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PRわずか22cm四方の筐体から奏でるサウンドに評論家陣が衝撃を受けた!

マランツ「MODEL M1」徹底レビュー。今年度“最注目”のオーディオコンポーネント

公開日 2024/06/07 06:30 生形三郎/井上千岳/大橋伸太郎/小原由夫/土方久明
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いかにも現代的な最先端の再現性(井上千岳)



技術の進歩というのは性能が上がってコストが下がる。そういうものである。それに加えて小さくなるということもあるようだ。半導体などがいい例である。

オーディオでもほぼそういう線で進化が行われてきた。エレクトレニクスは特にそうで、本機を見ているとこれからのオーディオのあるべき姿という気がする。小さくなったのは進化のしるしなのである。音を聴けばそのことがより強く実感できる。

いま試聴曲としているサン=サーンスの「交響詩集」(ロト/レ・シエクル)がちょうど配信にあったので、これを聴くことにした。立ち上がりの速いエネルギッシュな音調で音数が多く、多彩な色彩感が鮮やかに描き出されている。低音弦やティンパニーが明瞭で鮮烈なのも音楽を冴えたものにしているし、木管楽器の感触にも汚れっぽさがなく非常に新鮮だ。

スピードとダイナミズムが際立ち、いかにも現代的な最先端の再現性である。金管楽器など非常に峻烈だが耳を刺すような硬質感がなく、活きの良さをいっそう引き立てる結果になっている。音に歪みや濁りがないのは大きな特質で、また起伏の大きさ再現のスケールと爆発力を申し分のないものにしている。

特筆しておきたいのがウーファーの駆動力で、量感が豊かでしかも制動が利いている。大型アンプでも難しいような鳴らし方が、あっさりと実現してしまっていることに驚きまた感心したものである。


高度な瞬時電源供給能力とS/N(大橋伸太郎)


22cm四方の虚飾を排した正方形が大型フロア型スピーカーを悠々とハンドリングする。音楽の休止で水を打ったように静まり、高いレベルで音楽信号が入力すると瞬時に立ち上がりエネルギーが沸き上がる。どこかに大型パワーアンプが隠れているのではないか、と一瞬疑いたくなるが、眼前にあるものがすべてである。

小型でハイパフォーマンス、高音質アンプの試みは過去内外に少なくないが、MODEL M1はそれらの全てと違う。マランツはこの10年間クラスDデジタルの使用実績を積み上げてきた。MODEL M1はその集大成であり、新しいパワー素子、フィードバック手法の採用が可能にした次代の出発点である。クラスDデジタルを既存の枠組に落し込むのでなく、ふさわしい容れ物を与えられ、底面の開口部から空気を取り入れメッシュ状の天板から熱を逃す自然空冷構造、常識破りの樹脂製の筐体も音質の検討から選択された。

MODEL M1は高度な瞬時電源供給能力とS/Nを実現したが、その音質は尖鋭過ぎ神経質かというとそうではなく、自然でバランスに優れたごく真っ当なものである。デジタル、アナログの範疇を越えたその音は、アンプはこうあらねばならないという既成概念を全て取り払った時に生まれた。

豊かな量感の低音を繰り出し驚いた(小原由夫)


目の前にあるのは四角い黒の塊。オーディオの知識の有無やその深浅に関わらず、初見でこれをプリメインアンプだと言い当てられる人はほぼ皆無に違いない。

今回マランツは、オランダのAxign社と共同開発したクラスDアンプをその塊に内蔵。しかもBTL接続にて4Ω120Wというハイパワーをギャランティする回路である。新たに見つけ出したメタライズド・ポリエステル・フィルムコンデンサーや高音質銅線コイルなど、パーツにも厳選品を使用。本機がただの小型アンプでなく、本格的なオーディオコンポーネントに足る意志を持って設計されたことを裏付ける仕様なのである。

試聴時はB&W 802D4が組み合わせられていたのだが、本機MODEL M1はそれを難なくドライブ。ダブルウーファーをほどよくグリップし、豊かな量感の低音が繰り出されたのには少なからず驚いた。次いで大いに感心させられたのがS/Nのよさ、歪み感の少なさである。BTL接続という対ノイズ面で決して好条件とはいえない構成にも関わらず、澄んだトーンと見通しのよいステレオイメージを提示したのだった。

製品コンセプトからしても、小型高性能なブックシェルフ型スピーカーとの組み合わせが本流だろう。そういう点では、使う人の感性も試されるアンプである。


まるで良質なアナログアンプのようだ(土方久明)


MODEL M1についてお伝えしたい機能的な魅力は多いが、実のところ最も感銘を受けたのは音質だ。オランダのAxign社と共同開発したクラスDアンプモジュールを搭載して、サウンドマスターの尾形好宣氏が徹底したサウンドチューニングをした結果、MODEL M1の奏でる再生音は、僕の期待を大きく上回るものであった。どのジャンルの楽曲を聴いてもしなやかな音調で、一昔前のD級アンプで時折感じたクールすぎる音とは無縁、まるで良質なアナログアンプを聴いているような錯覚に陥る。

ハイスピードかつ高音域から低音域までのfレンジの広さもあり、テイラー・スウィフトなどのポップスやカマシ・ワシントンのような現代ジャズにも強い。ノイズフロアが低く小型シャーシを感じさせないスピーカーの駆動力もあるので、クラシックのようなダイナミックレンジの広いソースへの対応力もあり、ピアノソナタやヴァイオリンソナタなどのシンプルな構成の作品では、アコースティック楽器の質感表現が一辺倒にならず生々しいことにも感心した。

少々誉めすぎてしまったが、僕は斬新なコンセプトと上述した音が気に入り、エントリーからミドルクラスのレファレンスアンプとしてMODEL M1を購入することにした。

MODEL M1を誕生させた、マランツ“クラスDアンプ”10年の軌跡



(1)2015年末に発売された「HD-AMP1」は、マランツのピュアオーディオグレード製品で初めてパワーアンプにスイッチング電源が採用された。

(2)BTL構成で400W(4Ω)の大出力を実現した「PM-10」。フラッグシップ・プリメインアンプとして2017年に登場した。当時の価格は60万円(税抜)。


(3)PM-10のノウハウがミドルクラスに継承された2018年発売の「PM-12」。こちらもBTL構成を採用し、定格出力は200W(4Ω)を実現した。

(4)日本限定の“Original Special Edition”として2020年に発売された「PM-12 OSE」。PM-12がさらなるサウンドチューニングで強化された。


(5)新世代マランツの幕開けとなるモデルとして登場し、現在も高い人気を誇る「MODEL 30」。Hypex社製のパワーアンプNC500を採用する。

(6)昨年発売された弩級のAVパワーアンプ「AMP 10」。価格は110万円(税込)。400W(4Ω)のパワーアンプ回路をなんと16ch搭載する。

(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.193』からの転載です

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