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PRqdcらしい正確性を根底にリスニング向けに最適化

qdc「SUPERIOR」には値段を超えた魅力がある。表現力豊かな実力派イヤホンを聴く

公開日 2023/08/02 06:30 野村 ケンジ
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音質面では、qdcとして初めて10mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載したことに注目したい。おそらくコストの面で使い慣れたBAマルチ構成採用は難しかったこともあるだろうが、そこはqdc、フルレンジのダイナミック型ドライバー1基を初採用しただけでなく、真空成膜技術を用いたダイアフラムや独自の同軸デュアル磁気回路、デュアルキャビティ構造など、音質重視のための凝りに凝った造りが盛り込まれている。これによって優れた過度特性を実現し、低歪で正確な音楽再生と深い低域表現を両立しているという。

もうひとつ、SUPERIORには本体発売と同時に別売で登場する、4.4mmバランス接続ケーブル「SUPERIOR Cable 4.4」がある。こちらを利用することで、DAPなどと組み合わせる際、さらに高品位なサウンドへとグレードアップすることが可能となっている。

別売オプションケーブル「SUPERIOR Cable 4.4」(5,500円/税込)で、バランス接続の効果も比較的手ごろに体験できる

■定位が正確、メリハリもきいた「音楽がもっと楽しくなる」サウンド



さて、肝心のサウンドを確認するべく、様々な組み合わせを試してみた。まずは価格的にバランスのとれたインライン型のDACアンプ、Astell&Kern「AK HC3」を、iPhone SE(第2世代)に接続してApple Musicで試聴してみる。

総じて、パワフルだが歪み感の少ない、正確な表現のサウンドが特徴。YOASOBI「アイドル」はとても近い距離の、リアルさとパワフルさを併せ持つ歌声と演奏が楽しめる。ノリの良さは抜群だ。

女王蜂「メフィスト」では、打ち込みのディープな最低音とベースの音が見事にキャラクター分けされていて、表現が奥深く感じる。続いて聴いた上田麗奈もなかなかに素晴らしかった。彼女の声の魅力がストレートに伝わってくるし、声の強弱の表現が繊細なうえ、微妙な音階表現も狂いがなく聴き心地がよい。

そして、米津玄師「KICK BACK」は楽しいのひとこと。演奏はグルーブ感よく、それでいて全ての表現が細部までしっかりと伝わってくれる。この組み合わせでここまで質の高いサウンドが聴けたのは、初めてかもしれない。

続いてハイレゾDAPと組み合わせ。まずは、R2R方式DACを搭載したことで注目されているAstell&Kern「A&futura SE300」を使用して試聴をおこなってみたのだが、いやもう、SUPERIORの懐の深さに驚くばかりだ。

R2R DACやA/AB級デュアルアンプを備える「A&futura SE300」と組み合わせれば、音の広がりや響きが格段に増す

米津玄師「KICK BACK」は格段によくなった空間表現のなか、迫力満点かつリアルな歌声を存分に楽しませてくれる。溝口肇「Angel」のチェロの音はエコー成分がしっかりと付帯、ドッシリと安定した音色を聴かせてくれる。ピアノの響きも軽やかで跳ねるような演奏に感じられる。

厳密にいえば解像度や無音の静けさなどで高級イヤホンに敵わないかもしれないが、そんなことを気にならなくさせる音色の魅力を持ち合わせている。これが1万5,000円にも満たない製品だなんて、とても信じられない。

せっかくだからと、ケーブルを別売の「SUPERIOR Cable 4.4」に替えてみる。すると、音場表現が変化、というかさらに正確な印象になってくれた。たとえば「五等分の気持ち」は冒頭部分5人のセリフの定位がハッキリ揺るぎない印象となった。

イヤホンのなかには、センターボーカルが左右よりも上の位置になってしまう音場のものが少なくないが、SUPERIORは見事に左右一直線に移動してくれる。おかげで、制作者の意図がストレートに伝わってくるし、映画などの映像系コンテンツも違和感なく楽しめそう。こういった音場表現の確かさは、プロ向けモニターイヤホンを作っているqdcならではのアドバンテージかもしれない。

最後に、SUPERIORがどこまでの実力を持ち合わせているのか確認すべく、同じAstell&Kernの最上級DAP「A&ultima SP3000」との組み合わせも試してみた。ケーブルは「SUPERIOR Cable 4.4」のままだ。

Astell&Kernの最上位DAP「A&ultima SP3000」の透き通るような表現力にも応えてくれる

いやはや、まだまだSUPERIORの深淵を覗ききっていなかったかと驚くばかり。溝口肇はさらにクリアなサウンドキャラクターになったおかげか、チェロもピアノも闊達な演奏に変化している。続いて聴いたダフト・パンク、ロバート・グラスパーもしかり。「A&ultima SP3000」ならではのハイクオリティ、ハイファイなサウンドを存分に楽しませてくれる。なんと出来のよいイヤホンだろう。

余談になるが、筆者はqdc製カスタムIEM「8CS」を所有しているためこちらと比較試聴してみたところ、両者でサウンドキャラクターが大きく異なっていた。プロ用モニターならでは、客観的で正確な音場と音色の表現を持つ8CSに対して、SUPERIORはややセンターが前よりの音場表現となっている。また抑揚表現もメリハリがよく情緒的であったりと、リスニング向けにチューニングされていることが伝わってくる。


しかし、正確な定位や音色などqdcが是とするモノづくりは変わらず、確かに両者は根底で共通していることがわかる。何よりも、SUPERIORは価格を大きく超えた魅力的なサウンドを持ち合わせている。音楽がさらに魅力的に感じられる素晴らしい製品だ。


(企画協力:アユート)

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