【特別企画】“フルサイズ”ブックシェルフスピーカー徹底試聴
“メイド・イン・ジャパン”を追求する「FBD」。音楽だけに没頭できるスピーカーの魅力
熟練の職人による高品質な技術と最新の音響設計技術を併せ持つ、“メイド・イン・ジャパン” のクオリティを追求したブランドとして新たに誕生したスピーカーブランド、FBD(Francis Bacon's Dream)。
同ブランドから登場した2つのスピーカーの魅力は何といっても高域のコンプレッションドライバーを搭載していること。低域にペーパーコーンを採用している点も相まって、現代のスピーカー再生で失いかけている極めて開放的なサウンドを引き出してくれる。さらに同ブランドはポリシーとして「視覚と聴覚の高次元な融合」を掲げ、シンプルで美しいデザインも魅力である。今回はこの2つのスピーカーの音質を土方久明氏が体験。その魅力をレポートする。
試聴室に入った僕は、目の前にあるスピーカーを見て、息を呑んだ。今回ご紹介するのは神奈川県横浜市に本拠地を構える気鋭のオーディオブランド、FBDから登場した「W-01」、「W-02」という2モデルのスピーカーだ。
開発と製造を行うヴィアトロニクスは、生活空間を豊かにするために良質なオーディオ装置を提供する、という目標を掲げる。音色が正確に再生できること、デザインが生活空間に調和すること、パーツ供給が持続できることという3つの開発理念を持つ。
「W-01」と「W-02」は一般的なスピーカーとは違う形状の美しいキャビネット形状が1つの魅力だ。MDFとタモ材を組み合わせて作られ、背面が絞り込まれた多角形で構成されており、見るからにキャビネット内の定在波が少なそう。また底面部にはブラックのスパイクが固定された状態で装着され、専用のスパイク受けも付属する。
もう1つのポイントとなるのが、ホーンロードがかけられた、2ウェイの同軸ユニットの搭載だ。同軸ユニットの理論的なアドバンテージはスピーカーの一点から音が放射されること。高音域から低音域までが1カ所から出るので自然な音色とサウンドステージと音像定位表現に有利に働くことなどだ。ちなみに、エンクロージャーの製作からスピーカーアッセンブリ作業は熟練の職人が日本国内で行っているという。
ここまでが2つのスピーカーの共通点。次に各スピーカーのスペックを確認したい。「W-01」 は少し大きめなブックシェルフスピーカーのサイズ感を持つ。ユニットはペーパーコーンに特殊樹脂をコーティングした5インチウーファーと、その同軸上に0.8インチスロートのコンプレッションドライバーおよびホーンを配置している。ダイアフラムを動かす磁気回路はネオジムマグネットで、トゥイーターとウーファーのクロスオーバー付近の歪みを抑えるために高域と低域を共用化する形で搭載している。周波数特性は75Hz - 20kHzで、インピーダンスは8Ω、感度92.5dBと効能率だ。
「W-02」はキャビネットサイズ的にも中型スピーカーの部類に入る。同軸ユニットの振動板の素材は「01」が特殊樹脂に対し、この「02」はアルミニウムを採用し、ウーファー、トゥイーター、磁気回路とも大口径化。8インチのウーファー、1インチのスロートのコンプレッションドライバーとホーンを同軸配置する。インピーダンス8Ωで感度96dBと効能率となっている。
普段見慣れない構成のスピーカーに音を出すのが待ちきれない。まずは大型の「W-02」から、1964年にリリースされたハードバップジャズ、リー・モーガン『サイドワインダー』(BLP-4157 mono/オリジナル盤)に針を乗せた。
「おお!いいぞ!」と思わず口に出る。ホーンロードがかけられた同軸ユニットからはディテールが明瞭なトランペットの音像がグイグイと前へ飛び出す。中音域が充実し、低域の弾力感も立体的だ。女性ヴォーカルも絶品。
ハイレゾファイルから再生したメロディ・ガルドーはピアノの音に温度感と色彩がある。音の立ち上がりがよく、分析的な音とは無縁で、血の通ったヴォーカルが前へ飛び出してくる。
全体的なスケールは少しコンパクトになるが「W-01」からも共通するグルーヴに優れた音が聴こえて嬉しくなる。サイドワインダーを演奏する、ビリー・ヒギンスのドラムはレスポンスが良く、8ビートを取り入れたジャズ・ロック調のタイトルを秀逸に表現する。
メロディ・ガルドーは、芯のあるしっかりとしたピアノと語りかけてくるようなヴォーカルが聴き取れて感心した。両モデルとも感度が高いので、真空管アンプや段数の少ないシンプルなトランジスターアンプまで様々なアンプと組み合わせたくなる。
同社の音の決め手は、立ち上がりが早いこと、減衰音が美しいこと、きめが細かい音ということだが、本試聴からはその多くを感じ取れた。きっとこのスピーカーの製作者は音楽再生に本当に必要なものが何かを理解している。音楽に集中できる、最高のグルーヴを備えたスピーカーだ。
(提供:合同会社ヴィアトロニクス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です
同ブランドから登場した2つのスピーカーの魅力は何といっても高域のコンプレッションドライバーを搭載していること。低域にペーパーコーンを採用している点も相まって、現代のスピーカー再生で失いかけている極めて開放的なサウンドを引き出してくれる。さらに同ブランドはポリシーとして「視覚と聴覚の高次元な融合」を掲げ、シンプルで美しいデザインも魅力である。今回はこの2つのスピーカーの音質を土方久明氏が体験。その魅力をレポートする。
生活空間に調和するデザインと音色の正確な再生
試聴室に入った僕は、目の前にあるスピーカーを見て、息を呑んだ。今回ご紹介するのは神奈川県横浜市に本拠地を構える気鋭のオーディオブランド、FBDから登場した「W-01」、「W-02」という2モデルのスピーカーだ。
開発と製造を行うヴィアトロニクスは、生活空間を豊かにするために良質なオーディオ装置を提供する、という目標を掲げる。音色が正確に再生できること、デザインが生活空間に調和すること、パーツ供給が持続できることという3つの開発理念を持つ。
「W-01」と「W-02」は一般的なスピーカーとは違う形状の美しいキャビネット形状が1つの魅力だ。MDFとタモ材を組み合わせて作られ、背面が絞り込まれた多角形で構成されており、見るからにキャビネット内の定在波が少なそう。また底面部にはブラックのスパイクが固定された状態で装着され、専用のスパイク受けも付属する。
2ウェイ同軸ユニットの搭載で音場定位表現が豊かに
もう1つのポイントとなるのが、ホーンロードがかけられた、2ウェイの同軸ユニットの搭載だ。同軸ユニットの理論的なアドバンテージはスピーカーの一点から音が放射されること。高音域から低音域までが1カ所から出るので自然な音色とサウンドステージと音像定位表現に有利に働くことなどだ。ちなみに、エンクロージャーの製作からスピーカーアッセンブリ作業は熟練の職人が日本国内で行っているという。
ここまでが2つのスピーカーの共通点。次に各スピーカーのスペックを確認したい。「W-01」 は少し大きめなブックシェルフスピーカーのサイズ感を持つ。ユニットはペーパーコーンに特殊樹脂をコーティングした5インチウーファーと、その同軸上に0.8インチスロートのコンプレッションドライバーおよびホーンを配置している。ダイアフラムを動かす磁気回路はネオジムマグネットで、トゥイーターとウーファーのクロスオーバー付近の歪みを抑えるために高域と低域を共用化する形で搭載している。周波数特性は75Hz - 20kHzで、インピーダンスは8Ω、感度92.5dBと効能率だ。
「W-02」はキャビネットサイズ的にも中型スピーカーの部類に入る。同軸ユニットの振動板の素材は「01」が特殊樹脂に対し、この「02」はアルミニウムを採用し、ウーファー、トゥイーター、磁気回路とも大口径化。8インチのウーファー、1インチのスロートのコンプレッションドライバーとホーンを同軸配置する。インピーダンス8Ωで感度96dBと効能率となっている。
立ち上がりが早くて繊細、減衰音が極めて美しい
普段見慣れない構成のスピーカーに音を出すのが待ちきれない。まずは大型の「W-02」から、1964年にリリースされたハードバップジャズ、リー・モーガン『サイドワインダー』(BLP-4157 mono/オリジナル盤)に針を乗せた。
「おお!いいぞ!」と思わず口に出る。ホーンロードがかけられた同軸ユニットからはディテールが明瞭なトランペットの音像がグイグイと前へ飛び出す。中音域が充実し、低域の弾力感も立体的だ。女性ヴォーカルも絶品。
ハイレゾファイルから再生したメロディ・ガルドーはピアノの音に温度感と色彩がある。音の立ち上がりがよく、分析的な音とは無縁で、血の通ったヴォーカルが前へ飛び出してくる。
全体的なスケールは少しコンパクトになるが「W-01」からも共通するグルーヴに優れた音が聴こえて嬉しくなる。サイドワインダーを演奏する、ビリー・ヒギンスのドラムはレスポンスが良く、8ビートを取り入れたジャズ・ロック調のタイトルを秀逸に表現する。
メロディ・ガルドーは、芯のあるしっかりとしたピアノと語りかけてくるようなヴォーカルが聴き取れて感心した。両モデルとも感度が高いので、真空管アンプや段数の少ないシンプルなトランジスターアンプまで様々なアンプと組み合わせたくなる。
同社の音の決め手は、立ち上がりが早いこと、減衰音が美しいこと、きめが細かい音ということだが、本試聴からはその多くを感じ取れた。きっとこのスピーカーの製作者は音楽再生に本当に必要なものが何かを理解している。音楽に集中できる、最高のグルーヴを備えたスピーカーだ。
(提供:合同会社ヴィアトロニクス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です