向けて受け入れられるデザインを目指していることが如実に伝わってくる意匠だ。
音質的な特徴としては、大きく2つある。まず、(1)スピーカーを選ばない音質設計だ。
これは、特に小型スピーカーと組み合わせた場合でも腰高な音にならないサウンドバランスを配慮したものといい、厳格なサウンドバランスを追求した上位モデルの10シリーズや12シリーズよりも、一層多様な組み合わせでも楽しめるようになっているのである。
もうひとつは、(2)ストリーミングやネットワーク再生であっても、SACD再生クオリティの音質を担保したということである。
これは、オリジナルのディスクリートDACのサウンドの魅力を最大限に活かしながら、ジッター・クリーニングにコストを掛けることで、ディスク再生に比べてクロック面で不利になりがちなネットワークやストリーミング再生の音質を確保したのである。本機は、同社のディスクリートDACをネットワークプレーヤーに初投入したモデルでもあり、それだけ音質にも力が入れられているモデルといえる。
非常に高いレベルで音楽を楽しく再現する
その音質は、マランツらしい流麗な美しさがありつつも、先述の組み合わせへの懐の広さを持った、音楽再生が楽しく心地よく聴けるものに仕上がっている。特徴的なのは、弾みある低域と明瞭で浮き立つような明るさを持った中・高域の表現だ。
ポップスの女性ヴォーカルソースでは、歌声がくっきりと浮かび上がる様や、シンセサイザーの音色が輝き豊かに鮮やかに描かれる表現が大変快い。エレクトリック・ベースも、ボリュームがありつつも締まりがあり、決して不明瞭にならないサジ加減が絶妙だ。
ジャズのピアノトリオでも、特にウッドベースの弾みあるピチカートが心地よく、ピアノは明朗でブライトな響きとしっとりとした音色が融合しているほか、ドラムスはシンバルやスネアが明瞭かつ軽快に飛び交う様が楽しい。
クラシックソースも、弦楽器はやはり明るくもしっとりとしており、心地よい潤いを湛えつつも華やかな芳醇さを備える音色が魅力的。チェンバロも華美にならずに艶やかな質感が美しく、ピアノ独奏も、倍音域が豊富なのか色気のある音色が芳しく、同時に、余韻の広がりや会場の雰囲気までがしっかりと伝わってくる。
いずれのソースも、決して神経質にならず、音楽の雰囲気を楽しく美しく伝えてくれる点が魅力的なのである。
設計の意図通り、幅広い音質傾向のコンポーネントと組み合わせて楽しめる懐の広さが実現されていることがよく分かる音質だ。今回改めて自宅にて試聴してみたのだが、この機会に音質傾向の異なる大小様々なシステムに組み込んでテストしてみると、いずれのシステムにも馴染む音質であると実感した。なかでも、音楽を楽しく再現するという持ち味においては、非常に高いレベルを実現していると感じる。
一台で賄いたい方には特に魅力的な選択肢
そして、これらの音質クオリティが、SACDを含むディスク再生からストリーミング再生、そしてファイル再生などまで、全方位のソースで実現されていることが本機ならではの魅力だろう。デジタルプレーヤー選びにおいて、入力や出力が何に対応するものを選択するかは、当然のことながら大きなポイントとなる。
現実的な選択肢としては、ディスクプレーヤーを用いてディスク再生を中心に、DAC部を使用して外部ストリーマーやストリーミング再生対応サーバーを使用してネットワーク系を賄うか、または、単体ネットワークプレーヤーなどを使用して別途ディスクプレーヤーなりディスクトランスポートを用意する、というのが主な選択肢と考えられる。その上で本機は、それらすべてがこの1台で完結することが魅力だ。
役割をコンポーネントごとに分担させて高音質を追求するという考え方もあるが、音質に妥協をせずに、とにかくこれ一台で賄いたいという場合に特に魅力的な選択肢になるのである。とりわけ、フルサイズでミドルクラスグレードのコンポーネントとして「Amazon music HD」に本体再生のみで対応する数少ない機器であること、HEOSをベースとした安定した動作とこなれた音質を実現することは、ネットワーク系の再生機器として大きなアドバンテージと言える。結果として本機は市場での人気も高いので、安心して導入することができる。
それもあって筆者としては、SACD 30nは、ディスク再生を楽しみつつも、それよりもネットワーク系ソースの再生のほうが比重が大きいユーザーに、特にオススメしたいモデルであると認識している。加えて、昨今の住宅内装などにみられる、ラグジュアリーテイストでインテリアをまとめている部屋で使用する場合に、本機のデザインは非常にマッチングが高いことも大きなポイントだ。SACD 30nは、流麗かつ快活なサウンドで、あなたの毎日を彩ってくれることだろう。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.189』からの転載です