PR兄弟機TIGERとの対照的な個性に注目
qdcの手腕が光る一台、「WHITE TIGER」の登場でハイエンドイヤホン選びがまた楽しくなる
最大ポイントは「明快な表現力」!ダイナミックに音楽の見せ場を光らせる
TIGERと同じく、帯域バランスはフラットで、音調も癖なくナチュラルなのは当然の上で、その個性が感じられる。並べて聴き比べると、TIGERはクール系ナチュラル、対してWHITE TIGERはウォーム系ナチュラル。そしてより明快な表現を得意とする。
その明快さは、特にボーカルに注目するとわかりやすい。宇多田ヒカル『BADモード』を聴くと、歌の抑揚や声の明暗、口や喉の開き方による歌の表現が、よりダイナミックにリスナーに届けられる。比べるとTIGERは冷静な表現で、それ故にリスナー側の意識の方が表現の細部に引き寄せられる、どちらも良い。
WHITE TIGERはリズム表現も快活だ。ドラムスやベースの響きと弾みを豊かに表現し、リズムの推進力を強めてくれる。YOASOBI『アイドル』のBメロ後半からサビでは、ロック的なドライブ感をググッとプッシュ。するとその次のラップ部分への場面転換での、ロック的なリズムからヒップホップ的なリズムへのチェンジによるコントラストが高まり、曲の見せ場がさらに映える。TIGERは逆に、ヒップホップ側のキレやダークな沈み込みの表現が秀逸。どちらにせよコントラストは鮮やかだが、見せ方は違うわけだ。
そのほかの楽器でいうと、ナイロン弦ギターのフィンガーピッキングの感触は最高だった。音の温かみや丸みと、音の速さや弾みという、本来ならば両立が難しい要素を見事に両立している。熟練エンジニアが、職人技なコンプレッサー処理で音のアタックを絶妙にコントロールしているかのような、何とも気持ちのよい粒立ちだ。
空間表現においては、アコースティックな響きなどの表現はもちろん、アレンジやミックスでの綿密な音の配置と、その効果の再現はさらに秀逸。配置の明瞭度は音像の明瞭度もあってこそなので、前述の音の粒立ちの良さはここにも貢献している。
星街すいせい『Stellar Stellar』は、その音響で脳内に3DCG的なバーチャル空間を見せてくれる楽曲。そのデジタルな空間を再現した上で、まるで名品カメラレンズを通した映像のような、有機的でアナログな透明感や艶やかさも加えてくれる。これもまた、WHITE TIGERの美味しいところだ。
加えて、スマホ&サブスクに合わせやすい環境として、Astell&Kernのスティック型DAC/ヘッドホンアンプ「AK HC2」との組み合わせもチェック。するとこちらはややパワフルな音に寄る印象。音の届き方がさらに力強くなって、屋外での利用には特にフィットしそうだ。
色々と特長を挙げてきたが、最大のポイントはやはり、最初に述べた表現の明快さだ。冷静な表現でリスナーの意識を音に引き込む「静のTIGER」に対して、快活な表現でリスナーの意識に音を届ける「動のWHITE TIGER」。対照的な個性を持たされた兄弟機と言える。
最後に改めて、TIGERとWHITE TIGERの違いは、音調・外観・装着感・価格だ。ならば音調と外観が好みに合致する方にとって、装着感と価格に優位を持つWHITE TIGERは、相当に魅力的なモデルとなるはず。
筆者はTIGERを「マルチBA+α系の最高峰の一つとしてイチオシ!」と推してきたが、身内から対抗馬ならぬ対抗虎が登場してくるとは...。この白虎顕現によって、今夏のハイエンドイヤホン選びはさらに悩ましく、楽しいものになることだろう。
(協力:アユート)