【特別企画】オーディオ銘機賞2024<銅賞>受賞モデル
音楽的な趣味の良さは最上級。Aurorasoundのハイブリッド式プリメイン「HFSA-01」を聴く
Aurorasound(オーロラサウンド)より、お洒落でキュートでレトロなプリメインアンプ「HFSA-01」がリリースされた。真空管と半導体それぞれの長所を生かしたハイブリッド構成で、そのサウンドが高く評価されオーディオ銘機賞2024にて<銅賞>を獲得している。本記事で詳細をレポートしよう。
Aurorasoundがお洒落でキュートでレトロなプリメインアンプ「HFSA-01」(HFSA=High Fidelity Stereo Amplifier)を発売した。
筐体は幅36cm、意外とコンパクトだ。サイドにはマホガニーがあしらわれている。同じ素材のオプション・ノブが試聴機には取りつけられていた。回路の大半はソリッドステートだが、終段は真空管で6BQ5(EL84)プッシュプルとなっている。
回路構成は伝統的なプリアンプ+パワーアンプだ。プリアンプ部はMM対応のフォノイコライザーとセレクターとボリュームとトーンコントロールからなる。トーンコントロールは非常に凝ったもので、出荷時に同梱されるインジケートパネルをトーンノブに被せると、非RIAAイコライジングカーブのモノラルLPはもとよりSPレコードまでほぼ正しいカーブで再生できる。
パワーアンプ部は古典的な三段構成だ。初段(ここからヘッドホン出力が取り出される)、位相反転段ともオペアンプで、これらによって終段の真空管がドライブされる。終段の真空管は自己バイアス動作なので、交換時の調整は不要だ。
6BQ5(EL84)は五極のミニチュア管で、1960年代に製造されたモジュラーステレオ等の終段によく起用された。この球は小型かつ高性能で、プッシュプルで十数W以上を稼ぐことができる。本機の出力は無理がなく安全な14W×2。出力端子は8及び4〜6Ωに対応する。
アルプスアルパイン社製可変抵抗を起用したボリュームノブの操作感は上々だ。リスナーの感性に訴求する手触りで、望む音量が直感的に得られる。
そのサウンドは初めて聴くのになぜか懐かしい。真空管の味わい深さとソリッドステートの精密さが同居した音ともいえるだろう。ここで特筆しておきたいのは、いわゆる真空管アンプのナローレンジっぽさがほとんど感じられないことである。
ボワ〜ンとした帯域制限感を真空管の音と認識なさっている愛好家もおられるだろう。それを否定するつもりはない。だが、筆者の考えは少し違う。ボワ〜ンはむしろトランスの味わいなのだ。より正確に言えばケーシングを施したトランスの音の詰まりなのかもしれない。本機には筐体があるので、国内メーカーに特注した電源/出力トランスはケーシングされていない。だからこそ音の詰まりのないワイドレンジ的なサウンドが得られているのではないだろうか。
比較的小出力であるがゆえにレファレンスのBowers&Wilkins「803 D4」をねじ伏せるような鳴り方はしない。だが、スピーカーと協同して音楽を奏でているような趣が感じられる。音楽的な趣味の良さは最上級といっても過言ではない。
ちなみに開発者でオーロラサウンド代表の唐木志延夫はギターの名手でもある。ジャンル別のインプレッションは省略するが、マスカーニの「カヴァレリア」間奏曲後半のパイプオルガンの再生音は実に見事だった。
以上はCDの印象だが、フォノイコライザーの再生音も素晴らしい。ステレオLPは音場が清潔で広く、モノラルLPは音がふっくらしていて耳に良く馴染む。トーンコントロールの使い勝手は絶妙で、非RIAAのモノラルLPにも非常に有効だ。ただし非RIAAは教条的に受け取る必要はなく、リスナーの聴感に沿った調整にすべきというのが筆者の考えだ。
最後にヘッドホン出力も聴いたが、これまた極上であった。機会があれば自分でも使いたい、プリメインアンプの銘品である。
(提供:オーロラサウンド)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です。
シンプルなプリメインに凝ったトーンコントロール機能を搭載
Aurorasoundがお洒落でキュートでレトロなプリメインアンプ「HFSA-01」(HFSA=High Fidelity Stereo Amplifier)を発売した。
筐体は幅36cm、意外とコンパクトだ。サイドにはマホガニーがあしらわれている。同じ素材のオプション・ノブが試聴機には取りつけられていた。回路の大半はソリッドステートだが、終段は真空管で6BQ5(EL84)プッシュプルとなっている。
回路構成は伝統的なプリアンプ+パワーアンプだ。プリアンプ部はMM対応のフォノイコライザーとセレクターとボリュームとトーンコントロールからなる。トーンコントロールは非常に凝ったもので、出荷時に同梱されるインジケートパネルをトーンノブに被せると、非RIAAイコライジングカーブのモノラルLPはもとよりSPレコードまでほぼ正しいカーブで再生できる。
パワーアンプ部は古典的な三段構成だ。初段(ここからヘッドホン出力が取り出される)、位相反転段ともオペアンプで、これらによって終段の真空管がドライブされる。終段の真空管は自己バイアス動作なので、交換時の調整は不要だ。
6BQ5(EL84)は五極のミニチュア管で、1960年代に製造されたモジュラーステレオ等の終段によく起用された。この球は小型かつ高性能で、プッシュプルで十数W以上を稼ぐことができる。本機の出力は無理がなく安全な14W×2。出力端子は8及び4〜6Ωに対応する。
アルプスアルパイン社製可変抵抗を起用したボリュームノブの操作感は上々だ。リスナーの感性に訴求する手触りで、望む音量が直感的に得られる。
真空管の味わい深さとソリッドステートの精密さが同居
そのサウンドは初めて聴くのになぜか懐かしい。真空管の味わい深さとソリッドステートの精密さが同居した音ともいえるだろう。ここで特筆しておきたいのは、いわゆる真空管アンプのナローレンジっぽさがほとんど感じられないことである。
ボワ〜ンとした帯域制限感を真空管の音と認識なさっている愛好家もおられるだろう。それを否定するつもりはない。だが、筆者の考えは少し違う。ボワ〜ンはむしろトランスの味わいなのだ。より正確に言えばケーシングを施したトランスの音の詰まりなのかもしれない。本機には筐体があるので、国内メーカーに特注した電源/出力トランスはケーシングされていない。だからこそ音の詰まりのないワイドレンジ的なサウンドが得られているのではないだろうか。
比較的小出力であるがゆえにレファレンスのBowers&Wilkins「803 D4」をねじ伏せるような鳴り方はしない。だが、スピーカーと協同して音楽を奏でているような趣が感じられる。音楽的な趣味の良さは最上級といっても過言ではない。
ちなみに開発者でオーロラサウンド代表の唐木志延夫はギターの名手でもある。ジャンル別のインプレッションは省略するが、マスカーニの「カヴァレリア」間奏曲後半のパイプオルガンの再生音は実に見事だった。
以上はCDの印象だが、フォノイコライザーの再生音も素晴らしい。ステレオLPは音場が清潔で広く、モノラルLPは音がふっくらしていて耳に良く馴染む。トーンコントロールの使い勝手は絶妙で、非RIAAのモノラルLPにも非常に有効だ。ただし非RIAAは教条的に受け取る必要はなく、リスナーの聴感に沿った調整にすべきというのが筆者の考えだ。
最後にヘッドホン出力も聴いたが、これまた極上であった。機会があれば自分でも使いたい、プリメインアンプの銘品である。
(提供:オーロラサウンド)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です。