[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第272回】
アクティブスピーカーを小音量&高音質に鳴らす!モニターコントローラー「Baby RAM」に注目
アクティブスピーカーを小音量でも快適に使いたい
筆者宅のデスクトップオーディオ環境のスピーカーは、Genelec「6010B」というアクティブスピーカー(パワードモニター)。小型ゆえに低音再生能力は不足しているが、そのほかは十分納得できる音であり、長年愛用している。
ただし、6010Bには満足でもシステム全体には不満があった。小音量領域での音量調整能力と音質に難ありだったのだ。
リスナーとスピーカーの距離が近いデスクトップオーディオでの快適音量は、フルスケールオーディオと比べて総じて小さめ。加えて筆者は元から小さめの音量を好むタイプ。なのにまさにその小音量再生時に問題があった。
音量をグッと絞ろうとすると、ボリュームコントローラーのノブを9時方向(←)未満に下げねばならない。すると細かな調整はやりにくいし、左右の音量差、いわゆるギャングエラーも現れ始める。それをどうにかするために……しかしすると今度は音質が……という負のスパイラル。
しかし、先日に導入した機材がその問題を見事解消してくれた。その機材とはHeritage Audio「Baby RAM」。パッシブ方式のモニターコントローラーだ。実売価格は、安定していないがここ半年ほどはだいたい、税込2万500円から2万2000円あたりを推移していたかと思う。
小音量再生の快適さはボリュームコントローラー次第
まずは、Baby RAM導入以前での問題点を確認。前提として、6010Bはプロオーディオ仕様のアクティブスピーカーであり、その内蔵アンプはボリュームコントローラーを備えていない。オーディオ的な言い方をすると「プリアンプなしでパワーアンプのみ搭載」みたいな仕様だ。
この手のアクティブスピーカーを利用する際は、音量調整機能を持つ何らかの機材をスピーカー手前に挟むことが必要となる。デスクトップオーディオなら「PC→DAC→音量調整機器→パワードスピーカー」といった具合。そして音量調整周りへの不満とは、主にはその音量調整機器への不満なわけだ。
旧環境でその役割を担ってくれていたのは、フォステクスのシンプルなボリュームコントローラー「PC-1e」だった。入力と出力の間に可変抵抗器、いわゆるポットを用いたパッシブの音量調整回路があり、ノブでポットの抵抗値を動かすことで音量を下げる仕組みになっている。
このPC-1eも普通に優秀なボリュームコントローラーだ。超小型にして金属筐体の重量で設置安定性も十分。ノブの回し心地も良好。音質の損失もノブ10.5時↖以上であれば気にならない。それが筆者購入当時は税込定価2480円。現在は直販4620円と昨今の部品高騰を考えればやむなしであるが、その価格でも納得できるクオリティ。筆者ほど小音量再生にこだわらない方には今でもおすすめできる。
だが、いつからか筆者は、以前よりさらに小さな音量を、以前よりさらに頻繁に使用するようになった。音楽に限らずラジオや動画配信のトークコンテンツなどを、「耳や意識にうるさくない程度の小さな音量で再生しておいてながら聴き」することが増えたのだ。
するとPC-1eのノブは9時(←)未満に落ち込み、細かな音量調整はやりにくくなり、ポットの製造誤差によるギャングエラーの影響も受けやすくなってくる。
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