PR技術詳細を開発スタッフに聞いた
デノンの伝統と最新技術が邂逅。新旗艦レコードプレーヤー「DP-3000NE」を聴く
福田:プラッターの作りはどのようになっていますか。
−−直径305mmのアルミダイキャストです。ただ、制振のため裏側に3mmのステンレス板を張り付けています。このステンレス板は銅メッキのネジで止めてあり、質量は2.8kgあります。
プラッターは1枚構造では普通かなり響いてしまうため、これを防止するための方法でもある。音質への影響も大きいはずだ。
福田:複合する材料は、社内で意見が分かれたそうですね。
−−構造技術チームでの推奨は亜鉛板でしたが、音質担当の意見はステンレスでした。厚みや固定方法を検討して、最終的にステンレスに決定しました。
スペックを見ているとワウ・フラッター0.06%、起動トルク4.5kg/cm。またSN比は、記憶にあるデノンの当時のダイレクトドライブは60dBであったが、本機では70dB以上の値に進化している。この違いは大きい。
■伝統の「S字型アーム」も新設計で高い性能を実現
トーンアームはシンプルで美しい大変スマートな作りのS字型パイプアームが採用されている。筆者の常用しているカートリッジ、オルトフォンERは高剛性のかなり重い炭化珪素・ファインセラミックスのシェル(16g)に装着しているため、カートリッジ部の総重量は28gもある。これも標準ウェイトでゼロバランスは簡単に、針圧2.2gも楽に設定できた。
−−白河にある膨大な過去の設計図を見直し、OB技術者の意見を参考にして新設計しました。シンプルで精度が高いS字型パイプのスタティックバランス型です。プレーヤーでとても大事なのはアームです。トラッキングエラーを少なく、精度を向上させるのが基本的なポイントです。
福田:トラッキングエラーを減らすためにどのようなことをしているのですか。
−−トーンアームは必ず円弧を描きながら移動するので、レコードの外側から内側にかけて音溝と針先の角度のズレが生まれます。これは「水平トラッキングエラー」といいます。トーンアームには有効長、オフセット角、オーバーハングという3つの要素がありますが、アームのS字カーブも検討して全て見直し設計しました。
トラッキングエラーは歪みの発生原因になる。トーンアームの性能は歪みに関係するため、ゼロにはできないが正確な回転数と同様に重要な要素になる。スペックにはトラッキングエラー2.5度(最大)以内とある。
−−また、アームパイプは本体とパイプの結合を板バネでフローティングされた継ぎ手を介して行うことによって、パイプの鳴きや機械的結合によって生じる振動を抑え、周波数特性にあるピークディップを軽減しました。
福田:シェルを含めたカートリッジ部の重量はどのくらいまで対応していますか。
−−標準ウェイトとサブウェイトがあります。標準ではヘッドシェルを含め15-27gまで、サブウェイトを使用すると25-37gまで対応します。
それなら重量のあるオルトフォンSPUシリーズ(約35g)のほとんどが装着可能である。それ以外でも、かなり広い範囲のカートリッジに対応できそうだ。
キャビネットは1枚板の厚いMDF材を削り出したものでボックス構造ではない。高剛性のソリッドタイプを採用している。
最後はインシュレーターが性能を左右する。脚であるが飾りではない。設置面からの振動を排除してハウジングマージンを高める必要がある。本機ではスプリングとラバークッションを採用した高さ調整機能を持つインシュレーターを採用している。素材にはアルミニウム、樹脂、フェルトなどを組み合わせている。
アンチスケーティング機能はアームに接触しないマグネット式を採用、アームの感度に影響することがない。またアーム右下のレバーは新開発の「高さ調整機構」であり、9mmの高さ調整が可能。カートリッジの高さやターンテーブルシートの厚みによる変化を最適にすることがこんなに簡単に、スムーズに操作できるのは見事な作りだ。また、付属のヘッドシェルはデノンのカートリッジ「DL-103」にマッチした設計になっている。