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【特別企画】アナロググランプリ2024受賞モデル

音楽的な感性が豊かに息づく。国産真空管ブランド、オーディオ・ノートのフォノEQ&プリアンプに陶酔

公開日 2024/07/10 06:35 井上千岳
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オーディオ・ノートの中核をなすラインである“Gシリーズ”。中でもフォノイコライザー「GE-7」は、「アナロググランプリ2024」の審査会でもその圧倒的な再現性に高い評価が集まり、グランプリを受賞している。ここでは、審査員である井上千岳氏によるプリアンプ「G-700」と組み合わせたレポートをお届けしよう。

AUDIO NOTE フォノイコライザー「GE-7」(3,850,000円/税込・写真上)とプリアンプ「G-700」(5,775,000円/税込・写真下)。いずれも電源部別の2筐体式となっている

フラグシップモデルとベーシック機のエッセンスが融合



オーディオ・ノート最新のミドルクラス・プリアンプ「G-700」と同じくフォノイコライザー「GE-7」を接続して、システムとして聴いてみたい。

G-700はフラグシップモデル「G-1000」とベーシック機「G-70」の再現性を併せ持つプリアンプとして設計され、電源は別筐体。MELF抵抗器による50接点のアッテネーターを新たに開発・搭載し、回路は双3極管「6072」をチャンネルあたり2本ずつ使用してパラレルプレートフォロワー、カソードフォロワーという構成としている。並列動作とすることで出力インピーダンスを下げ、トランジスター・アンプなどとの接続にも応用範囲を広げた設計だ。

また銀箔コンデンサーやオリジナルSSW配線材などパーツを厳選し、ヒーターはシャント型電源によるDC点火である。

GE-7も同様のコンセプトで開発され、やはり電源は別筐体。整流には「6CA4」を使用し、ヒーター電源はシャント型で直流点火としている。

「GE-7」のフォノイコライザアンプユニット。NF型のフォノアンプ部はモジュール化され、ハンドワイヤリングの良さとプリント基板並の経路の短さを実現。6本の真空管(ECC803S×2本と6072×4本)と大型の銀箔コンデンサを搭載しながらも、基板のサイズは最大限にコンパクト化。このモジュールの付近に4種類のデカップリングコンデンサを配置し、高純度なシグナルループを追求している。トランジスタアンプとの接続も考慮し、入力インピーダンスは20kΩまで対応できる

補正回路はNF型で、入力段を「ECC803S」のSRPPとし、6072のパラレルプレートフォロワー、カソードフォロワーとしているのはG-700と同じである。またシンプルなローカットフィルターによって、音質を損なわずに不要低周波を低減することが可能だ。

なおGE-7はMM専用なので、試聴には同社の昇圧トランス「SFz」を使用した。

「GE-7」はMMのみ対応のため、MCカートリッジの試聴時は同社のMC昇圧トランス「SFz」(1,122,000円/税込)を使用

驚異と畏敬を禁じ得ない、完璧な再現性と実在感



レコード再生としてこの音は、ひとつの理想状態と言うべきだろう。システムの再現性とレコードの音とがほぼ完全にマッチして、漏れも余剰もない正確で円満な鳴り方を作り上げている。完全体というイメージである。

真空管のクセや弱さを全く感じさせることがなく出方としては極めて自然体だが、それがアンプなどエレクトロニクスの理想的な動作であることは言うまでもない。ただし実際に実現するのは非常に難しく、それを真空管で作り上げてしまったことに驚異と畏敬を禁じ得ない。

まずS/Nが高い。あるいは歪みが低いのかもしれないが、音自体にもその背後にもざわざわした雑音が感じられず、一音一音が純度に富んで汚れやゆがみといったものがないのだ。またレンジに圧迫感がなく、高低どちらも端の方まで伸び伸びとしている。そしてどの音もくっきりとして切れがよく、にじみや膨らみを持たない。

さらにエネルギーが高い。音楽全体の起伏が大きいということもあるが、音それぞれの立ち上がりに力が乗り、ハイスピードな瞬発力にも不足がない。

「GE-7」のリア部。入力はRCAが2系統で、出力はRCAが1系統。そのほか負荷抵抗を100kHz/50kHz/20kHzの3つのポジションに切り替えできるスイッチも装備

こうした基本性能に加えて、有機的なあるいは音楽的な感性が豊かに息づいている。音の手触りが機械的なものでなく、ヒューマンな温度感に満ちて実在感が高いのである。

室内楽はエネルギーバランスに優れて解像度が高く、旋律やハーモニーなど音楽の内容が大変明瞭だ。また弦楽器の音色が本当にリアルで、艶と潤いがたっぷり乗っている。これほどよく鳴ったことは過去にない。

ピアノはどうか。一見何の変哲もないように滑り出すが、しかしすぐ静かな中に千変万化ともいえるほどの多彩な表情が充満していることに気づく。決してガンガン鳴らす演奏ではないのに、一音一音が声のように語りかけているのがよくわかるのだ。弱音の表情がことのほか深い。音楽的というのはこういうことで、タッチは澄み切って濁りがどこにもない。余計な夾雑物が一切混じらないから、こういう音楽性に富んだ再現が可能になるのである。

オーケストラは解像度と伸びやかさがものを言って、スケールが大きくダイナミズムに富んだ再現が展開されている。フォルテではかなりの音量になるが、それが全く歪まずまた混濁することもなく、どの楽器も明快に描き出されてアンサンブルの綾が鮮明に聴こえてくる。

音色に艶があるのも心地好く、瞬発力が縦横無尽に発揮されて多彩で緻密な音の光景が目の前に広がるのだ。隅々まで丁寧に掘り起こしながらそれが全て明確に鳴っているため、耳に感じる音の大きさがまるで違うのである。そしてその実在感の高さ。完璧などと評価するのもおこがましいくらい、これは圧倒的な再現力と言うほかない。

(提供:オーディオ・ノート)

本記事は『アナログ vol.83』からの転載です。

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